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アイバニーズ“ATK400”【Kroi 関将典のベース偏愛録:見た目で選んで何が悪い!】第3回
- Text & Photo (Bass) : Masanori Seki (Kroi)
- Photo (Main Image) : Kohei Watanabe
- Logo Design : Hirotaka Sudo (HOPSTEP)
「見た目で選んで何が悪い!」を合言葉に、Kroiの関将典が自身のベース・コレクションから“人と被らない”個性派ベース偏愛を語る連載の第3回。今回は、「和製スティングレイ」とも呼ばれたアイバニーズの“ATKシリーズ”への愛、そしてライヴのメイン・ベースとしても使用している“ATK400”についてたっぷり語ってもらいました(編集部)。
第3回:Ibanez / ATK400
ギター、ベースともに世界的に人気なアイバニーズ。
ベースにおいては、SR、BTB 、etc……といった代表的で、あらゆる仕様のモデルを出し続けている人気シリーズがあります。ジャンルを問わずたくさんのベーシストに使用されてきました。
個人的にはアース・ウィンド&ファイアーのヴァーダイン・ホワイトやKornのフィールディー、サンダーキャットあたりがパッと思いつきます。
それらの人気モデルのかたわらに、“ATK”というシリーズが存在しました。
ATKはすでに廃盤のシリーズですが、丸みを帯びたボディシェイプや、リアに大きなピックアップを配置してることから、巷では”和製スティングレイ”などと呼ばれていたそうで、今もなおマニアが居るベースです。
中古楽器屋などで見かけたことがある方も多いのではないかと思います。
ATKユーザーといえば、スリップノットのベーシスト故ポール・グレイが1番有名ではないでしょうか? ポール・グレイのシグネイチャー・モデルPGB-1もいつか手に入れたい1本です。

ATKは90年代に登場したシリーズで、一度販売が終了していますが、2000年代にも復活していた時期があります。
第1回、第2回でご紹介させていただきました、2本のベースよりも遥かに長い期間製造されていたことからも、人気や需要があったことが推察できます。
ATKには低価格モデルや少しトリッキーなレアモデル、特別仕様の高級モデルまでさまざまなモデルが存在しました。
何を隠そう、わたくし関もATKがとても好きでして、
過去に
ATK100
ATK200
ATK300 ×2
ATK400
ATK405
ATK1300
というラインナップを所有してきました(写真があるのは↓の3本のみでした)。

現在はATK300とATK400のみを所有しています。
ATKについて語り出すとそれぞれのシリーズの特性や仕様の違い、何がレアなモデルかなど、止まらなくなってしまうので、そのあたりは
・Portal:ATK series | Ibanez Wiki | Fandom
・Ibanez ATK: полный гид по моделям | Banana Unicorn | Дзен
これらのマニアックなサイトをご覧いただくと、いろいろ知ることができ、ATKの魅力を少しでもおわかりいただけるかもしれません。
自分のATK300は、高田馬場のアストロノーツギターさんでフロントにディマジオのPBタイプのピックアップを増設してもらいました。現在はギターのゆうき(長谷部悠生)に貸してます。
ライヴのメイン・ベース“ATK400”
そして、前置きがかなり長くなりましたが、今回紹介させていただくのは、こちらのATK400になります。
1年半前くらいにフリマアプリで3万円ほどで購入しました。“ATK欲しいなー”くらいの軽い気持ちで手に入れたのですが、そこからずっとライヴのメイン・ベースになっています。
ATK400は韓国製で、
・ボディ:マホガニー・バック、ラミネート・アッシュ・トップ
・ネック/指板:3Pメイプル・ネック、メイプル指板
ピックアップは、オリジナルのCAPのものが搭載されています。
ATK400以上のモデルは、フロントにJBタイプのシングルコイル・ピックアップが設置されていることがほとんどです。
リアにハムバッカーまたは、トリプルコイル・ピックアップを搭載しているのがATKの特徴のひとつであり、”和製スティングレイ”と呼ばれる要因の一つでもあります。
そしてATKの特徴と言えばもう1点、ギターのテレキャスのようにリア・ピックアップを囲うように広がった大きなブリッジです。(例外もある)
ATKを初めて見た関は、ここに漂うガジェット感にグッときました。
ATK400とATK700というモデルは、ほかのATKモデルと異なりブリッジの形状が台形のようなものではなく、長方形のような形になっています(個人的には台形タイプのほうが好き)。
ATKシリーズに限らずですが、90年代のFから始まるシリアルのモデルはフジゲン製で、“造りがいい”などと言われることが多いため、正直この韓国製のATK400を買った際は値段も手頃でしたし、ダメ元でした。
ところがどっこいしょ。
状態が良く、ネックがパキッとしておりまして、かなり弦高を下げても問題なく弾けるいい個体でした。
インレイはパール・ドットで、24フレット。
ATKシリーズ全体に言えることですが、オンボード・プリアンプはかなりピーキーで、トレブルをフルテンにしようもんなら、窓ガラスとか割れる気すらします。
なので、プリアンプの調整はいつも
Bass:6,7
Middle:6,7
Treble:4,5
くらいにしてます。
弦を張り替えたてのときなどは特にエグいほどびっちんびっちん鳴ります。
弾いていて気持ちいいというか楽しいですが、アンサンブルに混ぜるためにEQで抑えています。
ゴツい見た目から“図太い芯のある音”が出そうですが、自分のATK400はプリアンプのピーキーさなどが助長してか、クリアで細い印象を受けるサウンド感です。
弦が少し古くなってきたくらいが1番好みです。
完全に使い古された弦だとどうにも納得のいくサウンドが出しにくくなってしまうため、鮮度でいうと、かなり足の速いベースです。
でも大好きです!
そしてATK400は、ピックガードがありません。
スラップをする際にボディと弦の隙間を狭くしたいので、ティッシュ2枚(未使用)を折り畳んでガムテープで貼り付けてます。
自分のスラップの良くないクセなのですが、力いっぱいボディに拳を叩きつけるように弾くため、ボディの厚さ稼ぎ兼クッションになってくれるこのやり方は手を痛めることもなくなり、弾きやすくもなるのでいろいろなベースに施してます。
※ 見栄えは悪い(逆に気に入ってる)ですし、テープでベタベタになったり塗装へのダメージも考えられるので、もし真似をする際は自己責任でお願いします。
こちらは背面です。
ネック・ジョイントは5点止め。電池ボックスはネジで開ける形で、サーキットのバックパネルとセパレートされています。
弦は裏通しも可能ですが、自分は表側で引っかけるスタイルの張り方をしています。
5月にイギリス遠征に行き、レコーディングをした際にはこのベースを使用したので、いずれKroiの音源のなかでATK400のサウンドをお届けできる日が来ると思います。
お楽しみに!
さて、意外と多機能で、さまざまなモデルが出ていたATK。
時代的なものもあってか、現在では製造されなくなってしまいましたが、個人的にはアイバニーズのなかでの存在感や、個性的な仕様、そして何より見た目が最高に好きなベースです。
ピックアップがSHだったりリアハムのベースは現代ではけっこう人気ですよね。
例えば、自分がメインで使用している5弦ベースはlakland US55-94なのですが、世界的にもユーザーが多く、人気モデルだなと思います。

ATKも昔の良さを生かしつつモダナイズしたら人気が出るかもしれないですよね。そんなATKが出たらおもしろそうだなと勝手に想像してワクワクしてます。
第3回をご覧いただいてATKが気になった方は、ぜひ一度手に取っていただいて、ATKのかっこいい無骨さや、ほかのベースにはない個性的な要素を実感していただきたいです。
いつもより長くなってしまいましたが今日はこの辺で、ありがとうございました!
Profile

◎Profile
せき・まさのり●1994年9月20日生まれ、茨城県出身。R&B、ファンク、ソウル、ロック、ヒップホップなど、あらゆる音楽ジャンルからの影響を昇華したミクスチャーな音楽性を提示する5人組バンドKroiのベーシスト。バンドは2018年2月に結成され、同年10月にシングル「Suck a Lemmon」でデビュー、2021年6月には1stアルバム『LENS』でメジャー・デビューを果たした。2024年1月20日には初の日本武道館ワンマン・ライヴを成功させる。2024年6月に3rdアルバム『Unspoiled』をリリース。Kroi公式FC「ふぁんく らぶ」では、自身のベースを動画で語る“せきまさのりのベースってそんなに必要ですか?”を更新中。
◎Information
Kroi HP X Instagram
公式FC ふぁんく らぶ
関将典 Instagram