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Ibanez SRシリーズ “2021”モデル × TOKIE

  • Equipments Explanation:Makoto Kawabe
  • Photo:Takashi Yashima

世界中に根強いファンを持つベース・ブランド、アイバニーズ。各シリーズのモデルは時代のニーズに合わせ、毎年ブラッシュアップを重ねながらサウンドの進化を繰り返しているが、同社の代表的なベース・モデル“SRシリーズ”より、待望の2021年モデルが発表された。世界的トップ・プレイヤーから初心者まで幅広い層から愛され続けるSRがどんな進化を遂げたのかを、多様なバンド・プロジェクトに加え、多くのトップ・アーティストのサポートも手がけるベーシスト、TOKIEとともに検証していきたい。

SRとは?

SR2021年モデルの実力を検証していく前に、まずはアイバニーズSRシリーズの正体を明らかにしていこう。

 1987年に誕生したSoundGear “SR” ベースは、コンパクトな3次元アーチド・ボディによる抜群のフィット感、スリムなネックによる高いプレイアビリティ、専用設計のピックアップなどによる多彩なサウンドをアイデンティティとして、音楽スタイルやファッションのトレンド、アーティストや市場のニーズを柔軟に取り入れ、常に時代に合ったモデルを生み出し続けるアイバニーズの看板モデルだ。

 現在は4シリーズが展開されており、今号で紹介したSR1300番台は“プレミアム”、SR600番台は“スタンダード”のラインナップ。そのほかマルチ・スケールやセミ・ホロウ・ボディなど意欲的なコンセプトをもとに作り出される“ワークショップ”、卓越したクラフトマンシップと厳選した木材によって日本で製作される“プレステージ”がある

Interview
中村真央(星野楽器株式会社)

続いてSRシリーズに込められた思い、そして2021年モデルついて星野楽器株式会社 Ibanez DIVISIONマーチャンダイジング第一部ベース・プロダクト・マネージャーの中村真央氏に聞いた。

中村真央(星野楽器株式会社)

時代やニーズに合わせ今後もSRシリーズは進化を続けます。

──SRは30年以上も続くアイバニーズの代表的シリーズであり、御社としてもSRには特別な思いがあるのでは?

 そうですね。SRはアイバニーズ・ベースを代表するモデルであり、これまで携わってきた企画者・設計者の30年以上もの努力の積み重ねで今のSRがあると思いますし、感無量です。プレステージ・ラインからGIOラインを含めると、毎年10万本以上を世界各国に出荷しており、それだけワールド・ワイドで多くのプレイヤーに弾いていただけていることは、弊社スローガンでもある“音楽文化への貢献”を実感でき、大変嬉しく、また誇りでもあります。

──SRは毎年のようにリニューアルが施され、ブラッシュアップされていますが、毎年リニューアルするのにはやはり苦労もあるのでは?

 はい、正直に申し上げますと苦労も多いです……。リニューアル自体はシリーズによりますが実際のところ、4~5年周期ではあるのですが、シリーズも豊富にラインナップしているので、結果的に毎年多くの新商品を出していますね。新企画も毎年いくつかは出すようにしていますし。より魅力的なベースを世に出すべく、また自社製品自体もそうですが我々自身も日々成長・進捗できるよう、関わるメンバーが毎日多忙にさせていただいています。しかし、その分世界中のたくさんの方にアイバニーズ・ベースを通して音楽を楽しんでいただけていることを考えると、苦労=辛苦ではなく、“苦労=快感”にも感じます。今や多業種においてメーカーと顧客の垣根を越えた商品展開が広がりを見せており、我々もプレイヤーの声に寄り添った商品展開を今後も増やしていきたいと考えております。

──ズバリ“2021年モデル”のコンセプトとは? 

 ありがたいことに全世界で大絶賛いただいているEHBシリーズにおきまして(初年度の出荷本数4,000本超え)、ショート・スケールのモデルを発表し、より幅広いプレイヤー、スタイルの方に向けたライン拡張を図りましたが、一方で2021年大目玉の新シリーズとして発表したのが今回ノードストランドとの共同開発した“Big Breakピックアップ”を搭載した、アッシュ・ボディをメインにしたSR600EシリーズとSR1300SBです。昨今、シングルコイル・ピックアップやアッシュ・ボディに代表される、バンド・サウンドのなかでも埋もれにくいダイナミクス・アタック感のある音質が以前より増して好まれていますが、最大限にその需要・流行に応える形で本シリーズを企画開発しました。

──スタンダード・モデルとプレミアム・モデルで木材やパーツ類が大きく異なりますが、どういった狙いがあるのでしょうか?

 ターゲットとなるプレイヤーはさまざまです。求める音やデザイン、カラーなど、いろいろな要素で楽器を選ばれると思いますので、できる限り多くのオプションを提供したいという思いから、“スタンダード”と“プレミアム”で異なるパーツや材を組み合わせた商品展開を心がけています。

──スタンダード・モデルの5弦はペグが低音弦側から3:2、プレミアム・モデルの5弦は2:3のレイアウトとなっていますが、これにはどういった狙いがあるのですか?

 プレステージ/プレミアム・モデルなどはひと回り大きいサイズの天神を採用しているので2:3のレイアウトにしています。スタンダード・モデルでは初代SRと同様に3:2となっており、コンパクトな天神形状に収まり良く、また弦がナットに向けてできる限り真っすぐに通るように配列するための配置となっているんです。

──今年のプレミアム・モデルには“サンドブラスト加工”が施されていますね。

 以前から存在する加工にはなりますが、我々はその深く削られた導管のなかに特殊な分光性塗料を擦り込むことによって、ほかにない独特の雰囲気を演出することができました。ボディをいろいろな方向に動かしていただくと、パープル・メタリックからシルバー・メタリックに色が変化します。その魔法のような色変化とアッシュ材の特徴的な導管を融合させた結果、“マジック・ウェーブ”というカラーができあがりました。

──2021年モデルの最大のトピック、“Big Breakピックアップ”を開発した経緯と、目指したサウンド感を教えてください。

 このピックアップは2019年の11月頃に企画が立ち上がり、2020年のNAMMの際にノードストランドを訪問し、キャリーとメイン・エンジニアと具体的な打ち合わせを行ない、開発がスタートしました。ノードストランドの代表モデルである“Big Single”の音を、ハム・キャンセルした状態で最大限まで目指したピックアップを作りたい、という我々の要望に端を発します。サウンド感としてはよりメリハリのあるものにしたかったため、特徴的なアングル・ポールピースを低音弦側と高音弦側で2.5㎜ずつ上下に位置をズラしているのがポイントですね。

──2022年モデルの開発はもう進められているのでしょうか? また来年35周年を迎えるSRシリーズが見据える“未来”とは?

 2022年モデルの準備も着々と進んでおります。特別にこの場で少しだけお話しますと、来年は35周年をお祝いするアニバーサリー・モデルもいくつか発表予定ですし、さらに新しいシリーズの準備も進んでおります。今後もSRは、定番モデルを軸にこれまでどおりプロや市場のニーズに応えながら、時代に合わせて進化していきます。

──SRシリーズをまだ体験したことのない読者のベーシストに向け、メッセージをお願いします。

 約35年間、ジャズ、フュージョン、ファンクからゴスペル、レゲエ、ロック、メタルまで、ジャンルレスで世界中の多くのプレイヤーに親しまれ続けているSRシリーズですが、時代に合わせて今後も進化を続けます。さまざまなバリエーションを揃えておりますので、一度体験していただきたいです。特に今回取り上げていただいた2021年モデルはサウンド面でも外観面でもかなりの力作ですので、ぜひぜひ!

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