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    リハーサル・スタジオを使いこなそう【ベース初心者のための知識“キホンのキ”】第33回

    • Text:Makoto Kawabe

    この連載では、“ベースを始めたい!”、“ベースを始めました!”、“聴くのは好きだけど僕/私でもできるの?”というビギナーのみなさんに《知っておくと便利な基礎知識》を紹介します。今回のテーマは、“リハーサル・スタジオを使いこなそう”です!

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    はじめに

    “バンドを組んで、いざバンド練習するぞ!”となったらスタジオに行くと思うんですけど、ちゃんとリハできていますか? なんか自分のベースの音とかボーカルが聴こえ辛いなあとか感じることはありませんか? それ、もしかしたらスタジオの使い方が間違っているかも。

    というわけで、今回はバンドを始めたばかりのベーシストさんに向けてリハーサル・スタジオ(通称リハスタ)の使い方を伝授。ベテランの方も初心に帰って読んでいただくと発見があるかも。

    リハーサル・スタジオはどんなところ?

    ロック・バンドの音量はとても大きいので、身近に大きな音を出しても問題ない環境がなければレンタル・スタジオに行くしかありません。レンタル・スタジオにはダンス用、写真用といった種類がありますが、バンド練習するならもちろん音楽スタジオ、それもリハーサルや練習に最適なリハスタですね。

    リハスタは民間の有料スタジオ以外にも、市や区が運営する(コミュニティー・センターなど)公営のスタジオもありますね。公営のスタジオは利用制限や設備の面で使いにくい傾向はありますが、比較的割安なところも多いので調べてみるとよいでしょう。

    民間のリハスタは場所や設備、部屋の大きさ、時間と曜日によって料金が異なります。もちろん広くて設備が整っているスタジオほど割高ですが、平日昼間に割引価格を設けているスタジオが多いですね。

    スタジオの大きさは広いほど使いやすく、音も聴きやすくなるかと思いますが、トリオ編成のロック・バンドであれば8~12畳前後の部屋でも問題ないでしょう。メンバーが5人以上いるバンドであれば15畳前後、ホーン・セクションがいる大編成バンドであれば20畳以上ないと狭いですね。

    部屋によって常設機材が異なるスタジオも多いと思いますので、行きたいスタジオのWEBページなどを参考に、予算とメンバー構成などを考慮しつつ部屋を決めましょう。

    入りたいスタジオと日時が決まったら店舗に連絡して予約! 

    空いている部屋があれば当日でも予約せずに使えることがありますが、事前に日時が決まっているなら予約はしたほうが良いでしょう。最近はWEBから予約や支払いができる店舗も増えていて便利です。スタジオが決まったらセッティングでアタフタしないためにも常設のベース・アンプについて事前に情報を入手しておきましょう。当日、スタジオに到着したらスタッフの指示に従いつつ手続きを済ませて予約した部屋に入室しましょう。

    スタジオ内での立ち位置を決めよう

    ベーシストはベース・アンプに接続して音を出さないといけないので、基本的にはベース・アンプの前に陣取ることになるかと思いますが、スタジオのなかに入ったらまずは全体の常設機材の位置を確認しましょう

    その理由はふたつあります。ひとつ目は、どのスタジオでも退室する際には原状回復が鉄則で時間内に元通りに戻すのがマナーだからです。このためにも入室した際に機材や備品の位置をある程度把握しましょう。もうひとつは動かせない常設機材とモニタリングのしやすさを考慮して全メンバーの立ち位置を決めるべきだからです。

    バンドで練習する際に最も考慮すべきなのは全パートのモニタリングのしやすさであり、これを前提に立ち位置を決めると良いかと思います。

    まず、常設のドラム・セットはよほどのことがない限り位置を変えないほうが良いので、ドラマーの位置は動かさないとして、次に立ち位置を決めるべきパートはヴォーカルです。マイク類はスタジオ常設のPAミキサーに接続し、PAスピーカーから音を出すわけですが、PAスピーカーから出た音を再度マイクが拾って無限ループになるとハウリングを起こします。ハウリングは特定の周波数が過剰にブーストされて“ブーン”とか“キーン”といった音が鳴りやまなくなる現象ですね。

    ハウリングの直接的な原因はマイク・レベル(ミキサーのゲインやフェーダー)の上げすぎですが、マイクをPAスピーカーに向けてもハウリングしやすくなるので、マイクをPAスピーカーに向けずに正対するようにする、つまりマイクを使って声を出す人はPAスピーカーを背負わずに向かい合うように立つのが鉄則です。

    常設のPAスピーカーは動かせないことが多いので、マイクを使う人の立ち位置と向きは必然的に決まってくるのではないかと思います。備え付けの転がし(ウェッジ)のモニター・スピーカーがあれば併用してマイクがハウリングせずにモニタリングしやすい環境を作りましょう。

    ちなみにマイクのハウリングの原因には、マイクの先を覆うように持つ、単純に声が小さい、口とマイクの距離が遠いなど、マイクを扱う側に問題があることも多々あります。バンドでマイクを扱う人は、ウィンド・スクリーン(風防、マイクの頭ですね)を囲わない、しかるべき音量で歌う、口とマイクの距離を1cm以内にして声を発するなど、基本的なマイクの扱い方は知っておくべきです。PAミキサーの使い方もひと通りマスターしておいて欲しいところですね。

    最後にギター・アンプ、ベース・アンプを使うギタリスト、ベーシストの立ち位置ですが、やはり基本的には自分が使うアンプの前ですね。高さが低いアンプの場合は少し離れたほうが聴きやすい場合もあるでしょう。リハスタに常設のギター・アンプやベース・アンプは、大抵は部屋に最適な位置にあらかじめ配置されているものですが、どうにも都合が悪い場合は機材を動かしましょう。もちろんスタジオ利用終了時には元の位置に戻しましょう。

    セッティングのポイントは“音量設定”!
    音量決め→音作り の順番で

    場所を決めたらセッティング開始です。ケーブルをつないで電源を入れて……。ベース・アンプの使い方については過去の当連載(第8回「ベース・アンプの使い方」)で書いていますので、そちらを参考にしてください。ベースやギターが大きな音を出すとマイクを通さないと会話がしにくくなるので、音が出せる状況になっても周りの状況をよく確認してから音を出すようにしましょう。

    さて、本格的な音作りを施す前にベース・アンプの音量を決めたいところですね。というのは、音量が変わると音の聴こえ方も変わるのでセッティングを変える必要があるからです。簡単に言うと音量が大きいほど低音が大きく聴こえるので、小さな音量でセッティングしてそのまま大音量にすると低音過多になるはずです(自宅で入念に音作りする人が陥りやすい罠です)。

    では、リハスタではどのくらいの音量が適正でしょうか? 自分が気持ちよく聴こえる音量でしょうか? いろいろな考え方があると思いますが、筆者の答えは“音量を変えられないパートに合わせる”です。ロック・バンドの場合は唯一生楽器で奮闘するドラムですね。ドラムを叩いてもらいながら、お互いのパートが聴こえるように音量を調節するのが良いかと思います。粗めに音量を決めたらセッティングを追い込んで音作りを済ませ、再度、音量を微調整しましょう。

    必要に応じて立ち位置の調整、各アンプの向きの再調整も必要かと思います。例えば細長い形状のスタジオでベース・アンプ、ドラム・セット、ギター・アンプがステージのように横並びの状態でギタリストとベーシストが各アンプの前に立つ場合は、お互いの音が聴きづらい状況になるのは必然です。この場合は各アンプの向きを少し内側に向けてモニタリングのしやすさを調整するなり、(設備の充実した大規模スタジオに限られますが)転がしのモニターを用意してもらってお互いの音を返すなりしましょう。

    リハスタはドラム・セットとベース・アンプが隣り合って配置されることが多いですが、アンプの正面と真横では同じ距離間でも聴こえる音色がまるで違います(時間に余裕があれば他パートの立ち位置でベースがどういう風に聴こえているのか確認してみましょう)。正面に立つベーシストにとってはバランスの良い音色でも、アンプの真横に居るドラマーにはモワモワして聴き取りにくい音色になってしまうことも往々にしてあります。これもやはりアンプの向きを修正するのが良いかと思います。

    ヴォーカルが聴こえないときは?

    ドラムの音量に合わせるとギター&ベース・アンプの音が大きくなり過ぎてヴォーカルの声が聴こえないという事態も多々あるかと思います。考えられるおもな原因を上げてみます。

    エフェクターに依存し過ぎた音作りは、音量を上げた際にモニタリングしにくいバランスの悪い音色になりがちです。過度にヴォーカルの音域を侵食していないか、中高音域のバランスに気を配りましょう

    特にベースは、アンプやエフェクターのセッティングよりも弾き方に依存する音作りの要素に問題があることが多いです。

    ギターは、アンプ自体の音量よりも向きや角度を変えたほうが他パートには効果的かもしれません。

    声量やマイクの扱い方、声の出し方、マイクへの声の入れ方など、やはりカラオケとは違うのでそれなりの技術が必要ではあると思います。ちなみにウィスパー的な小さな声で爆音ロックを成立させるにはそれなりに特殊な工夫が必要になるでしょう。

    単純に部屋が狭すぎるとか、PAシステムのパワーが非力でスピーカーの数が部屋の大きさにあっていないとか、調音(防音や遮音ではなくスタジオ内での音の響き方)がイマイチとか……。スタジオ側に問題があることがハッキリしているなら次回以降は違うスタジオに行きましょう。

    アンサンブルにおける各パートのモニタリング環境は筆者としても立ち会ってみないとわからないですしケース・バイ・ケースではありますが、経験上、爆音ドラマーでも全パートの(音作りを含めた)演奏力が伴えばうるさく感じないし、バランスよくモニタリングできることが多いです。

    それでもどうしてもドラムが大きいと感じるなら弱く叩く、ミュートをつける、スティックを変える(筆者のおすすめは↓のPROMARK / HOT RODS)、遮音版を立てる、といった配慮をドラマーにお願いするしかないかもしれません。

    リハーサルをする

    さて、音量を整えて準備ができたらリハーサルを始めましょう。最初に慣れた曲を演奏して各パートの音量バランスを確認しつつ、必要に応じて微調整するとなお良いですね。リハーサルの進め方は……いずれまたの機会に。

    退室する

    予約した終了時間が迫ったら片付けを始めましょう。レンタル・スタジオの多くは終了10分前にフラッシュ・ライトが光るなど、終了時間を知らせるシステムがあるかと思います。リハスタでも“来たときよりも美しく”をモットーに、キッチリと片付けと原状復帰を済ませて時間内に退室しましょう。

    まとめ

    というわけで“リハスタを使いこなすコツは音量設定!”という記事でした。少なくともロック・バンドのなかで最も音量をコントロールしやすいのはベースのはずなので、あまり自分本位にならずに音量を決めましょう。とはいえ正直なことを書けば、聴こえやすい音を作れるかどうかはベーシストの力量次第です。

    リハーサルまでに楽曲のフレーズが弾けるように練習するのは当然ですし、上達するための基礎練習も欠かせませんが、練習したベースのフレーズや演奏を他パートにしっかり届けてアンサンブルをまとめるためにも“良い音を出す”ことを忘れてはいけません。

    演奏の練習とともに“良い音を出す”ための練習や訓練、探求も欠かさないように。

    ◎講師:河辺真 
    かわべ・まこと●1997年結成のロック・バンドSMORGASのベーシスト。ミクスチャー・シーンにいながらヴィンテージ・ジャズ・ベースを携えた異色の存在感で注目を集める。さまざまなアーティストのサポートを務めるほか、教則本を多数執筆。近年はNOAHミュージック・スクールや自身が主宰するAKARI MUSIC WORKSなどでインストラクターも務める。
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