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ドライバーズ・ハイ【高松浩史の音色探索 その箱の中は地獄より深い】– 第10回

生粋のエフェクター・フリークとして知られる高松浩史による、以前本誌にて掲載していた当連載がBM Webにて復活! マニアックなものからビギナー向けのお勉強企画まで、豊富な機材知識を持つ高松がエフェクターを語り尽くします。第10回は、tetsuya(L’Arc〜en〜Ciel)とESPによる共催ブランド“STELLA GEAR”からリリースされたあのペダルを検証!

ドライバーズ・ハイ

Bass Magazine Webをご覧の皆様、ごきげんいかがでしょうか。高松浩史です。

実は最近、エフェクター熱が冷めてしまったというか、あまり食指が動かない状況でいました。現状の自分の音にある程度納得(満足ではありません)がいっているというところが大きいのかなと思っていますが……エフェクターイヤイヤ期でしょうか。

ただ、最近出会った機材たちによって“やっぱりエフェクターとか音作りって楽しいな”と思えるようになりました。

今回は新しくゲットした機材のなかからひとつ紹介したいと思います。

それがこちら。STELLA GEAR製“Bass Driver’s High”です。

写真提供:Stella Gear

エフェクターの分類としては、プリアンプ、オーバードライブ、ディストーション、といったところでしょうか。このペダルはクリーンと歪みをフットスイッチで切り替えられるようになっています。EQの設定は共通です。コントロールからダークグラスの“B7K ULTRA”などを彷彿させますが、まったくキャラクターは違います。

まずはクリーン。EQをセンター(時計12時方向)にしたときの、いわゆる基本的な音色はかなりくっきりとしています。オフ時の素の音と比較すると、ミッドが少し抑えられて、ドンシャリっぽいキャラクターですが、ハイ・ミッドあたりの主張があることでくっきり感が出ている印象。上下のレンジも広く、モダンな音でしょうか。

特に低音弦の音程感がわかりやすくて良いですね!

EQはそれぞれ
【Treble】4kHzを起点としたシェルビング・カーブ
【Hi-Mid】1.5kHzを中心としたピーキング・カーブ
【Lo-Mid】300Hzを中心としたピーキング・カーブ
【Bass】60Hzを起点としたシェルビング・カーブ
となっています。

個人的にBassを思い切って上げても膜がかった印象にならないというか、ぼやけたりせずにパワフルになるというバランスがとても好みです。先述したように、基本的なキャラはキリッとしていますので、音作りの際はTrebleを少し下げ目からスタートしても良さそうです。

次に歪み。

歪みのキャラはバリッとしていて、粗めの歪み感。個人的に歪みの目が細かすぎると、ギターのディストーションなどと混ざったときに“歪んでいる感”がなくなり、結果的にレンジが狭く感じるというか、存在感が減ってしまうので、このくらい粗めの質感は好みです。

歪み量はクリーンからディストーションまでといったところで、けっこう深めに歪ませることもできます。

“クリーンからディストーションまで”と言いましたが、そうなんです。歪みチャンネルでもクリーンにできるのです。このクリーンがおもしろくて、クリーン・チャンネルのクリーンとは質感が違います。歪み側は少しロー・カットされて、ミッドが上がる感じですね。

クリーン側とあわせて2種類のクリーン・サウンドがプリセットできるので、とてもおもしろいと思いました! また、歪みチャンネルをオンにしたときにBlendが効くようになるのですが、このコントロールがすごいのです。

通常、こういったブレンダーなどを使用すると、振り切りの状態(100:0または0:100の状態)からセンターの状態(50:50の状態)に近づくにつれて音量が下がってしまうのですが、この機種はそれがなく、基本的に音量はあまり変わらないまま。その都度音量の調整をしなくて良いのはストレスフリーですね。

ここまで良い点ばかり書いてきましたが、個人的に気になる点もありました。
※あくまで個人的な感想ですので、良い悪いのお話ではないことにご注意ください。

歪みチャンネルでロー感が減ってしまうので、クリーン・チャンネルから切り替えたときに音圧が下がって聞こえてしまいます。なので、クリーンと歪みを使い分けるというよりは、どちらかのチャンネルに固定して使用するのが良さそうだなという印象です。減ったローはEQやBlendコントロールで補えるので。

以上、STELLA GEAR“Bass Driver’s High”のご紹介でした。かなりお高い製品ですが、そのぶんしっかりとクオリティも高く、個性もしっかりあってとても良かったです。

個人的にはほんの少しだけ歪ませてかけっぱなしにするか、音をくっきりさせたいときのブースターとして使用するのが良いかなと思っています。実は早速ペダルボードに組み込んでいて、ブースターとしての使い方で活躍してもらっています。まだ使い始めたばかりなので、いろいろと探っていきたいですね。

ゲットしてすぐにペダル・ボードへ組み込んで実践投入しています。

それでは、今回はこのへんで。ご覧いただきありがとうございました!

◎Profile
たかまつ・ひろふみ●栃木県出身。2002年に高校の同級生だった小林祐介(vo,g)とともに前身バンドを結成する。2005年からThe Novembersとしての活動を開始し現在までに8枚のフル・アルバムなどを発表している。2021年からは京(vo)、yukihiro(d)を中心としたプロジェクトPetit Brabancon、浅井健一&THE INTERCHANGE KILLSのメンバーとしても活躍している。その他、Lillies and Remains、圭、健康のサポート・ベーシストも務めている。

◎Information
高松浩史 X Instagram