NOTES
前回で触れた休符と音符の長さは、理解してもらえたかな?今月は譜面のニュアンスなど、細かい部分について触れてみよう!
楽譜の4大要素って?
今回で3回目となる“楽譜”についてのお話だが、1回目では音部記号や五線譜について、2回目では音符や休符について述べてきた。でも、音という“実態のないもの”を一枚の紙の上で完全に伝えるためには、まだたくさんの要素が必要なんだ。ましてや、もしも諸君がプロを目指していて、将来スタジオ・ワークをしたい、と思っているならなおさら、これから出てくる記号や標語は必須項目だぞ。
というわけで、ここでいきなり問題。
【問題】楽譜の4大要素とは?
漠然としていてちょっと難しいかな? でも、よ~く考えればわかるかもしれない。冒頭の文章のなかにヒントが隠されているぞ。
【答え】1.音高(音の高さ) 2.音価(音の長さ) 3.音の表情 4.楽譜の進行
楽譜の基礎知識1回目に述べた音部記号や五線譜を用いることで、ひとつ目の要素“音高(音の高さ)”を指定することができるね。さらに前回述べた音符や休符によって、ふたつ目の要素“音価(音の長さ)”も伝えられる。
でも、楽曲はもっとたくさん伝えたいことが詰まっているよね。例えば曲の速さだったり、音の強さや大きさだったり、そういう“音の表情”についての細かな指示もそのなかのひとつだ。これが第3の要素。
そして、楽曲から始まって終わるまでの間、誰もが同じようにその曲を進行させられるように“楽譜の進行”を指示するのも必要だね。これが第4の要素。これら4つの要素を無駄なく盛り込んだ楽譜によって、その楽曲が正しい方向で演奏される、というわけなんだ。
ということで、今回は第3の要素“音の表情”について話を進めていこう。
楽譜で表わされる“速さ”
まず、楽曲全体の基本的な速さは、楽譜の冒頭に“♩=112”のように“bpm(beats per minute)”という単位の数字で示す。これは“1分間に♩(4分音符)が112回打てる速さで演奏しなさい”という意味なんだ。当然、数字が少なければゆっくりしたテンポ、多ければ速いテンポになるというわけ。でも、曲の途中でもちょっと速くしたり、逆に遅くしたり、ということもあるよね。そんな細かい指示を表わすのが“速度標語”で、おもに【表1】のようなものがあるんだ。
クラシックの世界ではもっといろいろな標語(例えば、ラルゴ/largo=ゆるやかに、アンダンテ/andante=歩くような速さで、アレグロ/allegro=快速に、など。聞いたことがあるんじゃないかな?)が使われるけど、ポピュラー・ミュージックの世界でも、表にあるものは比較的よく使われるものなので覚えておこう。
音の“強弱’’を示す記号
続いては音の強弱を指示する“強弱記号”だ。【表2】を見てわかるように、強弱のさまざまな度合いや、徐々に変化させるものなど、これにはたくさんの記号がある。
楽譜にこれらの記号が示されたら、その部分ではこの指示に従って強弱を変化させなければならない、というわけだ。ちなみに、クレッシェンドは“cresc.”(“crescendo”の略)と、またデクレッシェンドは“decresc.” (“decrescendo”の略)と記される場合もある。さらに、デクレッシェンドは“dim.“(ディミニュエンド=diminuendo)という言葉で表記されることもあるので、覚えておくといいだろう。
蛇足だが、みんなもよく知っている鍵盤楽器のピアノは、実は“pianoforte”(ピアノフォルテ)の略で(さらにもとを正せば、“クラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ”というのが正式な名称)、小さな音から大きな音まで自由自在に奏でることのできる楽器、という意味からこの名前がつけられているんだ。
音符の表情づけを表わす標語
これまでは“曲全体”、あるいは“ある一定の範囲”についての表情を指示する記号(標語)を述べてきたが、1音の強弱や、音と音のつながりに表情をつけることを“アーティキュレーションをつける”などと言うんだ。そんなときに使う記号が【表3】で、これらは非常によく使われるものなので、諸君も見覚えがあるんじゃないかな。
実は上の表で挙げたもの以外にも、まだいろんな記号や標語はある。なかにはポピュラー・ミュージックではあまり使われないものも多い。なので、“発想記号(標語)”と呼ばれるものがあるということだけでも知っておこう。例えば、カンタービレ(cantabile=歌うように)とか、カプリチョーソ(capriccioso=気まぐれに)、ドルチェ(dolce=甘美に)などなど。何となく、どこかで聞いたような言葉じゃないかな?
さて、音の細かな表情に関わる記号・標語について今回は述べてきた。次回は4大要素の残るひとつ、楽譜の進行についてだ。頭のなかを整理しておいてね!
今回のまとめ:音に細かな表情をつけられてこそ一人前!
◎講師:山口タケシ
東京都出身。小学生の頃ギターを弾き始め、中学生でバンドを作り、ベースに転向。大学在学中にCBS/SONY(当時)よリバンドでデビューした勢いで、新聞記者か小学校教師という進路を変更、親の反対を押し切り就職活動もせずにプロの世界へ。その後はバンドのライヴ活動と同時にスタジオ・ワークやツアー・サポートなどを始める。卒業後、自己のバンドや、数々のアーティストのツアー、レコーディングヘの参加とともに、『ベース・マガジン』誌への執筆や、入門書、教則CD、教則ビデオ制作といった活動も続けている。