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    『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』大御所ベーシストの作るゲーム音楽【クリープハイプ長谷川カオナシのレトロゲーム喫音堂】– 第8回

    • バナードット絵:石田芙月(株式会社.AC)
    • 挿絵:長谷川カオナシ

    2022年にメジャー・デビュー10周年を迎えたクリープハイプ。それを記念して始まった長谷川カオナシによる本連載コラムでは、多彩な趣味を持つ長谷川が特にハマっているという、“レトロゲームのベースの世界を案内します。

    最新ゲームの温故知新

    あぁ^〜、ハリネズミがぴょんぴょんするんじゃあ^〜。
    どうも、レトロゲーム喫音堂です。
    久しぶりに最新ゲーム遊んでます。

    ソニックフロンティア(※1)おもしれー!
    普段レトロゲームばかり遊んでるせいで、
    3Dゲームのカメラワークを自分で制御するのが苦手ではあるのですが、
    そんな私がプレイしても爽快感があるというのが素晴らしい。

    今回はソニックのゲームの原点に還ってみましょう!

    『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』(1991年/セガ)(※2)

    ソニック・シリーズの第1作目がこちら、メガドライブ用のソフトです。
    当時放送されていたテレビCMで、主人公のソニックがジェットコースターよろしく駆け回る姿は衝撃的でした。


    ベース弾けよ!

    音楽はなんとDREAMS COME TRUEの中村正人先生(※3)

    大御所ベーシストの作るゲーム音楽とは一体どんなものなのでしょうか。
    心して喫音していきましょう!

    今回喫音していくのはZONE2のMARBLE ZONEのステージBGMです(※4)

    ラテンの雰囲気を色濃くまとった楽曲ですが、冒頭でいきなりオシャレなアプローチが登場します。

    バンドインしてベースが弾く第1声はAの音。続いてEの音。
    これを聴くと、 “Am”のコードなのかな、と想像がつきます。

    ですが次に来るのがDの音。
    これはコードの軸のAに対して11thといって、Amには含まれない音階です。
    さらにメロディの1音目はBの音。
    これもAに対して9thといって、Amに含まれない音階です。

    Amの構成音はAとCとEの音。
    ベースだけでAmを表現しようとしたら、ベース・ラインの3音目はDではなく、Cになるはず。

    そこを安易に選ばず、あえてDを弾く。

    このことで、“Am9”というコードに“(11)”のオシャレ要素が付与されています。

    ほかの楽器に任せず、自らのアプローチによってオシャレなコード感をさりげなく演出する。
    まるで気の利く紳士のような、スマートなベース・ラインです!

    m9は“プギャー”じゃないよ

    続いて、ベースの音価(音の長さ)に注目してみましょう。

    まずこの曲は全篇にわたり、バスドラムが4分音符で刻まれています。
    ベースはそこに並行するような8分音符の刻みです。

    ベース・ラインをよく聴くと、奇数回はスタッカートで、偶数回はテヌート(※5)で弾いています。

    奇数回というのはつまり、バスドラムと同時に鳴るタイミング。
    バスドラムは本来、ギターやベースに比べると、音の長さの調節の利きづらい楽器です。

    ですがこの曲ではベースがスタッカートを絡めることによって、躍動感をより強めているのです(※6)

    ドラムによく寄り添った、ベーシストらしいアプローチだと思います。

    さて今回はメガドライブの『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』を喫音していきました。

    また、今回の動画では、先日レビューさせていただいたBOSSのGX-100を使用して音作りをしてみました(※7)
    動画をiPhoneのスピーカーで再生してもベース音が聴き取りやすくなるように、BASS CHORUSのエフェクトをうっすらかけています。

    BOSS GX-100のセッティング画面

    引き続きいろんな音作りを模索していきますので、そちらもぜひ注目していただけたら幸いです!
    それではまた来月までご機嫌よう。

    (※1)
    ^ 今月8日から発売中。プラットフォームはPlayStation 5、Nintendo Switch、Xbox Series X/Sなど。私はまだ2回目のアスラを倒したところです〜。

    (※2)
    ^ 本文でも記述しましたが、音楽はDREAMS COME TRUEの中村正人先生が担当されています。昨年、ZONE1のGREEN HILL ZONEのBGMをもとにした楽曲「次のせ〜の!で -ON THE GREEN HILL – DCT VERSION」がリリースされたことで話題になりました。

    (※3)
    ^ 当時は大御所バンドのベーシストがゲーム音楽を担当することがしばしばありました。『桃太郎伝説(1987年/ハドソン)』ではサザンオールスターズの関口和之先生が、 『貝獣物語(1988年/ナムコ)』では安全地帯の六土開正先生が音楽を担当されています。

    (※4)
    ^ この曲はじめ、『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』のBGM数曲はセガのアーケードゲーム、『NEW UFOキャッチャー』でも使用されています。ゲームセンターで聴いたことのある方も多いはず!

    (※5)
    ^ スタッカートとは、短くハズんだ音。それに対してテヌートは、べったりと伸ばした音です。

    (※6)
    ^ もちろん楽曲や場面によって適した表現は違いますので、バスドラムを短く聴かせることが必ずしも正解というわけではありません。

    (※7)
    ^ ステマどころかダイマの匂いがするって?? ちゃんと自分で買いましたからね!

    ◎Profile
    はせがわ・かおなし●1987年9月23日生まれ。小学生でピアノとヴァイオリンを手にし、高校1年でベースを始める。クリープハイプは2001年に尾崎世界観(vo,g)を中心に結成。2009年に長谷川、小川幸慈(g)、小泉拓(d)を擁した現編成となる。2012年にメジャー・デビューし、2014年には日本武道館にてライヴを行なう。2021年11月に6thアルバム『夜にしがみついて、朝で溶かして』をリリースした。長谷川はティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズのグッズ収集家でもある。

    ◎Information
    長谷川カオナシ
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    クリープハイプ
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