NOTES
ここでは、“ベースを始めたい!”、“ベースを始めました!”、“聴くのは好きだけど僕/私でもできるの?”というビギナーのみなさんに《知っておくと便利な基礎知識》を紹介します。第5回目のテーマは、“ベースの指弾き”。指弾きの基本と上手に弾くコツについて学んでいきましょう。
ベースの奏法(ピッキング方法)には主に指弾き、ピック弾き、スラップ(チョッパー)奏法の3種類があります。どの奏法も音色や適応させやすい音楽スタイルなどが異なるので臨機応変に使い分けたいところですが、今回は指弾きについて詳しく解説していきましょう。
指弾きとは?
指弾きは文字どおり指の腹の部分で直接弦をはじく(ピッキングする)奏法です。人差指か中指でピッキングするのがスタンダードで、特にこの2本の指で弾く奏法を2フィンガー・ピッキングと言います。2フィンガー・ピッキングはさまざまな音楽ジャンルに対応できるオールマイティな奏法ですが、ピック弾きやスラップ奏法に比べれば落ち着いた音色ですし、最もベースらしい音色が出せる奏法と言えるかもしれませんね。
指弾きのフォーム
指弾きの適正フォームには個人差があるので一般論で語るのは難しい面もありますが、何はともあれ筆者推奨のフォームを超スローモーションのイメージで紹介します。
①:親指を弦またはピックアップの上に置き、人差指か中指の指先の腹の部分で弦を捕えます(親指の位置についてはのちほど詳しく解説)。弦を捕える位置は親指の延長線上と同じか、それよりもややブリッジ寄りが自然です。
②:ボディ表面と水平方向に力を加えます。
③:すると弦はボディと水平方向に引っ張られると同時に指の表面の丸みに沿って徐々に指先方向に移動し、指先の位置と弦の張力のバランスが限界を超えたときに弦が指先から離れ、その際の衝撃音とともに弦振動が始まります。
④:ピッキングを終えた人差指(または中指)はピッキングした弦の隣にある低音側の弦に当たって静止します。
上のような静止している弦に対してのピッキングに限らず、鳴っている弦に対してのピッキング(連続してピッキングしている状態)でも上記の動作を瞬時に繰り返しましょう。
①と②の間に指を弦から離して振り被ってしまうのはピッキングのタイミングが定まらないのでNGです。
親指はどこに置くべき?
親指を置く位置は、弾く弦に合わせて以下のGIF画像のように移動させるとフォームが安定します。
・1~2弦をピッキングする際→3弦(①)
・2~3弦をピッキングする際→4弦(②)
・3~4弦をピッキングする際→5弦ベースの場合は5弦(③)、4弦ベースの場合はピックアップの角
・4~5弦をピッキングする際→ピックアップの角(④)
親指を移動させる際は人差指(または中指)が弦に触れているうちに移動を完了させ、ヒジを動かして二の腕から先全体を移動させるとフォームが崩れにくいでしょう。要は弦をピッキングする指先の動きと位置がどの弦でも同じになるように保つことが重要です。
NGフォームは?
まず、ピッキングの瞬間に第一関節を反らすのは弦に充分な力が加わらないので好ましくありません。基本的には第一、第二関節は固定し、指の付け根(第三関節)を動作支点にピッキングするのが好ましいでしょう。最低音弦(写真では5弦)を弾くと指がすっぽ抜けて安定しないという人は、ピッキング後の指先をボディ表面に着地させましょう。
また爪が弦に当たると“カリッ”としたアタック音が目立って指弾きらしい音色の太さが削がれてしまうので、爪は短く切り整えておきましょう。爪が大きい人や指先が薄い人はどうしても爪が当たりやすい傾向がありますが、頑張って爪が当たらないフォームを研究しましょう。
ちなみに以下写真のようにピッキング位置を親指の延長線上よりもネック側にすると、弦に当たるのは指の腹の小指側になり、ピッキング時に弦が暴れやすくなります。あながちNG例とも言い切れず、歪み前提の音作りや意図的にパーカッシブな音色を出したいときなどには有効なフォームです。
指一本で弾く奏法
2フィンガー・ピッキングでは基本的には人指指と中指で交互に弾きますが、例えば2弦を弾いたあとに3弦を弾く、といったような低音弦側に連続するピッキングに限っては同じ指で弾くと効率がいい(レイキングというテクニックです)ので、必ずしも表裏の拍を固定したり交互のピッキングを死守したりする必要はありません。楽曲のテンポやフレーズの状況によってはいずれか一本の指だけで弾いてもいいでしょう。
弦移動のコツ:指弾きの動作支点
筆者は、指弾きの動作支点は弦から遠いほど望ましいと考えます。なぜなら、例えば弦に最も近い指先の第一関節などを支点にピッキングした場合は、弦をすくい上げるようなフォームになりやすく、弦の挙動が安定しない、不要な倍音ばかりの音色になりやすい、音色が均一にならない、強いピッキングがしにくい、ダイナミクス(強弱)を表現しにくい、などの弊害を生みやすいからです。
極論としては手首を動作支点として親指を軸に人差指(または中指)で弧を描くようなフォームが理想的かと思います。このフォームならば弦移動が連続するフレーズでも親指を移動させる必要がなく音色も安定させやすいでしょう。
速いフレーズが弾ける奏法は?
楽曲の速さ(BPM)やフレーズの細かさによって指弾きとピック弾きを使い分けるベーシストも多いと思いますが、どちらの奏法が速いフレーズを弾けるかは人それぞれです。指弾きで速さを極めたい人は薬指や小指なども動員して3フィンガー、4フィンガー・ピッキングなどへと発展させることが多いですが、これらはやや特殊な奏法ですので詳解は別の機会に。また、いずれか一本の指の腹と爪側を往復させてピッキングするようなやや特殊な奏法もあります。
上級篇:指弾きの音色を変化させる
ベースは指弾きに限らずピック弾きでも、弦をピッキングする位置がブリッジに近いほどトレブリーでアタックの強い音色になり、ネックに近いほど柔らかく太い音色になります。
またピッキング位置に加えて、ピッキングのフォームによっても音色は変わります。
例えば、指弾きは弦に触れる指先の面積が多いほどマイルドで太い音色になる傾向があります。つまり、指を寝かせてピッキングしたほうが太い音色になりやすいということです。
指弾きのなかでも親指の腹で弦を押し込むように弾く親指弾きは、ほかの指弾きよりも弦に振れる面積が大きいのでアタックが柔らかく太い音色が出しやすい奏法です。楽曲のなかでテンションを抑えたいときやスロー・バラードなどで活用しましょう。
また、一般的なマグネティック・ピックアップのほとんどは、ボディ表面に対して垂直方向の弦振動しか出力していません。このためボディ表面に対して弦が垂直方向に振動を開始するように意識する(いわゆる縦振動ピッキング)とより大きな音量で音色も太くなる傾向があります。
今回はかなり細かい解説になりましたが、体の動作や力の入れ具合を文章で説明するのはなかなか難しいですね。極論としてはどんなピッキング・フォームでも出ている音が良ければOKですが、見た目にスマートな美しいフォームが理想ですね。自分は大丈夫! と思っている人も自分のピッキング・フォームと出ている音を客観的にチェックしてみてくださいね。