NOTES
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追悼 – フランシス・“ロッコ”・プレスティア(タワー・オブ・パワー)
- Text:Daisuke Ito
- Interview:Kazuya Kitamura(Bass Magazine 1991 SEP), Fumi Koyasu(Bass Magazine 1997 NOV)
最後に『ベース・マガジン 1997年11月号』から、アルバム『リズム・アンド・ビジネス』を発表した際のインタビューの一部を抜粋してお届けする。あの“プクプク奏法”について、ロッコがどのように語ったのかに注目だ。
俺はいつもミュートしながら弾いている。
その究極がパーカッシブ・ノイズみたいな音だ。
━━あなたのプレイを聴くといつも、シャッフルしているわけじゃないのに、“ゴムまりがピョンピョン跳ねている”映像が思い浮かびます。自分自身ではどういう映像が似合うと思います?
ナスティな映像さ(笑)。ドラムのハーマン(マシューズ)と俺とのコンビネーションも、それと同じだ。タイトかつルーズ。そしてすげえ汚い! でも俺にとってはナチュラルなものだよ。
━━日本ではあなたのベースのサウンドを“プクプク〜”という擬声で表現することがあるんです。あなた自身はどういう擬声が似合うと思いますか?
それは第三者にお任せしたいな。自分の音を表現するのはすごく難しいことだ。それに俺の発想は日によって違うから、無責任なことは言えない。……擬声はなんでもいいんだけど、俺の特徴はゴースト・ノートにあるらしいね。だいたいいつもミュートしながら弾いているんだけど、その究極が単なるパーカッシブ・ノイズみたいなゴースト・ノートだ。パーカッシブなんだけど、流れ良く、途切れないようにスムーズに弾くんだよ。
━━何度も質問されていると思いますが、もう一度簡単にミュート・プレイの方法を教えてください。
いいよ。左手人差指で押弦して、残りの指で軽く弦に触れるんだ。で、その状態で強くピッキングすれば、あの締まった音が出るのさ。
━━(アルバム『リズム・アンド・ビジネス』のなかで)ベースに関して、なにか新たな挑戦のようなことはしてますか?
聴いてみてどうだった?
━━「イースト・ベイ・ウェイ」の音使いは凝っていると思ったのですが?
本当!? あれはただのブルースだよ(笑)。……新作での俺のプレイは、はっきり言って指グセをモロに出しているだけだ。でも第三者が聴いて新たな発見があるとすれば嬉しいよ。ところでその「イースト・ベイ〜」は、俺が最も気に入っている曲でもあるんだ。ブルージィで古臭い感じになっているからね。
━━ほかに気に入っているのは?
しいて言うと“ドーッツッツド”ってヤツかな。曲名は何だっけ?
━━「ワッツ・ユア・トリップ」のことですか?
そうそう。お前、よく覚えているなあ。……最近の俺は忙しくって、いろんなことがこんがらがっているんだ。タワー・オブ・パワーのドクター(ステファン・クプカ/sax)と一緒にアルバムを作ったし、自分のソロ・アルバムにも取りかかってる。なかなか忙しい一年を送ってるよ。そのうえ今は歯が痛い!
━━「ワッツ・ユア・トリップ」の各1拍目はスライド? それともチョーキング?
スライドと呼ぶんだろうね。でもなぜそんなことを聞くんだい?
━━フレット移動の音が聴こえなかったんです。でもロッコは絶対フレットレスは弾かないでしょ?
うん。弦がよかったのかもね!
━━つまり古い弦ということ?
中古ってところかな? 新しい弦はシャリシャリしすぎるんだよね。かといって古い弦ではちゃんとした音にならない。指先で変化をつけようとしても同じになっちゃうんだ。難しいよね。
━━では、使用機材を教えてください。たぶん、4弦ベースですよね。
そうだよ。以前は4弦をDまで下げる機械をくっつけてたけど、今回はそれもなし。で、新作では久しぶりにフェンダー・プレシジョン・ベースを使ったんだよ。あのオールドな感じのサウンドが懐かしくなってさ。
━━アンプやエフェクターは?
アンプはスタジオに置いてあったアンペグのデッカイの。俺の持ち物じゃないから詳しいことはよくわからないけど、とにかく古いものだったのは確かだ。スピーカー・ボックスとヘッドがくっついているアンプ……何て呼ぶんだっけ? コンボ? まあ何でもいいや。それからエフェクターはコンプレッサー? リミッター? どちらかを使っていたと思うよ。
━━ところで、今回も曲作りには関わっていないんですか?
うん。一緒に書いた曲はないよ。まあ、ベース・ラインだけは自分で考えることが多いけどね。
━━あなたは譜面も理論も苦手だということですが、「アンコンディショナル・ラヴ」にしてもほかの曲にしても、なかなか凝ったフレーズを作っていますよね。こっそり勉強しているんじゃないかって気がするんですけど?
とんでもない! 俺はほとんどわかっていないままで弾いているんだ。でも俺は正直だから、知らないコードが出てきたときは“これは何だ?”って質問しているよ。構成音をほかのヤツに教えてもらってから、ベースのフレーズを作っていくんだ。それで何の問題もないよ。
━━では最後に、日本のファンにメッセージをお願いします。
楽しくスタイルを追求してもらいたいね。自分の特技を見つけるために、いろいろ試してみるのもいいだろう。……プロとして活動する際には、あらゆる人からアドバイスされ、ああでもない、こうでもないと指摘されると思うんだ。自分がどう弾けばオーディエンスに気に入ってもらえるのか? この先どうなるのか? 不安を抱えることもあると思う。選択に迷い、行き詰まりを感じるときでも、最終的には自分のハートに正直でいること。それが一番大切なんだ。
『ベース・マガジン 1997年11月号』