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2020年、Ibanezの進化 〜EHBシリーズの起こす革命〜

  • Equipments Explanation:Gentaro Yamamoto
  • Photo:Takashi Hoshino

“EHB”の概要がわかったところで、ここからはいよいよ、その実力を検証していきたい。まずは、アメリカン・バスウッドのボディにローステッドされたバーズアイ・メイプル指板という組み合わせのスペックを持つEHBシリーズの1000番台のモデルから確認していこう。

EHB1000-PWM

ローステッド・メイプルを使用したタイトなサウンド

Front
Back

 本器はアメリカン・バスウッド・ボディに、ローステッド処理されたメイプル&ウォルナットの5ピース・ネック&ローステッド・バーズアイ・メイプル指板という構成で、マットなホワイト・パール・カラーと合わせてポップさと落ち着きを兼ね備えている。

 ピックアップはフロント&リアともに、BTBシリーズなどにも搭載されているバルトリーニのパッシヴ・ソープバー・タイプBH2を搭載。特有の中低域の印象が強いサウンドだが、そのウォームさが、パッシヴ時はもちろん、アクティヴ時でもどこかアコースティックな鳴りを生み出す一要因となっている。EQは独自のVari-mid 3バンド&パッシヴ・トーンという構成で、パッシヴ/アクティヴ問わず的確な音作りが実現できる。

 ネックは、ナット幅41mmで、19.5mm(1フレット地点)〜21.5mm(12フレット地点)厚、500R指板と、かなり薄めの握り。テクニカルな演奏にも配慮した設計だ。ポジション・マークは4弦寄りに打たれた独自のデザインで指板サイドには蓄光インレイも入れられており、演奏者視点での視認性も確保。シャーラー製S-Lockストラップ・ピン、ノイトリック製ロッキング・ジャックなども標準装備で、十万円台前半のモデルとしては至れり尽くせりのスペックと言える。

ピックアップにはバルトリーニ製BH2を2基搭載。豊かなミッド・レンジを持ち、バランスの取れたブライトなレスポンスが特徴だ。
コントロールはヴォリューム、バランサー、トレブル/ベース、ミドル/ミドル・フリケンシー、EQバイパス・スイッチ。任意でミドルの帯域調節が可能だ。
ローステッド加工されたメイプルとウォルナットが5ピースでラミネートされたネック。湿度変化に強く、高い形状安定性を持つ。
指板にはローステッドされたバーズアイ・メイプルを採用。ネック・サイドのポジション・マークは視認性に優れた蓄光素材(EHBシリーズ全モデル共通)。フレットはステンレス製。

EHBのために新開発されたオリジナルのヘッド・ピース。裏側から6角レンチで回すことで、簡単に弦交換が可能だ。非常に軽量な作りとなっている。
トラスロッドの調整口はネック・エンドに設置。メインテナンスのしやすさもプレイヤーにとって嬉しいポイント。低音弦側のみネック・エンドが延長されているのも特徴的だ。

【Specifications】
●ボディ:アメリカン・バスウッド●ネック:ローステッド・メイプル/ウォルナット(5ピース)●指板:ローステッド・バーズアイ・メイプル●スケール:34インチ●フレット数:24●ピックアップ:バルトリーニBH2×2●コントロール:ヴォリュー ム、バランサー、トレブル/ベース(2連2軸)、ミドル/ミドル・フリケンシー(2連2軸)、EQバイパス・スイッチ●ペグ:カスタム・ヘッドピース●ブリッジ:MR5HS●カラー:パール・ホワイト・マット●価格:¥139,000

【Yoshida’s Impression】

生鳴りが大きくアコベを弾いているよう

 “人間工学頭なしベース”という、かなり強気なネーミングですよね。まず特筆すべきは重量で、おそらく3kg台で非常に軽量。ストラップで持っても軽かったです。それは、ヘッドレスであること、ネック材のメイプルに熱処理が施されていること、ボディがチェンバー加工されていることが功を奏しているかと思いますが、生鳴りが大きくアコースティック・ベースを弾いているような感覚も少しありましたね。見た目はモダンですけど、ハイ・テクニカルな演奏だけでなく、基本的にはどんな音楽でもいけると思いました。

EHB1005-BKF

レギュラー・スケールの34インチ5弦モデル

Front
Back

【Specifications】
●ボディ:アメリカン・バスウッド●ネック:ローステッド・メイプル/ウォルナット(5ピース)●指板:ローステッド・バーズアイ・メイプル●スケール:34インチ●フレット数:24●ピックアップ:バルトリーニBH2×2●コントロール:ヴォリューム、バランサー、トレブル/ベース(2連2軸)、ミドル/ミドル・フリケンシー(2連2軸)、EQバイパス・スイッチ●ペグ:カスタム・ヘッドピース●ブリッジ:MR5HS●カラー:ブラック・フラット●価格:¥145,000

Yoshida’s Impression

34インチでも充分なローB弦の張力

 このモデルは34インチ・スケールですが、ローB弦の張力は充分あって、8ビートのルート弾きなどでもローB弦が負けないで戻ってきてくれます。パッシヴ・トーンも効きが良いですし、アクティヴEQも、ハイはすごくブライトでローはフルにすれば建物が壊れてしまいそうな響きです(笑)。ミドルも、フリケンシーの幅が広いので、かなり細かく設定ができます。アクティヴとパッシヴの差がないですし、パッシヴ寄りの音作りができるので、アクティヴが苦手な私でも、これなら使えそうです。サステインも豊かですね。

続いては、ネック・指板ともに独特な風合いを持つパンガパンガ材が使用され、ポプラ・バールのトップ材の杢目も印象的なEHBシリーズ1500番台の実力を検証していこう。

EHB1505MS-TSF

ポプラ・バール・トップのジャンルレスなモダン・サウンド

Front
Back

 へッドレスに加え、扇状にフレットが打たれたマルチ・スケールが採用された、ルックス上のアイキャッチと機能性を兼ね備えたEHB1505MS。デザインに加え目を引くのが、トロピカル・シーフロア・フラット(TSF)という、まさに南洋の穏やかな海底を思わせるカラーが施されたポプラ・バールのトップだ。バック材はアフリカン・マホガニーで、EHB1000−PWMと比べると中低域の張り出しが強いサウンドが特徴。ネックはやや重量のあるパンガパンガ材とウォルナットによる9ピースで、500Rの指板もパンガパンガ材だ。

 ナット幅45mmと一般的な設定だが、独自開発のモノレール・ブリッジはサドルを左右1.5mmまで移動調整が可能。好みの弦間ピッチに設定することができる。(5弦モデルは出荷時に弦間18mm設定、4弦は19mm、6弦は17mm)。ピックアップはノードストランド製カスタム・モデルで、5&4弦と1〜3弦のコイルがスプリットされたハムバッキング・タイプのビッグ・スプリットを搭載。PB的な太さとJB的なタイトさの両立を狙ったモデルと言えるだろう。

 5弦側35インチ、1弦側33インチというマルチ・スケールに合わせて、ピックアップもスラント・マウントされており、指弾き時の親指の置き所には、最初は多少の違和感を感じるかもしれない。本器も蓄光のサイド・ポジション・マーク、シャーラー製ロック・ピン、ノイトリック製ロッキング・ジャックを標準採用。

ピックアップはノードストランド製カスタム・ビッグ・スプリットを2基搭載。EHBシリーズ全モデルにフィンガー・ランプとして使用できるブラック・カラーの木板が付属している。
ネックはパンガパンガとウォルナットが9ピースでラミネートされた贅沢な仕様。耐久性に優れ、鮮明な音像と歯切れのいいサウンドが特徴だ。

ネック材と同じく指板にもパンガパンガを採用。縞模様の独特な木目が印象的だ。耐久性に優れたステンレス製フレットが、EHBシリーズ全モデル共通で打たれている。
EHBのために新開発されたオリジナルのヘッドレス専用ブリッジ。サドルは左右に1.5mmずつ動かすことができるため、弦間ピッチを範囲内で任意に設定できる。
ジョイントは特徴的な5点止めボルト・オン。ハイ・ポジションでの演奏性を考慮し、高音弦側のホーン裏はスクープするようにカットされている。
ボディ裏面は座奏時のフィット感と指板インレイを見る目線の角度を考慮し、ボディ外周に向かって薄くなるようカットされている。

【Specifications】
●ボディ:ポプラ・バール(トップ)、セレクテッド・ライトウェイト・アフリカン・マホガニー(バック)●ネック:パンガパンガ/ウォルナット(9ピース)●指板:パンガパンガ●スケール:1弦側33インチ〜5弦側35インチ●フレット数:24●ピックアップ:ノードストランド・カスタム・ビッグ・スプリット×2●コントロール:ヴォリューム、バランサー、トレブル/ベース(2連2軸)、ミドル/ミドル・フリケンシー(2連2軸)、EQバイパス・スイッチ●ペグ:カスタム・ヘッドピース●ブリッジ:MR5HS●カラー:トロピカル・シーフロア・フラット●価格:¥217,000

Yoshida’s Impression

4弦ベースのごとき輪郭で鳴るローB弦

 マルチ・スケールと呼ばれるモデルですが、5弦側を35インチにすることで、4弦ベースのE弦のごとき輪郭でローB弦が出てくれますね。8ビートでガンガンいきたいときも、ローB弦がバヨンバヨンにならないし、世界を変えてくれたという印象です。演奏者側から見れば、それほどフレットがグニャグニャした感じはなく、すぐに慣れると思いますね。ピックアップはノードストランド製で、芯が硬質な印象がありますが、ボディ鳴りが優れていて、どう拾っても大丈夫というところまで持っていけていると思いましたね。

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