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    新井和輝(King Gnu)の愛用ベースと5大ドームツアーで使用したエフェクター・ボード

    • Interview & Text:Shutaro Tsujimoto(Bass Magazine)
    • Photo:Takashi Yashima(Bass)、Kosuke Ito(Pedalboard)

    King GnuやMILLENNIUM PARADEでの活動のほか、君島大空 合奏形態、NewJeansなど数々のセッション・ワークもこなすベーシスト、新井和輝の使用機材を紹介する。King Gnuのライヴでのメイン器のほか、レコーディングやサポート・ワークで使用する4弦ベースや、2024年1月から3月にかけて開催された全国5大ドームツアーKing Gnu Dome Tour「THE GREATEST UNKNOWN」で使用されたエフェクター・ボードも今回特別に見せてもらった。

    新井和輝が自身のキャリアを語るインタビューはこちらから。

    新井の哲学が詰まったメイン・ベース

    2021年に限定生産された自身初のシグネイチャー・モデルで、5大ドーム・ツアーでメイン・ベースを務めた新井の愛器。「2 Μ Ο Я Ο」の録音でも使用された。フェンダー・アメリカン・デラックスのJazz Bass Vを母体に、オリジナル・シェイプのネックなど、自身のこだわりを詰め込んだモデルだ。改造などは施されていないため、材構成や各パーツは製品の仕様と同様とのこと。ライヴ会場がドームやスタジアム規模になって以降は“腰高で音抜けが良い”ことから本器をメインに据えている。


    幅広いサウンドに対応するUltra Noiseless Vintage Jazz Bassピックアップを搭載。

    3バンドEQプリアンプを搭載。コントロールの設定は“ほぼフラットにしている”とのこと。

    裏通しも可能なHigh Mass Bass Bridgeだが、新井は表通しで使用。弦はフェンダー製、ゲージは.045-.125。

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    『CEREMONY』期までのメイン器

    3rdアルバム『CEREMONY』(2020年)までのほぼすべての楽曲のレコーディングで使用されたフェンダー・アメリカン・デラックスのJazz Bass V。デリック・ホッジへのリスペクトで手に取った1本で、2000年頃に生産されたモデルだ。ボディはアッシュ、ネックはメイプル、指板はローズウッドという木材構成だ。

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    ツアーのアンコールで使用されたサブ器

    5大ドーム・ツアーではDeluxe Jazz Bass V Kazuki Arai Editionが色違いで2本登場し、ヴィンテージ・ナチュラルの本器はアンコールの「Teenager Forever」、「飛行艇」で使用された。炎を使った演出などにより弦が激しく消耗するため、アンコールではベースの持ち替えを行なったとのことだ。

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    君島大空 合奏形態でのメイン器としても使用

    2020年頃に入手した、フェンダー・カスタムショップのマスタービルダー、ヴィンセント・ヴァン・トリグトが手がけたジャズ・ベース。「SPECIALZ」のエレベ・パートや「雨燦々」のレコーディングで使用され、君島大空 合奏形態のライヴでもメイン器として使われている。1966年頃にルックスに変化があった指板のバインディング、ブロック・ポジション・マークが目を惹くモデルで、サウンドはミドルに特徴があり、“サンバーストの1966年製ジャズベ(下に掲載)に比べてミドルがパキッと出てスッキリした音”と新井は語る。


    ヘッド裏のヴィンセントのサイン。新井いわく“ヘッドは1965年の仕様で、66年のものに比べて少し薄め”とのこと。

    経年変化で焼けたようなルックスを再現するヘヴィ・レリックの仕上げ。弦はフェンダー製で、ゲージは.045-.105。

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    ダリル・ジョーンズが元所有者(?)の1966年製

    2020年6月に手に入れた1966年製フェンダー・ジャズ・ベース。「一途」、「BOY」、「千両役者」などの録音で使用された。Reverb経由で購入し、届いたハードケースにはなんとダリル・ジョーンズがこのベースを手にしている写真が同梱されていたとのこと。ジャズ・ベースは1966年中頃からポジション・マークがブロック・ポジション・マークへと変更されるが、本器はドット・ポジション・マークとなっている。グレイ・ボビンのピックアップがマウントされ、サウンドの印象は“ロー感があるけど、ちょっとダーク”とのこと。

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    シンセ・ベースに比肩する深い低音

    2022年3月に手に入れた1961年製フェンダー・プレシジョン・ベース。メイプル・ネックにスラブ貼りのローズウッド指板という仕様で、ポジション・マークはクレイ・ドット・タイプとなっている。サウンドは本人いわく“ローの塊みたいな音”、“シンベみたいに、ヤバいくらい低音が出る”とのこと。「硝子窓」の録音で使用された。“弦高はかなり高くて、弾きづらいですね(笑)。どんどん逆反りしていっちゃうので、フラット・ワウンド弦を張って、弦も緩めず、プレッシャーをかけてるところです”。

    1: Providence / STV-1JB BLK(チューナー)
    2: Shin‘s Music / Bass Master Preamp(プリアンプ)
    3: Fender / Engine Room LVL12 Power Supply(パワーサプライ)
    4: Boss / OC-5(オクターバー)
    5: Boss / OC-2(オクターバー)
    6&7: Subdecay / Proteus MkII(エンヴェロープ・フィルター)
    8: Darkglass Electronics / Microtubes B7K Ultra V2(プリアンプ)
    9: Tech 21 / YYZ Geddy Lee Signature SansAmp(プリアンプ)
    10: Tech 21 / SansAmp Bass Driver DI(プリアンプ)
    11: ハンドメイド / ミュート・スイッチ
    12: One Control / Crocodile Tail Loop OC10(スイッチャー)

    5大ドーム・ツアーの東京公演時に撮影された、King Gnuでのライヴ用ペダル・ボード。入出力は①(チューナー)の下に設置されたジャンクション・ボックスが統括しており、基本的にボード内の信号の流れは⑫(スイッチャー)との往復、というシステムとなっている。スイッチャーには④⑤⑥⑦⑧⑨⑩の7個のエフェクターがそれぞれ単体で接続されており、本人いわく“そのときどきで使うエフェクターを変わる”ため、複数ペダルでのループは組んでいないようだ。

    ⑧⑨⑩のプリアンプの使い分けは、⑩(Tech 21/SansAmp Bass Driver DI)がメインの歪み、⑧(Darkglass Electronics / Microtubes B7K Ultra V2)が「Slumberland」などでのゲイン・ブースター、⑨(Tech 21/YYZ Geddy Lee Signature SansAmp)は予備用とのこと。

    ⑥⑦のSubdecay製Proteus MkII(エンヴェロープ・フィルター)は、会場の環境によって使い分けるために同じモデルを2台セットしている。特筆すべきは⑥⑦ともにShinʻs Musicでのモディファイによりインプット・ゲインのツマミが増設されている点で、それぞれBカーブとCカーブの異なるコントロールであることから、個体差に応じた繊細な調整を可能にしている。

    ④⑤のボス製OC-2とOC-5(オクターバー)は、シンセ・ベースのようなサウンドを作る際に新井が多用するエフェクター。OC-2はアナログ式、OC-5はその後継にあたるデジタル・エフェクターで、2020年に登場した。それぞれローのかかり具合が異なるため両方をボードに載せている。5大ドーム・ツアーではOC-5の使用機会が多かったようだ。なお今回のツアーでは登場機会はなかったが、②のプリアンプはアクティヴ/パッシヴ・ベースの持ち替え時にレベル差を揃える用途で使用しているとのこと。

    ◎Profile
    あらい・かずき●1992年生まれ、東京都出身。大学時代に勢喜遊(d)を通じ、常田大希(g,vo)、井口理(vo)と前身バンドSrv.Vinciとしての活動を開始。2017年4月のKing Gnu始動以降も、さまざまなアーティストのライヴやレコーディングに参加し活動の幅を広げている。King Gnuとしては2023年11月29日に約4年ぶりとなる新作アルバム『THE GREATEST UNKNOWN』をリリース。2024年1月から3月にかけては全9公演、約38万人を動員した全国5大ドーム・ツアー“King Gnu Dome Tour「THE GREATEST UNKNOWN」”を開催、4月からはアジア諸国4都市7公演をまわる初のアジア・ツアーを行なった。2024年9月25日(水)には、5大ドーム・ツアーの東京ドーム公演の模様を収めた初の映像作品『King Gnu Dome Tour THE GREATEST UNKNOWN at TOKYO DOME』を発売。また、11月27日(水)には『THE GREATEST UNKNOWN』のアナログ盤がリリースされた。2025年2月からはファンクラブツアー「KING GNU LIVEHOUSE TOUR 2025 CLUB GNU EDITION」を開催する。
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    ※本記事は『ベース・マガジン2024年8月号』のコンテンツをWEB用に再構成したものです。

    ◎本記事が掲載されている号

    『ベース・マガジン2024年5月号(SPRING)』では本記事に加え、新井が『THE GREATEST UNKNOWN』や5大ドーム・ツアーなど最新モードについて語るインタビューのほか、ドラマーの勢喜遊とのリズム体対談、フロントマンの常田大希が語る新井の魅力、愛器紹介、ディスコグラフィなども掲載! さまざまな角度から “King Gnuの低音論”に迫る、全40ページにわたる総力特集となっています。

    ◎雑誌の購入はこちら

    ■Featured Bassist
    新井和輝(King Gnu)
    King Gnuの低音論――最強バンドの深淵に宿る、ローエンドの哲学

    <コンテンツ>
    Interview1 新井和輝〜『THE GREATEST UNKNOWN』とは何だったのか
    Interview2 新井和輝 × 勢喜遊〜リズム・セクションが明かすKing Gnuのライヴ哲学
    Interview3 常田大希〜コンポーザーが語る“King Gnuのボトム”
    Interview4 新井和輝〜ロング・インタビューで辿る、ベース・キャリアの全貌
    Playing Analysis  King Gnuのベース・ライン〜エレキ・ベース篇/シンセ・ベース篇
    Discography 参加作品で辿る新井和輝の軌跡
    Kazuki’s Gear 新井和輝の愛器を徹底解剖
    Selected Scores ベース・スコア「一途 (ALBUM ver.)」、「硝子窓」

    全40ページにわたって、“King Gnuの低音”を考察。ロング・インタビューをはじめとして多角的に迫る。
    本誌撮り下ろしによるグラフ・ページ。アート・ディレクターはMargt、撮影はフジイセイヤが担当した。
    バンドのドラマー、勢喜遊と“King Gnuのライヴ”をテーマに語る対談も。
    勢喜遊が表紙を飾るリズム&ドラム・マガジン2024年3月号でもふたりは対談を行なっているので、あわせてお楽しみいただきたい。
    本人のキャリアを総括するロング・インタビューを掲載。
    本人のセッション・ワークにまで迫ったディスコグラフィ・ページ。
    使用ベースに関してはセッティングなど細部にまで迫っています。

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