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    【連載:ダークグラスな事情】Vol.4 YU-KI(NOISEMAKER)

    • Photo(Gear):Hiroki Obara

    モダンなサウンドと豊富な機能を持ち合わせた製品群で、現代のベース・ギア・シーンの中核を担うダークグラスエレクトロニクス。『ダークグラスな事情』は、プロ・ベーシストが愛用するダークグラス製品の魅力を自らの言葉で語る連載企画だ。第4回目となる今回は、ラウド・ミュージックを独自のフィルターで昇華させた先鋭的なロック・サウンドで人気を博すNOISEMAKERより、YU-KIが登場! XLRアウトを用いた独自のスタイルで出力される、3種のペダルを紹介してくれた。

    Vintage Deluxe(プリアンプ/ディストーション)
    Vintage Ultra(プリアンプ/ディストーション)
    Alpha・Omega Ultra(プリアンプ/ディストーション)

    すごくいいバランスでミッドが表現されて、バンドにもうまくハマった。

    YU-KIが10年以上愛用し続けるVintage Deluxe。2系統のうち、主にロー感を担うクリーンの担当として使用され、XLRアウトから直接PA卓へ信号が送られる。BLENDとDRIVEを大幅にカットし、EQはほぼフラットに設定することでナチュラルなサウンドを演出している。ミニ・スイッチはそれぞれ、ATTACK:BOOST、GRUNT:FATを選択している。

     もともとMXRのM80 Bass D.I.+とか(Tech21製)サンズアンプ(ベース・ドライバーDI)をメインのプリアンプとして使っていたんだけど、ベース・シーンでの主流がダークグラスに移り変わってきたタイミングで、自分もMicrotubes B7K(プリアンプ/ディストーション)を買ってみたんです。でもNOISEMAKERでは、アンサンブルのバランス的にうまくハマらなかった。B7Kはベース単体ではすごくカッコいいんだけど、ドンシャリのキャラクターだったこともあって、NOISEMAKER的にはちょっと難しかったんですよね。そのなかでこのVintage Deluxeを試してみたら、すごくいいバランスでミッドが表現されて、バンドにもうまくハマってくれた。それで10年くらい前からVintage Deluxeを使い始めました。そのあとに上位機種の(後述する)Vintage Ultraも購入して、両方を併用するようになりましたね。

     僕はライヴではラインを2系統で出力していて、Vintage Deluxeが“かけっぱなしのプリアンプ”というイメージでクリーンの担当、Vintage Ultraを歪みの担当として使い分けています。それもあってVintage Deluxeの設定はBLENDとDRIVEを思い切りカットしていて、かなりクリーンに寄せた極端なセッティングにしています。EQ設定はこのペダルの帯域上、ローをブーストさせているんですけど、やっぱりいかに良いローを出せるか、NOISEMAKERではこれが重要だと思っています。ミニ・スイッチは感覚的ですけど、こちらもなるべく気持ちいいローが出るように設定しました。Vintage Deluxeは、最近入手した(後述する)Alpha・Omega Ultraと今後入れ替えようと思っているんですけど、歪み用とかブースターみたいな使い方に寄せても良さそうだなと思っています。

    ナチュラルな歪みで、この質感がめちゃくちゃ好きなんです。

    2系統のうち、歪み用途として用いられるVintage Ultra。こちらもXLRアウトから直接ミキサーへ信号が送られる。内蔵のキャビネット・シミュレーターを使用し、ディストーション・チャンネルは常時オンで使用される。DRIVEをかなり強めにブーストしている点が特徴で、EQはBASSブーストさせている。ミニ・スイッチはそれぞれ、LO MIDS:1kHz、HI MIDS:3kHz、ATTACK:CUT、GRUNT:BOOSTを選択している。

     2系統のうち歪みの担当として使っているVintage Ultraは、キャビネット・シミュレーターがすごく魅力的だったので購入しました。こちらは歪み用ということでDRIVEをかなり振り切っているけど、音像がクッキリと出てくれるんです。DRIVEをブーストしてもわりとナチュラルな歪みで、この質感がめちゃくちゃ好きなんです。歪ませても音ヤセしない点も気に入っています。BLENDは上げればカッコよくなるけど、上げすぎるとアンサンブルで抜けなくなるので、そこの塩梅には気を付けていますね。自分の使っているベースはけっこうミッドが出るモデルなのですが、ロー感を足すためにEQはBASSをブーストさせています。ミッドを削るのではなく、あえて下の帯域をブーストさせるという、足し算な考え方でセッティングしています。

     Vintage Ultraのキャビネット・シミュレーターのIRがすごく自分の好みで、これならライヴでも(キャビネットの)マイキングと代えても遜色なく使えるかな、という判断で最近のライヴから導入しています。今まで音の位相という部分で悩んでいたのですが、見事に解消されましたね。PA卓にもよりキレイに信号を送れて、場所や環境に左右されにくいのでかなり気に入っています。

    Alpha・Omega Ultraにはもうちょっと早く出会いたかった(笑)。

    最近入手したというAlpha・Omega Ultra。こちらもディストーション・チャンネルは常時オンで使用され、XLRアウトから直接ミキサーへ信号が伝達される。6バンドのグラフィックEQはほぼフラットで、歪みのキャラクターは“α”寄りに、やや強めに歪みを設定している。ローエンドのサチュレーションを強調するGROWLスイッチはオン、ハイ・ミッドの帯域をブーストするBITEスイッチはオフに設定している。

     Alpha・Omega UltraはウチのギターのHIDEが持っていて。試しに使わせてもらったらすごく良かったから、自分でも購入したんですよ。Alpha・Omega UltraはVintage Ultraと比較すると設定されているローの帯域が低いから、EQをほぼフラットの状態にしてもしっかりローが出てくれる。微々たる差かもしれないけど、Alpha・Omega Ultraのほうがバンド・アンサンブルで混ざったときにローの抜けが良かったんです。Vintage UltraやB7Kとは歪みの回路が違うということで、Alpha・Omega Ultraはちょっとファズ寄りというか、ジャキジャキし過ぎていない。そして歪みが太く出てくれるんです。太さを損なわず、よりナチュラルに歪んでくれる。より強く歪むんだけど、ベースの良さを表現してくれるめちゃくちゃ良い歪みだと感じています。

     EQ以外の設定としては、ロー感をブーストさせるためにGROWLスイッチはオンにしています。このスイッチがまた良くて、特にレコーディングではめちゃくちゃハマりましたね。DRIVEはブーストさせていているけど、けっこう上げてもしっかりロー感が残ってくれる点がすごく良いですね。ベース単体ではなく、アンサンブルで混ざったときにもちゃんとバンドを支えてくれるように鳴ってくれる。そういう“全体”のイメージでこの歪みを作っています。

     今後はVintage DeluxeをAlpha・Omega Ultraに変えて、ロー感のメイン担当として活躍してもらおうと思っていて。Vintage Ultraは“歪み+ミッド”みたいなイメージで、このふたつを軸にシステムを作っていきたいですね。いずれにしても、Alpha・Omega Ultraにはもうちょっと早く出会いたかった(笑)。もちろんVintage DeluxeもVintage Ultraも理想的な音ではあるんだけど、Alpha・Omega Ultraは下の帯域がよりクリアに鳴ってくれる。そういう部分を自分は欲していたんです。Vintage Ultraとともにキャビネット・シミュレーターを使うことでライヴではどんなサウンドになるのか、今からすごく楽しみです。

     ちなみに先日(8月21日)リリースした「EXIST」では、Alpha・Omega Ultraのキャビネット・シミュレーターを使いつつ、Vintage Deluxeとのライン2系統でレコーディングしています。すごく良い音で録れたと思っています。

    NOISEMAKER「EXIST」

     ダークグラスは、ベーシストが抱く“もうちょっとこうだったら良いのにな”とか、“こんなペダルがあったら良いのにな”という願望を叶えてくれるブランドだと思います。さすがはベースに特化したブランドですよね。たくさんの製品が出ているけど、今はDuality Fuzz(ファズ)とかMicrotubes X ULTRA(プリアンプ/ディストーション)あたりも気になっていて、ダークグラスをもっと深掘りしてみたいなと思っています。ダークグラスの製品はいつもデザインがカッコよくてワクワクさせてくれるし、音もきっと間違いないんだろうなと思います。

    Specifications

    Vintage Deluxe

    ●コントロール:ブレンド、レベル、ドライブ、ロー、ロー・ミッド、ハイ・ミッド、トレブル、アタック・スイッチ、グラント・スイッチ、グラウンド/リフト・スイッチ、バイパス・スイッチ
    ●入出力端子:インプット、アウトプット、パラレル・アウトプット、ダイレクト・アウトプット
    ●電源:DC9Vアダプター
    ●外形寸法:106(W)×45(D)×120(H)mm
    ●重量:350g

    【価格】オープンプライス(本記事での紹介モデルは廃盤/現行モデルはVintage Deluxe V3)

    お問い合わせ:キョーリツコーポレーション  Mail:support@kyoritsu-group.co.jp  メーカー・サイト

    Specifications

    Vintage Ultra

    ●コントロール:マスター、ブレンド、レベル、ドライブ、ベース、ロー・ミッド、ハイ・ミッド、トレブル、アタック・スイッチ、グラント・スイッチ、ロー・ミッド・3ウェイ・スイッチ、ハイ・ミッド・3ウェイ・スイッチ、ディストーション・スイッチ、バイパス・スイッチ
    ●入出力端子:インプット、アウトプット、ダイレクト・アウトプット
    ●電源:DC9Vアダプター
    ●外形寸法:125(W)×57(D)×96(H)mm
    ●重量:430g

    【価格】オープンプライス(本記事での紹介モデルは廃盤/現行モデルはVintage Ultra V2 with Aux In)

    お問い合わせ:キョーリツコーポレーション  Mail:support@kyoritsu-group.co.jp  メーカー・サイト

    Specifications

    Alpha・Omega Ultra

    ●コントロール:モッド、ブレンド、レベル、ドライブ、グロウル・スイッチ、バイト・スイッチ、ベース、ミッド・バンズ×4、トレブル、ディストーション・スイッチ、バイパス・スイッチ
    ●入出力端子:インプット、アウトプット、ダイレクト・アウトプット
    ●電源:DC9Vアダプター
    ●外形寸法:125(W)×57(D)×96(H)mm
    ●重量:430g

    【価格】オープンプライス(本記事での紹介モデルは廃盤/現行モデルはALPHA·OMEGA ULTRA V2 with Aux In)

    お問い合わせ:キョーリツコーポレーション  Mail:support@kyoritsu-group.co.jp  メーカー・サイト

    ◎Profile
    ユーキ●1986年4月4日生まれ、北海道出身。小学生でベースを始める。高校卒業後に音楽専門学校へと進み、そこで知り合ったAG(vo)とHIDE(g)が結成したNOISEMAKERに加入。バンドは1stアルバム『The 6 matters of the 6』でデビューし、ラウド・シーンを中心に精力的に活動を展開、幅広い層から人気を獲得する。2015年に4thミニ・アルバム『NEO』でメジャー・デビューを果たす。国内の大型フェスの常連であり、2018年からはバンド主宰のフェス“KITAKAZE ROCK FES”を開催している。2024年8月21日にデジタル・シングル「EXIST」をリリースした。YU-KIはその他、L’Arc〜en〜Cielのヴォーカリスト、HYDEのソロ・プロジェクトなどのサポートも行なっている。

    ◎Information
    NOISEMAKER Official HP X Instagram YouTube
    YU-KI X Instagram