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【動画連動】堀江晶太(PENGUIN RESEARCH)が体感するZOOM MS-60B+の実力

  • Text:Makoto Kawabe
  • Photo:HIroki Obara

堀江晶太(PENGUIN RESEARCH)が体感した
ZOOM MS-60B+ MultiStomp

先代機MS-60Bを長年使用してきたという堀江晶太(PENGUIN RESEARCH)に、MS-60B+の実力をチェックしてもらった。

ハイレベルな音質をオールインワンで賄える実力を兼ね備えている。

━━ZOOMのマルチ・エフェクターを長年使用されているようですね。

 ベースを始めたばかりの頃に初めて買ったのが銀色のZOOMのマルチ(ギター用の505ⅡCGまたはベース用の506Ⅱ)で、エフェクターの原体験がZOOMのマルチだったんです。それから赤色の後続モデル(B1やB2)をはじめ、新しい製品が出るたびに購入して使っていました。先代のMS-60Bもエフェクター・ボードの一角に置いていて、レギュラーで置いているエフェクターでは表現できない音作りをアシストしてもらうイメージで使っていましたね。

━━MS-60B+を使用した第一印象は?

 まず色が良いですよね。スポーツカーに通じるサイドのボディ・ラインも綺麗です。音色や機能性も大事ですけど、やっぱりカッコいいものが好きなので、ルックスが素敵だなと思いました。音色は全体的に完成度が高くて、音質も非常に良くなって解像度も上がっているし、レイテンシーも気にならなくなりましたね。ベースってなんだかんだ生の楽器の音やピッキングのニュアンスなどの要素がとても重要な楽器なので、損失や劣化がないまま伝えられるのは素晴らしいと思うし、機材の進化を感じましたね。アンプ・モデルの反応の良さも特筆すべき点で、弾いた瞬間のアタックと音を切った瞬間のニュアンスが実際の演奏と一致した印象があって、これまでのモデリングでは感じづらかった感覚なんですけど、強く弾いても弱く弾いてもピッキングの追従性が良くて、これまで以上に気持ちよく弾けるようになったと感じました。

━━ZOOMオリジナル・プリアンプ3種の印象はいかがでしたか?

 CLEAR DRIVER PREAMPは通すだけで全体的な音像がギュッと引き締まるというか、輪郭が立って解像度が上がる印象があって、AMPG SVTなどのアンプ・モデリングを通すとより顕著になりますね。BLENDを最大にするとギラギラと滾るような輪郭とエネルギーが出ます。ミッドを抜いたドンシャリ系のセッティングはベースだけで聴くと耳に痛い感じがするかもしれないけど、これくらい派手にしたほうが情報量が多いモダンな音像の楽曲では居場所ができて使いやすいかと思います。

 DJENT PREAMPはスタイリシュな暴れん坊という感じで、歪ませてもロー・エンドがあって、名前のとおりラウドなジャンルに合うと思うんですけど、例えば歪みを少し押さえてHIBOOSTを切ると、粘り気のあるオーバードライブといった感じになるし、幅広いジャンルで使えそうです。

 SUPER LOW PREAMPはオクターバーのような効果で、低音がメチャメチャ出ますね。作曲家やアレンジャー目線で自分が手がける作品ではロー・エンドの物量が欲しくなることが多くて、実際にプラグインで足したりシンセ・ベースを混ぜたりしているので、このプリアンプはオケなかで聴いたときに存在感を放ってくれる、アンサンブル全体の額縁を広げてくれる、モダンな音楽性に合ったプリアンプだと思いました。ベース単体だと低音を出し過ぎてしまいがちなので、アンサンブル内で必要な量を見定めるのがオススメですね。

━━モデリング・プリアンプ“1073PREAMP”はどう感じましたか?

 型名的にヴィンテージ・マイク・プリアンプを彷彿とさせますけど、その機材と同じようにエネルギーがガッと上がって硬質な輪郭になり、ガッツが出ますね。コンプともまた違った反応でエネルギーが上がってスピードも速くて弾いていて気持ちいですね。BASS-Fの設定も絶妙で、キックより下に潜りたいときや重低音のボトム感が欲しいときは55Hz、ルートの実音感やフレーズの明瞭度を出したいときは220Hzといった感じで使い分けると良いと思います。ヴィンテージ機材ではEQの周波数帯が指定されていることが多いですけど、ある程度選択肢が決まっていて迷わずに済みますし、使いやすくて好きですね。HIも持ち上げるとリッチで良い感じです。

━━コントロールの操作性や専用アプリ“Handy Guitar Lab for MS-60B+”の使い勝手は?

 専用アプリではエフェクトの順番を変えたりとか圧倒的に直感で操作できますし、本体の操作も説明書を読まなくても視覚的に判断できて、基本的に1発でアクセスできるので楽ですね。筐体のスイッチが大型化されて足でも操作しやすくなったし、これだけでどんな現場も対応できそうです。

━━改めて、MS-60B+の評価をお願いします。

 先代モデルと同じく便利屋としても置いておけますし、ライヴやレコーディングといった環境でもよりハイレベルな音質をオールインワンで賄える実力を兼ね備えていて、現代的な音楽性にも対応するエフェクトも多くて進化していると思いました。現場をたくさん熟しているプロにも、これからベースをはじめる初心者の方にもすべてのベーシストに自信を持ってオススメできるアイテムだと思います。

堀江が作成したオリジナル・プリセットを
本人のコメントとともに紹介!

動画内のデモ演奏で使用された堀江のオリジナル・プリセット。
接続順に右から、GLAM COMPRESSOR(コンプレッサー)、BASS METAL DRIVE(オーバードライブ)、D.I PLUS PREAMP(プリアンプ)、SEQUENCE FILTER(エンヴェロープ・フィルター)、AMPG SVT(アンプ・モデリング)、BASS GRAPHIC EQ(イコライザー)。

 最初に通したのがGLAM COMPRESSORというコンプで、ローが残って重心がガチッとしたまま潰れてくれるので印象が良かったです。ボトム側から先に圧縮されがちな従来のストンプ系コンプに対する印象を覆してくれました。エフェクトの入り口でローをしっかり残せておけるのは重要ですしドライをミックスできるのも使いやすいです。BASS METAL DRIVE、D.I PLUS PREAMP、SEQUENCE FILTERの3つは弾きながらオン/オフしていたエフェクターですね。

 デモ演奏内で最初に踏んだSEQUENCE FILTERは、“SPEED”をデモ楽曲のBPMに合わせています。こういうランダム性のある効果が好きで、現代的な音楽のアプローチとして有用だなと思いました。

 D.I PLUS PREAMPはジューシーな音色でしっかり歪んでくれますね。モダンなロックでも使えるし、セッティング次第でアンプ・ライクに寄せたり、“CHANNEL”をクリーンにしてよりハッキリした音色にしたり、ちょっとした味付けとしても使えます。“BLEND”でドライ音を混ぜられるのも良いですね。音作りは基本的に混ぜていくものだと思うので、こういう機能はありがたいです。

 BASS METAL DRIVEのような過激な歪みは、最初に買ったマルチ・エフェクターの頃から搭載されていて、すごい音色だと思う反面、“どこで使うんだろ?”と思っていたんですけど、やっと実戦投入できて嬉しいです(笑)。倍音がガッと出てくるので、音程感のない表現でも使えるし、“BALANCE”でドライ音を混ぜれば実音の音程感を保ちつつ奥のほうで這ってるような歪みを混ぜた音色も作れるので使いやすいです。以前はぶっ飛び系の音色イメージでしたけど、実践的な質感を出せるようになって、進化しているなと思いました。

 AMPG SVTは、アンペグSVTのモデリングで、実機らしいヤンチャな密度感や暴れ感が出せて、ピッキングしたときのアタックとリリースの輪郭が残るのも好印象でした。“CABINET”のパラメーターでキャビネット(マイク)を通した音色のバランスを変えられるのも良いですね。ちなみにAMPG SVTのEQは思い切ってブーストしたほうがガッツ感が出せてそれっぽくなりますね。トレブルはやり過ぎた分を抑えつつ、スラップのアタックのようなピッキング・ニュアンスを残すために“CABINET”を70%くらいまで下げました。

 最終段のBASS GRAPHIC EQはトータルEQとして質感を整えるために使っています。先代のMS-60Bでもこういった使い方をしていましたけど、いろいろ作ったうえでアンサンブルとの兼ね合いなどから最終的な微調整をしています。今回はミッドを多少カットして使用しました。

◎Profile
ほりえ・しょうた●作詞作編曲家、演奏家。5人組バンドPENGUIN RESEARCHのベーシスト、プロデューサーとして2016年のメジャー・デビューから活動中。また、ボーカロイド・クリエイターkemuとして、2011年から楽曲制作活動を行なう。LiSA、ReoNa、浦島坂田船、星街すいせい など、多くのアーティスト、作品への楽曲提供、サウンド・プロデュースを手がける。PENGUIN RESEARCHは2024年7月24日に、TVアニメ『杖と剣のウィストリア』のオープニング主題歌にも起用されたシングル「Fire and Fear」をリリースした。

◎Information
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