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Genzler MAGELLAN PRE/DI PEDAL×山本大樹(My Hair is Bad)

  • Product Description:Makoto Kawabe
  • Photo:Chika Suzuki

徹底した現場主義による先見性と高い技術力を武器に、ベース・アンプ・シーンで存在感を放ち続けるNY発のアンプ・ブランド、ゲンツラー。近年ではエフェクト・ペダルの分野でも注目を集める同社より、初となるペダル型プリアンプ“MAGELLAN PRE/DI PEDAL”が登場した。ベース用ペダル・シーンの中核的存在である“プリアンプ”に満を持して切り込む本機の実力とは? ロック・シーンで若者を中心に絶大な支持を得る3ピース・バンド、My Hair is Badの山本大樹にサウンドをチェックしてもらった。

MAGELLAN PRE/DI PEDAL

アンプ・ヘッドの要素を凝縮した究極のピュア・トーン

 ゲンツラーのベース・アンプ・ヘッド、マゼラン・シリーズが誇る豊富な音色バリエーションや機能性を、コンパクトで軽量なペダル型のフォーマットに落とし込んだプリアンプDI。

 ワイドレンジな入力ゲイン・コントロールをはじめ、ミドルのみ周波数可変(150~2.8kHz)の3バンド・セミ・パラメトリックEQ(±15dB)、周波数可変(25~120Hz)のハイパス・フィルター(18dB/Oct)、2種類のコンター・コントロールにより、色づけのないクリアな音色からアグレッシブな音色まで幅広く柔軟な音作りを可能とする。コンター・コントロールは、ミドルをカットしつつトレブル/ベースをブーストすることでモダンな音作りを促進させる“カーブA”と、ハイ・ミッド/ハイを絞り、ロー・ミッドをバンプさせつつロー・エンドを緩やかにロール・オフさせる“カーブB”をフット・スイッチで選択する仕様で、どちらもEQの傾斜が緩やかで、破綻しにくく音楽的な音色変化を得られるのが特徴だ。

 入出力端子も充実しており、プリ/ポストEQセレクトとグランド/リフトを備えたXLRダイレクト・アウト、AUX入力(ステレオ/モノラル対応)、ヘッドフォン・アウトを装備し、機能性にも優れている。DC入力は極性を自動判別し9~18Vの電源に対応するなどゲンツラーのペダル・ラインナップと共通仕様を持つほか、同時使用時にはデザイン性だけでなく音色面でも抜群のコンビネーションを発揮する。

Specifications
●コントロール:インプット、フィルター、マスター、カーブA、カーブB、ベース、ミッド、ミッド・フリケンシー、トレブル、ポスト/プリEQスイッチ、グラウンド/リフト・スイッチ、コンター・スイッチ、オン/オフ・スイッチ●入出力端子:インプット、アウトプット、ヘッドフォン・アウト、AUXイン、ダイレクト・アウト●電源:9〜18Vアダプター●外径寸法:152(W)×110(D)×63(H)mm●重量:500g●価格:¥46,200

2種の異なるレスポンス・カーブを提供するコンターはフット・スイッチで切り替え可能。大幅な音色変化を瞬時に得られるので、奏法や曲中での使い分けなどにも活用できるだろう。
右側に位置するフット・スイッチではインプットの信号をコントロールするが、本機は一般的なオン/オフではなく、ミュート/アクティヴを切り替えるというこだわりの設計だ。
入力信号のローカット・オフの周波数を調整するフィルターでは、時計まわりに回すと低域がカットされ信号の伸びを抑える。
筐体背面には、自宅練習などの際に活用できる、ヘッドフォン・アウトとAUX入力といった多彩な入出力を備えている。

Maker Interview
ジェフ・ゲンツラー(Genzler創設者)

MAGELLAN PRE/DI PEDALに込められたこだわりを、ブランド創設者のジェフ・ゲンツラー氏に聞いた。

コンター回路を組み合わせ、ペダル型プリアンプとしての万能性を拡張させた。

━━アンプ・ヘッド“マゼラン”をペダル型に落とし込む際、工夫/苦労した点を教えてください。

 私たちが目指したのは、マゼラン・ベース・アンプのプリアンプ機能をすべて取り出した信頼性の高いコンパクト・ペダルを作ること。そのためMG-350や800といったアンプ・ユーザーたちの声を頼りに、MG-350のプリアンプ設計を持ちつつ、ユニークなコンター回路を組み合わせることでペダルとしての万能性を拡張させました。このペダルはAとBというふたつの独立したコンターを選択でき、両スロープのコントロールをフット・スイッチによって切り替えることができます。

━━そのコンター・コントロールは、どのような使い方が適しているか教えてください。

 この機能がペアのセットになっていることがマゼラン・ベース・アンプと異なる点。アンプのコンター機能は重要で、シンプルな操作によるトーン強化や音作りといった使い勝手の良さがポイントでした。そのためペダルではふたつのコンター・スロープ(A/B)をフット・スイッチで選択できるよう発展させており、AとBそれぞれ異なるレベルに操作可能なので、両スロープ間で劇的に異なる設定でプリセットさせることもできます。

━━一般的なオン/オフ・スイッチではなく、ミュートとアクティヴを切り替える“ミュート・スイッチ”とした理由は?

 このペダルはエフェクト・ボード内の信号に加えたりバイパスしたりするものではないと考えています。要は信号における最初のデバイス、すなわちベースの次に配置されるべきものなのです。プリアンプとして機能するため楽器からの信号をライン・レベルに出力できるし、どんなパワー・アンプでもレベルを増強させることができます。加えてDIとしてPAやモニター用コンソールへ信号を送ることもできるほか、ミュート機能によりXLR出力をミュートさせることで、ステージ上でのチューニングも可能となります。

━━本ペダルはどんなプレイヤーにお薦めできますか?

 手軽に持ち運べるプリアンプDIを求めるプレイヤーたちには持ってこいでしょう。高品位な音色が小さく堅牢なアルミ筐体に組み込まれていることは、ペダル・ボードに配置する際のメリットとなり、マゼラン・ベース・アンプの機能を受け継いだことで、幅広い音楽的なトーンを選ぶことができます。コンパクトながらも機能をフルに搭載していますから、飛行機はもちろん、持ち運べる機材量に制限がある公共交通機関での移動時など、馴染みのトーンと機能を持ち運ぶ必要がある人たちの大きな助けとなるはずです。

━━ゲンツラーのほかエフェクターとの併用をどう考えますか?

 ほかのペダルと組み合わせ、機能や音色を拡張していく際、このペダルは音作りの中核として機能するでしょう。もちろん市場に存在するほぼすべてのベース用ペダルとも高い互換性を有しています。

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