UP

ACE BASS Produced by あきらかにあきら(THE ORAL CIGARETTES)

  • Text:Takahisa Kondo
  • Photo:Takashi Yashima

次世代ベース・ヒーローが立ち上げた
新鋭ベース・ブランドが始動

ロック・シーンを牽引する4人組THE ORAL CIGARETTESのベーシスト、あきらかにあきらが新進気鋭のベース・ブランド“ACE BASS”を始動させた。次世代ベース・ヒーローの筆頭株としてベース・シーンで圧倒的な存在感を放つ彼は、どういった経緯でブランドを立ち上げ、ベース・モデルにどのような思いを込めたのか。いまだ謎のベールに包まれるブランドの実態、そしてベースの実力をあきらへのインタビューから検証する。

ACE BASS AB-4 STD

圧倒的なコスト・パフォーマンスに秘めた確かな実用性

Front
Back

 シンセ・ベースが溢れているこの時代だからこそ、エレキ・ベースの魅力を改めて世に伝えたい──THE ORAL CIGARETTESのベーシスト、あきらかにあきら(以下あきら)が抱いたこの思いから生まれたのが、ベース・ブランド“ACE BASS”だ。ベーシストが既存のブランドからシグネイチャー・モデルを発売するという例は数多くみられるが、“ブランド自体を立ち上げる”という事例はまだまだ少ないだけに、楽器業界で話題となっている。

 さかのぼること2019年、コロナ禍であきらが起こしたアクションが“BASS MAGAZINE Presents あきらかにあきらのオンライン・ベース塾”の定期開催。ここでは、オンライン上で生徒たちと相互にやりとりする機会も多く、その交流のなかで彼が感じたのが、初心者にとっての“初めて手にする楽器”の大切さであった。

 一方、長年にわたってF-BASSをメイン・ベースにしていたあきらが、自身のモデルをワンオフで制作。のちに“AB-5 PRO”と名づけられたこの個体は、滋賀県にあるギター工房、Altero Custom Guitarsが制作を担当。さらにKarDiaNが開発したプリアンプを搭載するなど、まさに世界に1本だけのカスタム・モデルとしてあきらの理想を叶えるベースとなった。

 このふたつの事象を起点に、AB-5 PROを基調とした量産モデル、“AB-4 STD”への構想が生まれる。とはいえ、楽器ブランドをゼロから立ち上げるというのは未知の世界でもあり、さらに“価格を抑える”というポイントをクリアするためには、かなりの試行錯誤があったという。そのハードルを超えるにあたって大きな力となったのが、Sago New Material Guitarsとの出会いである。結果的に、製作から販売に至るまでの行程をSago New Material Guitarsで行なうことでAB-4 STDの発売が実現した。以上のように、国内ですでに定評のある複数の工房(しかも関西を拠点とする工房)を横断してコラボレーションしている点も、つなぎ役と言われるベーシスト由来のブランドならでは、と言えるだろう。ちなみに、先日発売となった初回入荷分は、あきら自身がすべての個体の検品に携わるなど、フレキシブルな対応も独特で、今後のさらなる展開が期待されている。

 あきらがライヴでも使用している先述の5弦ベースAB-5 PROは、彼が描いたラフ画をAltero Custom Guitarsが図面に書き起こし完成させたモデルである。このAB-5 PROを元に低価格で量産するため、さまざまな面で仕様の変更が行なわれた。まずは、4弦ベースとして全体のバランスを見直すことにともない、ボルトオンのネック・ジョイントは4点止めに変更している(AB-5 PROは5点止め)。ボディ材については、軽量化を狙いポプラをチョイス。また、パーツ類についてはシングルコイルのピックアップを2基、ブリッジはトラディショナルなタイプを搭載している。コントロールについては、1ヴォリューム/1バランサー/トーンという構成になっており、JBスタイルとは操作性が異なっている。

 ちなみに、AB-4 STDはパッシヴのモデルとなるが、ボディ裏のキャビティがかなり大きく取られている点も興味深い。今後、本器を手にしたユーザーがオンボード・プリなどを搭載したいと思った際、新たにザグることなく回路を設置するスペースを確保できるのだ。総じて、とても軽量なベースとなっており、激しいステージ・アクションだけでなく、自宅で座って抱える時も、身体への負担がかなり軽減されている印象だ。シンプルな楽器であるが、目を引く独特のデザインなど、ブランドの顔となるあきらのキャラクターを落とし込んだ楽器だと言える。

Specifications
●ボディ:ポプラ●ネック:メイプル●指板:メイプル●スケール:34インチ●フレット数:22●ピックアップ:JBスタイル×2●コントロール:ヴォリューム、バランサー、トーン●ペグ:コンパクト・ベース・チューナー●ブリッジ:スタンダード・ベース・ブリッジ●カラー:サテン・ブラック●価格:99,000円

ピックアップはオリジナルのJBスタイルを2基搭載している。シンプルながらも使い勝手に優れたまとまりのあるサウンドが特徴だ。なお本器にはピックガードは付属していない。
コントロールはステージでの取り回しの良さを考慮し、あきらが実際に使用するモデルと同様の、ヴォリューム、ピックアップ・バランサー、トーンというレイアウトが採用されている。
ペグは軽量かつ優れた安定性を備えるコンパクト・ベース・チューナーを採用。またヘッド上部には“A”をあしらったブランド・ロゴがプリントされている。
トラスロッドの調整口はボディ側に配置されているが、ネジを入れるスペースが確保されているため、ネックをハズさずとも調整できる。こういったメインテナンスのしやすさも魅力のひとつだ。

▼ 次ページではあきらのコメントを掲載! ▼