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    ビルダーが語るベース・エフェクターの極意【Vivie】

    • Interview:Koji Kano

    今後は逆にパラメーターを減らしたペダルも
    おもしろいんじゃないかと思っています。(藤盛)

    ――2019年に発売されたオーバードライブ“Rhinotes”も多くのベーシストから支持を得ているペダルですが、こちらはどういったテイストのサウンドを狙ったのでしょうか?

    藤盛:より求められるモダンな歪みを作りたいという思いがコンセプトとしてありました。そのなかでOwlMightyと同じく、オーバードライブだけどディストーションのようなきめ細かさを備えていて、なおかつオケに馴染みやすい、踏みっぱなしでも使える歪みという狙いもありましたね。ただRhinotesは単体のオーバードライブなので、ゲインを上げていくことでより過激な歪みを作れるという振り幅も持たせています。昨今だとベースの歪みはより主張が強くても許される傾向で、市民権を得ている印象もあるので今までのようにナチュラルにオケを支えるための歪みではなく、ベースが前に出ていくための一旦を担えるサウンド感を意識しました。

    Rhinotes

    ――Rhinotesはベース、ミドル、トレブルの3バンドEQを搭載しているのがポイントで、これによってプリアンプのように使っている人もいますよね?

    藤盛:そうですね。プリアンプとしても使ってほしいという考えもありました。Rhinotesは開発にけっこう苦労したペダルで、プリアンプとして踏みっぱなしでも使えるように、ロー・ゲインのサウンドにかなりこだわっているんです。

    河合:3バンドEQももちろんですが、ミックスでクリーン音を足した際に分離しすぎないようなミックス回路と、ゲインの位置に関わらず魅力的なサウンドになるようなドライブ回路は特に意識したポイントです。ギター用の歪みってある種確立されているけど、ベースの場合は回路に決定版みたいなものがないので、そこをトライ&エラーしていく作業は困難だった部分でもあり、楽しさもありました。その結果としてこういうヒット・ペダルが生まれることもあるので、そこは設計しがいのある部分ですよね。

    ――Rhinotesはミドルの周波数帯を400Hz/800Hzに変更できるほか、OwlMightyもミドルにはフリケンシーを搭載している点からも、Vivieとしてミドルに対してのこだわりが感じられます。

    藤盛:やはりミドルはキモになる帯域だと思っています。それって要はミドルのどこを出せばいいかではなくて、バンド・アンサンブルでベースが担う主な役割としてのロー・エンドを際立たせるために、ミドルをうまく使うべきということ。でもそれはすごく難しい部分でもあるので、そこに自由度を持たせるためにフリケンシーを付けているんです。加えてミドルはアンサンブルのなかでも抜けてくるポイントでもあるので、前に出てくるようなより細かい設定をミドルで実現させたいという考えも持っています。

    ――2022年に発売された新型コンプレッサー“Taurustone”にも3バンドEQが搭載されています。コンプレッサーにEQを付けるというのは斬新な考えですが、これにはどういった狙いがあったのでしょうか?

    藤盛:まず、コンプレッサーをかけることでの音質変化は免れない部分。だから3バンドEQを付けた狙いとしてはふたつあって、ひとつはコンプはかけるけど音質は変化させたくない場合の補正用としての用途、ふたつ目はコンプをかけた際の音の変化をより際立たせるためのイコライジング、バキバキしたものをさらに追い込んでもらうという両用途を考慮しています。

    河合:同時にプリアンプのようにこれだけで積極的に音作りしてもらうことも想定していて、スラップ用のバキバキなコンプレッサーとドンシャリのEQセッティングを組み合わせて、それらのセットをひとつのスイッチで作り出すという使い方もできると思います。レシオとアタック/リリースのコントロールはプリセットによるスイッチ式を採用しているのですが、各パラメーターが細かく設定できるコンプレッサーは市場にたくさんあるなかで、Vivieらしいコンプレッサーを追い求めた結果、ある程度プリセットされた使いやすさ、設定を突き詰めなくても高品位なコンプ・サウンドを作り出せるという部分を狙っています。

    ――これまでOwlMighty内蔵のものやFenneCompをはじめ、いくつものコンプレッサーをリリースしていますが、それらのコンセプトにはどのような違いがあるのでしょうか?

    藤盛:例えばOwlMightyに内蔵しているコンプレッサーはナチュラル寄り、FenneCompは逆にキャラクターの強いものになっています。だから“こういったコンプを作りたい”という決まりきった考えは持っていなくて、用途によって各モデルを使い分けてもらえたらと思っています。

    河合:ナチュラルなものとキャラクターの強いもので回路設計も大きく変わっていて、味付けのあるものであれば最初にどういう味付けをするのかを決めたうえで、それに合わせた回路設計をしていくのですが、そのほうがゴールが決まっているという意味でも設計しやすいんです。逆にナチュラルなほうはちょっと難しくて、ナチュラルと言ってもエフェクトをかけているわけなので、何をもってナチュラルと取るのかという部分でもあるし、もちろん聴覚上の影響もある。例えばFenneCompの場合だと、スラップの際に気持ちいいアタックを出すという部分が一番のテーマで、補正用とか粒を揃えるというよりもスラップで気持ちいいサウンドを作るというゴールがありました。そこから細かくリファレンスしてどういう回路に落とし込むかを考えたとき、コンプが反応する帯域をアタック部分に寄せ、スラップのアタックの音に反応してコンプが強くかかるよう設計していきました。

    藤盛:まずコンプにはふたつの種類があると思っていて、ひとつ目はベーシストが前に出るための最強の武器というイメージのエフェクティブなコンプ、ふたつ目はアンサンブルの屋台骨を支える安定した出音を鳴らすためのナチュラルなコンプ。そのなかで最近のトレンドとしては、よりナチュラルな志向になってきているように感じています。バキバキなエフェクティブなものが少し前に流行りましたけど、それから最近はいかにクリアな音質を保てるかという部分が求められていると思います。でも歪みのようにトレンドの移り変わりがはっきりしていないし、両方好きな人も明確にいる。だから弊社としてもどちらかに寄せるというよりは、両方のパターンを想定して製品を企画しています。

    Taurustone
    FenneComp

    ――最後に今後における製品開発の展望を教えてください。SNSで情報があがっているRhinotesのIKUOさんモデルも気になります。

    藤盛:個人的にVivieのペダルにはわかりやすいけどいろいろ弄れて何でもできるという強みがあると思うので、今後は逆にパラメーターを減らしたペダルもおもしろいんじゃないかと思っています。実は現在、そういった製品の構想を練っている最中でして、そういう一本勝負みたいな考えの製品も今後登場するかもしれませんね。11月末に出るRhinotesのIKUOさんモデルは、Rhinotesの良さを踏襲しつつ、特にミックスのクリーン・サウンドにこだわりを込めているので、ぜひ楽しみにしていてください。

    ▼Bass Magazine Webにて掲載したVivie製品の記事はコチラから!▼

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    発売中のベース・マガジン2022年11月号では、老舗国産ブランドとして高品位なベース用エフェクターを世に送り続けるフリーダム カスタムギターリサーチの代表・深野真氏と、同社のペダルの製造を手がける高木製作所の代表・高木光輝氏の対談を掲載しています。

    また同号では、特集『ベーシストのエフェクト・システム2022』を84ページという大ヴォリュームで掲載! プロ・ベーシストのエフェクト・ボードや人気プリアンプのセッティングの紹介のほか、プリアンプ/歪み/コンプの注目モデルやエンヴェロプ・フィルター、マルチ・エフェクターの最新事情、エフェクト・ボードを組む際の注意点など、ベーシストにとってのエフェクターを大検証しています。

    そのほか、23年ぶりとなる新譜大教典『BLOODIEST』を発布した聖飢魔Ⅱのゼノン石川和尚の特集、テクニカルなスラップ・フレーズの作り方にフォーカスした奏法特集『スラップ・フレーズ魔改造の手順』など、さまざまな記事を掲載しています。ぜひチェックしてみてください!