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pandaMidi Solutions Future Impact V3 解体新書

  • Text,Playing&Recording:Makoto Kawabe

専用エディタ“Future Impact V3 Editor V3.6”
〜活用法と可能性〜

 本体だけでも多彩な音色表現が可能なFuture Impactだが、PCに接続して専用エディタを活用すればさらに深い“Future Impactサウンド”を堪能できる。本体とPCをMIDIで接続したうえで専用エディタを起動すると、以下の画像のようなEditor画面が立ち上がる。MIDIタブからFuture Impactと接続するポートを選び、エディタ上の任意のパラメータを動かしてみよう。本体のLEDに“–”と表示されれば接続OK。すでにこの状態でエディタ上の設定が本体に反映されているはずだ。Fileタブなどから任意のプログラムを読み込んだら準備完了だ。

 加えてFuture Impactの信号の流れも理解しておこう。Future Impactは4基のVCOによって生成されるシンセ音のほか、3つのハーモナイザーとディストーション・ブロックによって生成される音、ダイレクトの楽器音、ノイズ・ジェネレータが生成するノイズ音などがフィルター・ブロックに送られ、エフェクト・ブロックを経て出力される。エフェクト・ブロックにはダイレクトの楽器音もミックスできる。

①読み込んだプログラムを表示する。INTを押すとすべてのパラメータがイニシャライズ(初期化)される。ゼロから音作りしたいときに活用しよう。

②V3.6で追加された4つのFlexiコントロール。LEARNの上のボタンを押して点滅している間に任意のパラメータをクリックすると、そのフェーダーが2本になり、各フェーダーの値を指定したSOURCEの変化に合わせて選択したカーブで行き来する。SOURCEの対象はLFOだけでなく、ピッチや強弱など多岐にわたるので、アイディア次第で多彩な効果を作り出せる。

③4基のVCOブロック。各VCOのピッチや、ノコギリ波(SAW)/方形波(SQR)/三角波(TRI)のバランス、方形波のパルス幅や可変周期、ノコギリ波のディケイ・タイムなど調整できる。右上はマスターのトランス・ポーズ。要は発振器の波形で、予備知識なしでも音を出しながらいじっていけば音色の雰囲気が掴めるだろう。

④VCF、VCA、ノイズ・ジェネレータ、LFOの各ブロック。上段はフィルター・ブロックへの入力ミキサーと各種フィルターの設定。下段はフィルター・ブロックを通過した信号の音量変化(エンヴェロープ)、フィルターのかかり方、ノイズ・ジェネレータの音量変化、さまざまな“揺れ”を発生させるLFOの周期と深さに関するパラメータだ。

⑤3つのハーモナイザーのうち、VOICE1は1オクターヴ・アップ、VOICE2とVOICE3はHARMONIZERで設定したピッチとなり、HARM MIXERがディストーション・ブロックに送るミキサーで、ダイレクトの楽器音を混ぜられるのがポイント。GRADEとTONEで歪みのキャラクターと深さを調整した信号がフィルター・ブロックのミキサーへと送られる。

⑥エフェクト後の楽器音とVCF出力の最終ミキサー。2本あるVCFフェーダーは音量変化のカーブが異なるが直列なので両方上げないと音が出ない。Flexiコントロールで活用する際に使い分ける。

⑦エフェクト・ブロック。オーバードライブ、4バンドのセミ・パラメトリックEQ、コーラス、ディレイがあり、それぞれのブロックをクリックするとパラメータが現われる。ダイレクトの楽器音とフィルター・ブロック通過後の信号を別々にオン/オフできる。オーバードライブとEQは順序を前後できる。

⑧鍵盤とコピペなどの便利機能。鍵盤はシンセ音のみの確認をしたいときに便利。すべてのパラメータをランダムに選べる暴力的な機能もおもしろい。オーバードライブとEQは順序を前後できる。

裏ワザ的使い方

シンセサイザーならではの音色を専用エディタで意のままに作り出すにはVCF、VCA、LFO、ADSRなどのアナログ・シンセサイザーに関する基礎知識を持ちつつ、マニュアルをそれなりに読破する必要があることは否めない。とはいえ比較的操作が容易なハーモナイザー/ディストーション・ブロックで作られる歪みの破壊力は強力だし、エフェクト・ブロックの充実度は目を見張るものがある。操作の難解なブロックを使わなくとも、強力な歪み系エフェクターとして活用することができるのだ。空間系エフェクトやフィルターだけを活用することもできるので、シンセサイザーに苦手意識のある人も専用エディタでの奥深い音作りにトライしてみてほしい。

プリセット・デモ音源集

ここではFuture Impact V3に内蔵されている音色のなかでも、特にベーシストにお薦めしたい音色を【①ベース向け音色】【②Deep Impactエミュレーション系音色】【③エフェクト/MIDI系音色】の3カテゴリーに分類し、音源に収録した。まだFuture Impactを体感したことのないプレイヤーも、実際の音色を聴くことでサウンドのイメージを膨らませてほしい。
(※1トラックにつき、約10秒ずつ9つの音色のデモ演奏が入っています)

①ベース系プリセット音色

【抜粋プリセット番号】U02/U03/U07/U08/U12/U36/U46/U58/U60

ここではFlexiコントロール機能を生かした音色を中心に選考。ピッキングの強弱で音色が変わったり、サステイン部分で音色が変化したりする様子を感じとってほしい。

②Deep Impactエミュレーション系音色

【抜粋プリセット番号】U21〜U29

Deep Impact SB1のサウンドを再現したプリセット。DeepI mpact特有の図太いアナログ・シンセ感がありつつも、Future Impactらしさ溢れるクリアな音質が特徴。

③エフェクト/MIDI系音色

【抜粋プリセット番号】U69 FX/U74 FX/U75 FX/U76 FX/U86 MIDI/U89 MIDI/U94 MIDI/U99 EWI/U00(オリジナル)

エフェクト系はシンセが鳴らないエフェクト中心のプリセット、逆にMIDI系はシンセだけが鳴っているプリセットを中心に選考。デモ音源ではエディットしていないが、実際に楽曲で使う場合にはエディットして微調整することをお薦めしたい。最後はシンセなしで作った、歪み系のオリジナル・プリセットだ。

製品に関するお問い合わせは、LEP INTERNATIONAL(☎︎0198-23-6600)まで。
https://www.lep-international.jp/

【お知らせ】
発売中のベース・マガジン2022年11月号では、Future Impact誕生までの道のりのほか、“Future Impact V3 Editor V3.6”のその他の機能、ユーザーである岡峰光舟(THE BACK HORN)と休日課長(ゲスの極み乙女/DADARAY)へのFuture Impactに関するインタビューを掲載しています。

また同号では、特集『ベーシストのエフェクト・システム2022』を84ページという大ヴォリュームで掲載! プロ・ベーシストのエフェクト・ボードや人気プリアンプのセッティングの紹介のほか、プリアンプ/歪み/コンプの注目モデルやエンヴェロプ・フィルター、マルチ・エフェクターの最新事情、エフェクト・ボードを組む際の注意点など、ベーシストにとってのエフェクターを大検証しています。

そのほか、23年ぶりとなる新譜大教典『BLOODIEST』を発布した聖飢魔Ⅱのゼノン石川和尚の特集、テクニカルなスラップ・フレーズの作り方にフォーカスした奏法特集『スラップ・フレーズ魔改造の手順』など、さまざまな記事を掲載しています。ぜひチェックしてみてください!