Total Impression

エフェクターの個性と自分の理想の音、
そのバランスをとって音作りをすることが大事。

 もともと僕は、ソウルとかファンクが好きで、その音が出したかったり、そういう曲を作りたいっていう思いが最初にあったんです。そこからトリッキーでエフェクティブな音も出したいと思い始めて。例えば、曲のベースはキーボードの人に弾いてもらって、オート・ワウを使って高音のほうでリフを弾いたりとか、そういう使い方ができるのは、往年のファンクっぽい音からシンセっぽい音まで出せるフィルター・ペダルの魅力ですよね。それこそ最近はサンダーキャットとかが出てきてから、フィルターの使い方っていうのは、さらに自由になってきたと思います。

 今回試奏で弾いたフレーズはオーセンティックなものだったけど、5機種すべてのモデルとも、どんな使い方もできるなって感じましたね。どれもキャラが立っているので、どういう音に自分がしたいのかっていうのをイメージして選んでほしいですね。例えばシンベっぽくて印象的なサウンドにしたかったら、OCTAVARIUMを使えば、ほかのベーシストとはひと味違う強力な武器になるんじゃないかな。YELLOW BUTTER AUTO QUACKも独特なエフェクトがかかるので、それを自分のなかで咀嚼して使いこなすことができれば、おもしろいサウンドになると思います。個人的には原音重視で、素直なエフェクトがかかるOTTAWAは好きでしたね。もちろんトリッキーなのも好きなんですけど、そのなかで原音を大事にしてくれているっていう製作者の意図を感じました。やっぱり、エフェクターをかけることによって、ベース本来の音の芯が削れてしまったら意味がないですからね。

 エフェクターそれぞれに備わっている個性やセンスを、自分の理想の音や自分のベースの個性とバランスをしっかりとって音作りをする。そして、曲のテンポ感とかグルーヴに合わせてワウの長さや、反応速度をしっかりと調整していくと、自分に合った理想の音が作れると思います。

 あと、全体的な傾向として、コンパクト化されてきたっていうのは、ペダル・ボードを組むうえで嬉しいポイントですね。操作感とかも全モデルかなりわかりやすくて、感覚的に調整できる点がどれもあったので、物理的にも機能的にも使いやすいモデルだったなって思います。そして個人的に、そのモデルが持つキャラっていうのは、しっかりデザインに反映されているんだなっていうのもひとつの発見でした。

Obayashi’s Bass

 今回大林が使用したベースは、エンドースメント契約を結んでいるアイバニーズのBTB1825。

 ボディはウォルナット(トップ&バック)とアッシュ(サイド)、ネックはパンガパンガ、パープルハート、メイプルによる9ピースのスルーネック。アギュラー製のピックアップを搭載し、コントロールは1ヴォリューム、バランサー、ミッド・フリケンシー付き3バンドEQといった構成になっている。

 “音抜けがいいのと、中音域がしっかりしている。ベースはジャンルごとに変えていますが、メインはこれ。たまにサーフ・ボードみたいって言われるんすよ(笑)”と語る。

【Profile】
●おおばやし・りょうぞう●1990年9月7日生まれ。2015年5月に自身がリーダーを務めるRYOZO BANDにてDJ MURO(King Of Diggin’)プロデュースによる7インチ作品をリリース。2017年には、ジャズ/ヒップ・ホップ・バンドのSANABAGUN.に加入。 2022年9月にはアルバム『BLOOM』を配信リリースした。バンド活動以外にもさまざまな分野でのスタジオ・セッション・ワーク、ジャズ・ファンク・プロジェクトにてロンドン、パリなどの海外演奏も経験し、ベーシストとして国内外問わず活躍の幅を広げている。ほかにもアパレル・ブランド“ISSEY MIYAKE”のタイアップ映像の音楽制作やさまざまなコンテンツへの楽曲提供を行なっている。2022年には音楽劇『スラムドッグ$ミリオネア』で劇伴演奏のバンド・マスターを務める。

◎Infomation
大林亮三:Twitter Instagram YouTube
SANABAGUN.:HP Twitter YouTube

2022年10月19日発売のベース・マガジン2022年11月号では、本記事の内容に加えて、動画内で大林が使用した各モデルのセッティング図のほか、エンヴェロープ・フィルターに関する基礎知識や歴史、用語解説も掲載しています。

また同号では、特集『ベーシストのエフェクト・システム2022』を84ページの大ヴォリュームでお届け! ほかにも新譜大教典『BLOODIEST』を発布した聖飢魔Ⅱのゼノン石川和尚の特集やスラップ・フレーズ魔改造の手順など、盛りだくさんの記事を掲載しています!