最新エンヴェロープ・フィルター
5モデルの実力を検証

ファンキーなベース・サウンドには欠かせないのが、“ミョ〜ン”や“パウ!”などという独特な音を出すエンヴェロープ・フィルター。往年のファンクはもちろん、昨今ではシンセ・ベース的なサウンドが多くのバンドで取り入れられており、歪みやオクターバーと組み合わせて使用することでシンセ・ベースのような役割を担うなど、その活用法は広がり見せている。

そこで今回は、直近5年間で新しく発売されたエンヴェロープ・フィルター5機種をピックアップ ! フィルター・サウンドの基礎的な知識のほか、フィルター・ペダルに造詣の深いSANABAGUN.の大林亮三の試奏とともに、フィルター・ペダルの最前線を体験してほしい ! 

なお、2022年10月19日発売のベース・マガジン2022年11月号では、本記事の内容に加えて、動画内で大林が使用した各モデルのセッティング図のほか、エンヴェロープ・フィルターに関する基礎知識や歴史、用語解説も掲載しているので、あわせてチェックしてほしい。

大林亮三(SANABAGUN.) × エンヴェロープ・フィルター 5モデル

最新エンヴェロープ・フィルター 5モデル

CARL MARTIN/OTTAWA

Electoro-Harmonix/Nano Q-Tron

FKT AUDIO/OCTAVARIUM

One Control/BUTTER YELLOW AUTO QUACK

SolidGoldFx/SUPA FUNK Envelope BI-FILTER


CARL MARTIN
OTTAWA

CARL MARTIN/OTTAWA

 1990年に設立され、良質なアナログ・エフェクターを開発し続けている、デンマークの老舗エフェクター・ブランドであるカール・マーティン。本機は同社のヴィンテージ・シリーズで人気を博したClassic Optical Enveropeをもとに、ハイパス/バンドパス/ローパス・フィルターの切り替えをミニ・スイッチに変更し、小型化した1台。コントロールは、トーン(ハイカット・フィルター)、レベル(全体の出力)、Q(帯域幅)に、新たに加わったアタックによってピッキングに対する感度の調整ができるようになり、ソフトで控えめなワウから、よりアグレッシブな高いピッチでのワウまで、幅広い効果を得られる。先行機の柔らかで素直な質感はそのままに、コンパクトながら音作りの選択肢が広がった1台だ。

【Specifications】
●コントロール:トーン、アタック、Q、レベル、モード切り替えトグル・スイッチ、オン/オフ・スイッチ●入出力端子:インプット、アウトプット●電源:DC9Vアダプター(別売り)●外形寸法:60(W)×115(D)×50(H)mm●重量:340g●価格:18,700円

製品に関するお問い合わせ:HOOK UP (https://hookup.co.jp/support/contact)◎https://hookup.co.jp/

Obayashi’s play & Impression

CARL MARTIN/OTTAWA

原音を大事にした素直なエフェクトで
ヴィンテージ・ライクなサウンドにピッタリです。

 音が作りやすくて、音ヤセもまったくない、硬派で安心の1台ですね。原音に対して素直にエフェクトをかけてくれるから、弾いているベース本来の音がしっかり残っていて、個人的にすごく好きです。飛び道具のようにも、曲を通してグルーヴィにも使えて、1960年、70年代のヴィンテージっぽい曲とか、ファンクやソウルっぽい曲に合ったサウンドが作れると思います。例えば、ラリー・グラハムとかのフレーズにピッタリだと感じましたね。操作性もかなり良くて、それぞれのツマミの働きがとてもわかりやすいので、直感的に音を作っていくことができます。BPMとかグルーヴに合わせてQのツマミを調整して、例えばスラップをするときには、アタックのツマミを2時くらいにして反応を速くしたり、ミディアム・テンポの曲を指で弾くときは10時にしてグルーヴィに弾いたりするのがおすすめですね。曲のグルーヴを作っていくうえで、かなり心強い1台だと思います。


ELECTRO-HARMONIX
Nano Q-Tron

Electro-Harmonix/Nano Q-Tron

 エフェクター・ブランドのパイオニアとして多くの名機を生み出し続けるエレクトロ・ハーモニックス。本機はミュートロンの創業・開発者とコラボレーションをして作り上げた名機Q-Tronを小型化したMicro Q-Tronのさらなる小型化を実現。ボードに組み込みやすいサイズになったことで、取り回しの良い1台に進化した。Q-Tron独自のサウンドを踏襲しているが、特筆すべきは、新たに追加されたヴォリューム・ツマミ。最終的な出力レベルを調整できるようになり、オン/オフ時にヴォリュームのバランスが取りやすくなった。そのほか、強弱に合わせ感度とレスポンスを調整するDRIVE、ピーク・バンドの幅とエフェクトの強弱を決定するQ、フィルターを通過させる周波数帯を切り替えるMODEツマミを搭載する。

【Specifications】
●コントロール:ヴォリューム、ドライブ、Q、モード(LP/BP/HP)、オン/オフ・スイッチ●入出力端子:インプット、アウトプット●電源:9V乾電池またはDC9Vアダプター(別売り)●外形寸法:70(W)×114(D)×53(H)mm●重量:290g●価格:26,400円

製品に関する問い合わせ:キョーリツコーポレーション ✉️support@kyoritsu-group.co.jp
https://kcmusic.jp/darkglass/

Obayshi’s play & Impression

ELECTRO-HARMONIX/Nano Q-Tron

名機Q-Tron独特のグルーヴが
コンパクトに、さらに使いやすくなりましたね。

 名機の音はそのままに、小さくなったのは嬉しいですね。エフェクトのかかりが良くて、Q-Tronならではのキャラクターがわかりやすく出てくる。しかも、使っていて自然とグルーヴ感を出してくれるので、弾いていて楽しい1台です。コンパクトになって足りなくなったところはひとつもなくて、むしろ、ヴォリュームが付いたことによって全体のレベル調整ができるので、Q-Tronサウンドがさらに使いやすくなりました。ツマミの操作自体もしやすいですし、音作りも感覚的にできるので、オール・ジャンルで使えると思いますよ。サウンドが特徴的なので、個人的にはソロで踏みたくなる。これひとつでバンドはもちろん、家でいろいろ遊べるおもしろさもあるし、InstagramやYouTubeにプレイ動画をあげる人にもおすすめだと思います。フィルター・サウンドのわかりやすさ、操作性などをとっても、これからエンヴェロープ・フィルターを使い始める1台目にはもってこいですね。


FKT AUDIO
OCTAVARIUM

FKT AUDIO/OCTAVARIUM

 イタリアのエフェクター開発者であるフランコ・トルティ氏が設立したFKT AUDIO。現地でハンドメイド製作されている本機は、右側がエンヴェロープ・フィルター、左側がオクターバーおよびシンセとなっており、それらの独立使用のほか同時使用も可能になっている。エンヴェロープ・フィルターは、ワウのツマミでエフェクトのレべルを調整、タッチでエフェクトの周波数を設定。オクターバーは、サブ・オクターヴ、シンセ、クリーンの配合比によって幅広いサウンドメイクが可能だ。それぞれのツマミも独立して働くため、楽曲に合った音色を作り込むことができる。また、中央には入出力の感度に応じて光るインジケーターを搭載しており、入力に対する反応を視覚的に確認ができる点もポイントだ。

【Specifications】
●コントロール:サブ・オクターヴ、シンセ、クリーン、ヴォリューム1、フリケンシー、タッチ、ヴォリューム2、ワウ、オクターバー・オン/オフ・スイッチ、エンヴェロープ・フィルター・オン/オフ・スイッチ●入出力端子:インプット、アウトプット●電源:DC9Vアダプター(別売り)●外形寸法:167(W)×107(D)×44(H)mm(突起部除く)●重量:760g●価格:オープンプライス ※市場実勢価格:69,300円前後

製品に関する問い合わせ:スリークエリート(☎︎03-6383-2968)
https://sleekelite.com/

Obayashi’s play & Impression

FKT AUDIO/OCTAVARIUM

このサウンドから新しい曲が生まれる
そんなインスピレーションが湧いてくる1台です。

 まず、ワウのほうはシンセ・ベースに近いサウンドがしますね。スペーシーな雰囲気もあるんですけど、エグくかかるわけではないです。一方で、オクターバーのほうは単体でも有用だと思いますし、クリーンを混ぜられるっていうのも、作れる音色の幅が広がっておもしろいですね。ただ、このふたつを組み合わせたときの破壊力がとにかくすごい。ほかにはないキャラの歪んだシンベ・サウンドが得られて、飛び道具としてかなり使えると思います。ファンク的な使い方はもちろん、僕みたいなヒップ・ホップ・バンドにもドンズバで欲しいサウンドですね。ツマミは多いですけど、それぞれが独立しているので、操作性もいいです。このペダルはどういう音を出してほしいかっていう方向性がはっきりしていて、ツマミの働きを理解すれば、どこまでも音作りを追求できる。最近の傾向でもあるシンセ・ベースのような音作りにも、この1台を駆使すれば間違いないと思います。


ONE CONTROL
BUTTER YELLOW AUTO QUACK

ONE CONTROL/BUTTER YELLOW AUTO QUACK

 スタイリッシュな見た目と、超小型の筐体に詰め込まれた本格派サウンドで、多くのミュージシャンから信頼を獲得しているOne ControlのBJFシリーズ。本機のツマミは、ディケイ(フィルターの動く速さの設定)、バイアス(フィルターがかかり始めるしきい値の設定)、センシティヴィティ(フィルターの感度の設定)の3つのみで、直感的なワウのサウンド・メイクが可能となっている。また、本体側面には、フィルターのかかる帯域を変化させることができるメロウ/ブライト切り替えスイッチを搭載しており、ツマミとの組み合わせによって、シンプルながらも幅の広い音作りができる。さらに、このサイズで9Vのバッテリー駆動ができるのも、ボードに組み込みやすいひとつのポイントとなっている。

【Specifications】
●コントロール:ディケイ、バイアス、センシティヴィティ、オン/オフ・スイッチ、メロウ/ブライト切り替えスイッチ●入出力端子:インプット、アウトプット●電源:DC9Vアダプター(別売り)または9V乾電池●外形寸法:47(W)×100(D)×48(H)mm●重量:160g●価格:15,180円

製品に関する問い合わせ:LEP インターナショナル(✉️ info@lep-international.jp)
https://www.lep-international.jp/

Obayashi’s play & Impression

ONE CONTROL/BUTTER YELLOW AUTO QUACK

スタイリッシュでシンプルな構成ながら
新しいフィルター・サウンドを探求できるモデル。

 最近まわりでOne Controlのペダルを使ってる人が多いので気になっていたんですよ。コンパクトなところも魅力的なんですが、エフェクトのかかり方に関しては、今までの既存のペダルとは確実に違って、新しさを感じましたね。ツマミが3つとシンプルなんですが、その分ツマミの効きが良く、エフェクトのかかり方がユニークなので、音作りの幅は広いです。ワウのサウンド自体もとてもいい音ですし、ベースはもちろんのこと、ほかの楽器で使用してもいい味が出せると思います。そのうえ、コンパクトでエフェクター・ボードに組み込みやすいので、使いこなせばかなりおいしいエフェクターですね。個人的には、メロウ・モードで、ツマミは9時、10時あたりに設定して、和音を使ってローファイなサウンドを出すのもおすすめですね。ツマミの設定と楽器の組み合わせによっては新しいサウンドを探求できる、そんな可能性を感じさせるモデルだと思います。


SOLIDGOLDFX
SUPA FUNK Envelope BI-FILTER

SOLIDGOLDFX/SUPA FUNK Enverope BI-FILTER

 ヴィンテージ・ペダルのカスタムやリペアの経験に裏づけられた技術をもとに、エフェクター・ブランドとしての地位を築き上げたSolidGoldFX。同社のエンヴェロープ・フィルターの集大成とも呼ばれる本機は、先行機のFunkzillaとFunk-liteをブラッシュアップさせたモデルだ。デプス(エフェクトの幅とピーク)、フリケンシー(周波数帯)、センシティヴィティ(減衰時間と感度)によって、ローファイから半止めのワウ・サウンドまで幅広いフィルター・サウンドを作り出す。カラー・ノブによって、ふたつのローパス・フィルターをブレンドできる特徴に加え、中央のスイッチでスウィープの方向が切り替えられる。伝統的なファンク・サウンドと遊び心をコンパクトな筐体に凝縮した1台だ。

【Specifications】
●コントロール:デプス、フリケンシー、センシティヴィティ、カラー、ディレクション切り替えスイッチ、アウトプット、オン/オフ・スイッチ、●入出力端子:インプット、アウト・プット●電源:DC9Vアダプター(別売り)●外形寸法:64(W)×122(D)×62(H)mm●重量:281g●価格:29,700円

製品に関する問い合わせ:オカダインターナショナル(☎︎03-3703-3221)
https://www.okada-web.com/

Obayashi‘s play & Impression

SOLIDGOLDFX/SUPA FUNK Envelope BI-FILTER

ファンクの系譜を継承しつつ
新たなサウンドメイクをもたらしてくれるモデル。

 ちょうどいいキャラのエフェクトをかけてくれる、まさにファンキーなプレイにピッタリの1台です。見た目にも表われていますが、ヴィンテージ・ライクな暖かいサウンドで、デプスをガッツリ上げたときのエグみも、1970年、80年代のソウル・ファンクの方向性だとはっきりとわかります。そういう意味では、ヴィンテージ・ベースとの相性も抜群だと思いますね。でも、ファンクの歴史に則ったサウンドを作れるだけではなくて、カラーのツマミを時計回りに回すことで、まるでフェイザーをかけたような個性的な音になったり、センシティヴィティを時計回りに回して、振り切った独特の音が作れたりと、新しいアイディアを試せるおもしろさ、遊びの幅の広さも兼ね備えている。ツマミは多いですが、操作性は抜群に良くて、その分細かな音作りができる点もかなり魅力的ですね。僕をはじめ、往年のファンク/ソウル好きにはたまらないペダルだと思います。

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