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温故知新 Warwick〜feat.穴見真吾(緑黄色社会)

  • Photo:Takashi Yashima

1982年の創立以来、その独特かつ汎用性のあるサウンドと確かな楽器作りで多くのユーザーを抱えてきた、ドイツ発の世界的ベース・ブランド、ワーウィック。今回は、さまざまなジャンルのベーシストが愛用していることから、人によってさまざまな印象を持っているであろう同社の代表モデルを、試奏者に緑黄色社会の穴見真吾を迎えて改めてチェック。その揺るぎない個性を再検証したい。

“The Sound Of Wood”を掲げた独創的サウンドと革新の歴史

 ワーウィックは1982年に創業されたドイツの大手ベース・ブランド。創業者のハンス・ピーター・ウィルファーは、1946年設立の大手楽器メーカー・フラマス(ユーザーにはジョン・レノンやビル・ワイマンがいた)の創業家に生まれ、幼い頃からさまざまな楽器に触れるとともに、楽器製作のノウハウを身につけていった。創業当時はトラディショナルなギターやベースのコピー・モデルを製作していたが、1983年のムジーク・メッセに出品したヘッドレス・ベースが好評を博し、ベース専門へと舵を切る。1984年にはストリーマー・ステージI、1985年にはサム・ベースを発表し、多くのベーシストの注目を集めることになった。以降、ジャック・ブルースやジョン・エントウィッスル、T.Mスティーヴンスといったレジェンドたちが愛用。1990年代後半にはリンプ・ビズキットやフィッシュボーン、311などラウドロックやミクスチャー系バンドに愛用者を多く抱えたほか、ジャミロクワイのスチュワート・ゼンダーが使用するなど、ブランドの存在感を高めていく。日本でもDREAMS COME TRUEの中村正人、UVERworldの信人、ONE OK ROCKのRyota、オレンジレンジのYOH、櫻井哲夫、TOKIEといったさまざまなジャンルのベーシストが手に取ってきた。
 ワーウィック・ベースの特徴は、まずは独特のカーブを描いた小型のボディ・シェイプや、チューニングしやすいようにヘッドに対して斜めに取り付けられたペグなど、人間工学に基づいたデザインが挙げられる。また、現在ではさまざまなメーカーで使用されているウェンジやブビンガ、オヴァンコールと言ったエキゾチック・ウッドを先駆的に採り入れたメーカーでもあり、使用する材は丸太状態の原木で買いつけるこだわりを持つなど、“The Sound Of Wood”を理念に掲げた楽器製作を行なっている。また、ナットやブリッジ、ピックアップなどの各種パーツにも独自のアイディアを注入して自社で製作しており、職人による手作りとマシンを使用したほうが良い部分を見極め、最新のシステムを装備した工場を持つことで、その品質は揺るぎないものとなっている。

①巨大なブビンガの原木。②豊富な木材ストックを持ち、カスタムショップ専用の貯蔵庫だけでもこの大きさ。③人の手よりも正確な仕上げやクオリティが求められる部分には最新のオートメーションを導入。④⑤仕上げや繊細なアートワークでは人の手が活用される。

現行シリーズ

現在、ワーウィック・ブランドには3つのシリーズがラインナップしている。ここで改めて整理しておこう。

 ロックベースは、エントリー・ユーザー向けの廉価版シリーズ。ピックアップやプリアンプ、ブリッジは本国ドイツ製のモデルと同等のものを使用しつつ、中国にて生産されている。スルーネックのストリーマーを始め、4弦モデルはもちろん5弦モデルも各種ラインナップするが、残念ながらサムはラインナップされていない。

 本国ドイツの工場にてマスター・ビルダーの監修のもと製作され、“チーム・ビルト”と呼ばれている、いわゆるレギュラー・ラインナップがプロ・シリーズ。コルベット、ストリーマー、サムといった代表機種は4弦、5弦、6弦が用意されている。ボルトオン・モデルが中心だが、ストリーマーにはスルーネックのモデルもラインナップする。

 ワーウィックが誇る最高級の木材を使用して最高峰の技術を持つマスター・ビルダーが製作を手がけるカスタムショップ。ブラス製ナットや充電式プリアンプの採用など独自のスペックを持つほか、楽器店からのオーダーも受け付けており、独創的な仕様のモデルも製作される。ラインナップしているベーシック・モデルの数もシリーズ最多。

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