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Meris for Bass – Merisで彩るベース・サウンド

  • Equipments Explanation:Makoto Kawabe
  • Photo:Takashi Hoshino/Takashi Yashima
  • Interpretation:Tommy Morley

TOTAL IMPRESSION

試奏を終えた井上と村上のふたりに、それぞれ Meris を体感した感想を語ってもらった。

ベーシストによる新たなアプローチが生まれる。(井上)

 どれもかなり攻めていて挑戦的ですね。Enzoはベース・シンセにとどまらずディレイも付いてるし、Hedraはピッチ・シフターだけじゃなくてデチューン機能が付いていたり、Ottobit Jr.もサンプルをとってシーケンスを組んだり……もうベーシストの枠にとどまらなさすぎる(笑)。大きなデジタル機器でこういう機能が付いているのはあっても、コンパクト・エフェクターではあまり見たことがないので、これにいろいろな機能を付けているっていうところに“これを使って何かおもしろいことをやれよ”っていう意図を感じましたね(笑)。
 とはいえ、どれも単純にベース・シンセやオクターバーとして、Ottobit Jr.はエクスプレッション・ペダルとつないでフィルターだけの機能を使うこともできて、フィルターのかかり具合もベーシストが好きな感じの良いかかり具合ですね。そういうひとつひとつの機能単体で見ると使いやすいと思います。
 全部の機能を使おうとするといろいろ試行錯誤する必要があるけど、例えば曲作りでベース以外の音が欲しいなと思ったときはベースでコードを弾いてシンセっぽく鳴らすとかもできるので良いですね。使いやすさもある反面、使えば使うほど無限の音作りができるので視野が広がってベーシストによる新たなアプローチが生まれると思います。弾いているのはベースだけど、出る音がベースじゃないっていう部分はどんどんアイディアが広がっていくポイントなんじゃないかな。
 あとはもう、今回のコンパクト・エフェクターの機能を全部まとめたモジュラー・シンセを作ったらどうかなと(笑)。プラグインみたいな発想でシーケンスも組めてピッチも変えられて、それだけで曲作りできるようなものとか。今はパソコンで作曲する人も多いので、好きなエフェクターを組み合わせた音作りは大体の人がやってると思いますけど、それをアナログでやる楽しさもありますよね。

開発者の世界観が機材に落とし込まれている。(村上)

 今回試奏したEnzoもOttobit Jr.も開発者の方々が個々に強い世界観を持っていて、その世界観が機材に落とし込まれることで、エフェクター単体で“作品”になっていると感じました。今回はわかりやすい代表的な機能と効果をメインに試奏しましたが、時間があればもう少し弄って、もっと深いところの機能も使いこなしてみたいです。
 EnzoもOttobit Jr.もいわゆる定番とされる機種をベースにしたエフェクターではなくて、開発者自身がアーティストとして、自らの世界観を表現するために作り出したエフェクターというような印象があって、僕らミュージシャンが彼らのエフェクターを使うと、僕らが持っているまた別の世界観とアクティヴな化学反応を起こして、新しい音楽やサウンドを生み出すことができるんじゃないかと思います。Merisにはほかにもピッチ・シフターやディレイ、リヴァーブもラインナップされているとのことなので、それらのモデルに彼らの世界観がどのように反映されているのか、ぜひ触って確かめてみたいと思いました。
 Merisに今後期待することですか? 現在はコンパクト・エフェクター中心のラインナップとのことですが、アナログ回路にもデジタル回路にも精通しているメーカーなので、その技術力を生かしたヘッド・アンプがリリースされたらおもしろいと思いました。今、僕は真空管アンプを使っていて、あの真空管の暖かみのある音や時代感をデジタルでどう表現して出せるかっていうところに関心があるので、Merisがそこを追求したらどうなるのかはとても興味深いです。EnzoにしてもOttobit Jr.にしても、基本的なサウンドの良さはもちろん、モチーフとした世界観の再現性や、演奏の追従性に関してもかなり良かったので、その点をヘッド・アンプの製作に応用させていったらすごいものができる気がします。ぜひ期待したいですね。

【Profile】
井上幹(いのうえ・かん)●1990年9月15日生まれ。12歳からギターを手にし、高校時代にベースを弾き始める。ジャズを演奏する両親の影響でジャズに目覚め、大学時代にさまざまなセッションを渡り歩く。その先で荒田洸(d)に出会い、WONKを結成した。バンドではベースのほか、作曲・編曲、ミキシング・エンジニアなども担当する。IT企業に会社員としても所属しており、ゲームのサウンド・デザインなどを行なう。
http://www.wonk.tokyo/

村上啓太(むらかみ・けいた)●2007年に結成された7人組ファンク・バンド、在日ファンクのベーシスト。バンドは2010年に1stアルバム『在日ファンク』でデビューし、2014年に3rdアルバム『笑うな』でメジャー・デビューを果たす。ジェームス・ブラウンからの流れを汲むファンクを日本に在りながら再認識するサウンドで幅広い層から人気を獲得する。2020年9月16日には1stアルバム『在日ファンク』のアナログ盤をリリースした。
http://zainichifunk.com/

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本記事の内容は1月19日発売のベース・マガジン2021年2月号にも掲載されています。