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    Meris for Bass – Merisで彩るベース・サウンド

    • Equipments Explanation:Makoto Kawabe
    • Photo:Takashi Hoshino/Takashi Yashima
    • Interpretation:Tommy Morley

    Sound Check by
    井上幹(WONK)& 村上啓太(在日ファンク)

    ここからは個性豊かなMerisのペダル・ラインナップより、ベーシストに特にオススメしたい3機種を紹介していこう。試奏を担当するのは、ジャズやソウルなどをルーツとした世界観で注目を集める“エクスペリメンタル・ソウル・バンド”、WONKのベーシスト井上幹と、JBスタイルを踏襲した音楽性で幅広い層から人気を博すファンク・バンド、在日ファンクのベーシスト村上啓太だ。多彩なベース・プレイが魅力のふたりに、Merisはどのように映ったのだろうか。

    Enzo

    不可能を可能にする“複合型”シンセ・ペダル

    【PITCH】±2オクターヴまでピッチ変化が可能。Altモードではピッチへ音程をなめらかにつなげる効果を持つ。
    【FILTER】カットオフ周波数の選択が可能で、Altモードでは6種のフィルター・タイプが選択可能だ。
    【MIX】ドライとウェットのバランス調整部分。Altモードではディレイ音のレベル調整が可能だ。
    【SUSTAIN】サステインのコントロール(ドライ・モードでは入力音のコンプレッション量)部。Altモードではリング・モジュレーションの周波数を変更できる。
    【FILTER ENV】エンヴェロープ・トリガーのアタックとディケイ時間が設定可能。Altモードではフィルターのレゾナンスが調整できる。
    【MODULATION】オシレーターをデチューンさせ、コーラス効果を与える。Altモードではディレイのフィードバック量が調整可能。
    【ALT FUNCTION】ボタン押しつづける間、Alt モードが有効となる。
    【TAP】ディレイとアルペジエーター・モード時のタップ・テンポが調節可能。Altモードではフィルター・エンべロープをエンべロープ・フォロワーに切り替えできる。
    【SELECT SYNTH MODE】Poly/Mono/Arp/Dryの計4種類のシンセ・モードが選択できる。
    【BYPASS】オンでバイパスとなる。Altモードはシンセサイザーの波形選択が可能。

    (※Altモード=より詳細な設定が可能な裏モード)

     “マルチ・ボイス・シンセサイザー・ペダル”と銘打たれたEnzoは、重圧なデュアル・オシレーター・シンセのサウンドが特徴のシンセサイザーを根幹に、さまざまなエフェクト機能を搭載する複合型エフェクターだ。
     シンセ・セクションはポリフォニック、モノフォニック、アルペジエーター、ドライの4モードがあり、単音、和音弾きはもちろん、ピッチ・ベンドにも正確に追従するなど、トラッキング性能がとても優秀。
     さらに6タイプから選択可能なフィルター・セクション、アナログ・シンセの名機CS-80にインスパイアされたリング・モジュレーターと2タップ・ディレイ、タップ・テンポ可能なアルペジエーター、キーやスケールにも対応するピッチ・シフト機能など、単体のエフェクターを並べるだけでは到底得られない複雑なサウンドと斬新なパフォーマンスを可能にしてくれる。(Merisのコンパクト・エフェクター全機種共通だが)入出力ともにステレオ/モノ対応で、ギターやベースに限らずキーボードや電子楽器などあらゆる楽器を入力音源にでき、バッファード/トゥルー・バイパスが選択可能なのも嬉しい。

    バック・パネルにはTRS端子対応のインプット、ステレオ・アウト、MIDI入出力を備えたエクスプレッション・ペダル端子を装備。ステレオ・モード、LINE/INSTレベル変更の際にはLEDが点灯するため、モードの把握も容易だ。
    Merisのペダルの筐体はフット・スイッチ方向に向けて傾斜が付いているため、足下でのスイッチ切り替えもスムーズに行なうことができる。幅108mm×奥行114mmと、多機能でありつつもコンパクトなデザインな点もグッドだ。

    【Specifications】
    ●コントロール:ピッチ、フィルター、ミックス、サステイン、フィルター・エンヴェロープ、モジュレーション、オルト・ファンクション・スイッチ、モード・セレクト・スイッチ、タップ・スイッチ、バイパス・スイッチ●入出力端子:インプット、レフト・アウト、ライト・アウト、エクスプレッション/MIDIイン●電源:9V DCアダプター(付属)●外形寸法:108(W)×114(D)×51(H)mm ●重量:414g●オープンプライス(市場実勢価格34,500円前後)

    【Inoue’s Impression】

    どのフィルターを選んでも“これだよな!”ってなります。

     Enzoは音の種類がすごく多いわけではないけど、“エフェクターとして使うならこのフィルターだよね”っていう欲しい音を押さえていて、どのフィルターを選んでも“これだよな!”ってなりますね。トラッキングもすごく良くて、原音と混ぜて使えるミックス機能もありますが、原音ナシでシンセの音を最大にしても使えるくらいのトラッキング精度があると思います。それでもちょっとしたトラッキングが気になる場合はミックスで原音重視にすれば本当にわからないです。
     パラメーターはツマミだけで12種類も振られていて、ここの操作性はかなり上級者向けの作りだなと思います。ただその分、自由度が高く好きにいじれるのでアナログ・シンセ好きにはすごく良いですね。ペダルのシンセだと動かせるパラメーターが少なかったり、わざわざパソコンに戻って音作りをしてまた送らなきゃいけなかったりするんですが、その点Enzoはツマミだけで何とかしようとしていて、このツマミに命をかけている感じはマニア心がくすぐられます(笑)。
     ポリ・モードのシンセも使いどころがありそうですね。例えば曲で“ここはベースはいらないからもっとコードを厚くしよう”という部分が出てきたりもするんですが、WONKはキーボードがひとりなのでシンセを出すには限界があるんです。そこにEnzoがあるとベーシストが“シンセ出せます!”ってなるので周りから“おぉ〜!”ってなるかなと(笑)。ベーシストが持っていると、おもしろいことが起きそうですね。

    【Murakami’s Impression】

    とても表情が豊かな機材だと思います。

     かなり印象的な音色ですね。僕は在日ファンク以外にもいくつかのバンドに参加してベースを演奏しているのですが、この音色ありきで音作りやベース・ラインを構築していくこともできるなと思いました。そもそもベースだけではなく、あらゆる楽器に対応することを想定して作られたエフェクターなので、無限の可能性が出てきますね。エクスプレッション・ペダルを併用するとよりおもしろいことができそうですし、トラッキングもかなりの精度の高さを感じます。そこもよく設計されていて、自分の好みで細かく調整できるのも良いですね。
     深いところまでいじろうとするとちょっと時間が必要ですが、表の標準的な機能だけでもいろいろあって充分に使えると思いました。僕はピッキングが強いほうなのですが、アタックに対するフィルターのかかり具合や音色も良いですね。例えばミディアム・テンポのファンクで、わりとどっしりしたビートの上でこのフィルターをかけると気持ちいいんじゃないかな。音が伸びたあとの動きの味わいもおもしろいので、サステイン感を自分で設定して長く伸ばすような使い方をするのも良さそうです。
     “この機材の音色はこれひとつ!”っていう特徴のエフェクターもそれはそれでわかりやすい、使いやすいというメリットがありますけど、Enzoは今回触っただけでは使いきれていない機能もあって、まだわからない様相がたくさんありそうです。そういう意味でとても表情が豊かな機材だと思います。

    Hedra

    無限の可能性を秘めた、“近未来型”ピッチ・シフター

     Hedraの中核となるのは3つの独立したピッチ・シフターだが、内部接続の切り替えが可能なディレイを組み合わせることで、従来の同種エフェクターでは到達できない複雑な機能とサウンドを可能にしている。
     最もシンプルな使い方は3つのピッチ・シフターのみを極めて追従性の良いオクターヴ・ペダル(オクターヴ関係のみに設定)やハーモナイザー(キーやスケールに対応した音程に設定)のように活用することだが、ディレイ成分のフィードバック先や量を選べるのが本機の醍醐味。単体で活用しても充分な性能を有しているディレイの設定次第で、ピッチ・シフターの従来イメージにとらわれない独自性の高いスペイシーなサウンドや、シンセ・ベースのようなサウンドも実現可能だ。また、タップ・テンポ機能でリアルタイムにディレイ・タイムが変更可能で、市販のエクスプレッション・ペダルを使えばワーミー的な効果やフィードバック量も制御できるので、ライヴ・パフォーマンスでも威力を発揮するだろう。

    【Specifications】
    ●コントロール:キー、マイクロ・チューン、ミックス、ピッチ1、ピッチ2、ピッチ3、オルト・ファンクション・スイッチ、モード・セレクト・スイッチ、タップ・スイッチ、バイパス・スイッチ●入出力端子:インプット、レフト・アウト、ライト・アウト、エクスプレッション/MIDIイン●電源:9V DCアダプター(付属)●外形寸法:108(W)×114(D)×51(H)mm ●重量:414g●オープンプライス(市場実勢価格34,500円前後)

    【Inoue’s Impression】

    インパクトのあるサウンドが作れそうです。

     Hedraはトラッキングがとても良いので、特にスライドしたときが気持ちよくて、ついついやっちゃいますね。シンセの音色は、例えばオクターバーとかは音が丸っこくなる印象なのですがHedraのオクターヴ下はそれよりももう少し抜けが良く、ベースの原音に対してちょっと明るめの音になる印象です。
     3つのピッチ・シフターを搭載していますが、ベースは基本的に単音楽器なので例えば三度を足した場合にアンサンブルのなかでどうなるか気にしなきゃいけないですよね。でもキーを設定できる機能があるので、転調などしない限りはアンサンブルを邪魔せずに弾けます。ソロのときは和音を重ねて弾くとリッチな音でベースとは思えないソロをかませるので、ここぞというときに良さそう。曲作りでこれを使ってベースでシンセのフレーズやコード進行などを作るのもおもしろそうです。特徴的な音色なので特にイントロとかはインパクトのあるものが作れそうですね。

    Ottobit Jr.

    ゲーム音楽から誕生した、“変態型”エフェクター

     DSPエンジニアのアンジェロ・マゾッコが当時ハマっていたゲーム『Revenge of Shinobi(ザ・スーパー忍)』の音楽とそのサウンドの感覚を注入したというOttobit Jr.。本機はビット・クラッシャーを核とするエフェクターだが、クラシックなゲーム機に搭載されたFM音源特有の質感を再現するだけでなく、波形編集によって部分的にリピートしたような、本機独自のスタッター機能やシーケンサーによって、生で演奏するフレーズやリズムとは無関係な破壊的サウンドまでも作り出すことができるMeris随一の変態系エフェクターだ。
     デジタルな歪みを意図的に作り出すビット・クラッシャーを歪み系エフェクターとして活用することもできるが、設定によっては音量や音程感を失うのが本機のアバンギャルドな魅力でもある。タップ・テンポに同期するシーケンサーはピッチ、フィルター、サンプル・レートを制御できるので、アイディア次第でインパクト抜群の音楽的な飛び道具的サウンドを作り出せるだろう。

    【Specifications】
    ●コントロール:サンプル・レート、フィルター、ビット、スタッター、シーケンサー、シーケンサー・マルチ、オルト・ファンクション・スイッチ、モード・セレクト・スイッチ、タップ・スイッチ、バイパス・スイッチ●入出力端子:インプット、レフト・アウト、ライト・アウト、エクスプレッション/MIDIイン●電源:9V DCアダプター(付属)●外形寸法:108(W)×114(D)×51(H)mm ●重量:414g●オープンプライス(市場実勢価格34,500円前後)

    【Murakami’s Impression】

    ミュージシャン魂がくすぐられました。

     これもいろいろな機能が備わってますが、僕としてはシンプルにビット・クラッシャー単体をかけた音色がかなりツボでした。80年代的な時代観に合いそうな音です。歪みって普通は飽和させて歪ませるけど、これは減衰させる歪みで、もしかしたら僕はこっちのほうが好きかもしれない(笑)。モジュレーションの細かい設定もできるので、好みの音を探していくのもおもしろいと思います。やり込むと本当に多様な音作りができるので、これを使って何か斬新なことを企てたいなというミュージシャン魂がくすぐられましたね。
     楽曲制作や演奏で使うこともあるかもしれませんが、例えばSEや効果音的な音楽を作るとか、演劇やダンスなど他分野のライヴ・パフォーマンスの表現者とコラボレートするとか、その際にこれを使って音作りや演奏表現をするとおもしろいことができそうです。インスピレーションを掻き立てられる音と機能が備わったエフェクターだと思いました。

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