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新世代を代表するベース・アイコンとして、ソロ活動のほかYOASOBIなどのサポート・ワークなどで活躍するやまもとひかる。彼女が“バンドマン”として手腕を振るうのが、2023年8月に結成された4人組ロック・バンド“Aooo”だ。10月16日にドロップされた初の流通音源作品となる1stフル・アルバム『Aooo』には、メンバー各々の個性が凝縮された、バンドの現在地を決定付ける充実の全12曲が収録。各メンバーが作詞・作曲を務め、バラエティに富んだ圧巻の仕上がりとなっている。プロ・キャリアをスタートして以降、初めて“バンドマン=やまもとひかる”として制作に向き合った今作に、やまもとはどんな思い/ベース・ラインを込めたのか。バンドマンとして大いなる未来を見据えた彼女に、制作を振り返ってもらった。なお現在発売中のベース・マガジン11月号(Autumn)では、『Aooo』レコーディング時の裏側などを語った、BM Webとは別内容のインタビューのほか、譜面を用いたやまもと本人によるベース・プレイ解説などを掲載! そちらもあわせてチェックしていただきたい。
“誰々っぽい”が集まることでAoooらしい音像になっているなって。
━━まずAooo結成時について振り返りたいのですが、アーティスト・ブック(『BASS MAGAZINE SPECIAL FEATURE SERIES やまもとひかる』)によると、2023年6月にツミキ(d)さんとひかるさんがバンドをやろうと意気投合し、8月にはAoooが始動したんですよね?
そうですね。最初の話をしたのは2023年の6月末で、その日のうちにツミキさんが、“すりぃ(g)はギターも上手いよ”と言ってました。Aoooはみんな歌えますし、一旦は(誰かがヴォーカルを兼任して)3ピースでやろうかって。
━━それから石野理子(vo)さんに入ってもらい、3人はプレイヤーに徹することにしたとのことですが、その意図とは?
それぞれ個人の活動では自分が歌っているんですけど、もともと楽器に特化した人たちなんですよ。ほかの活動と並行するからこそ、逆にプレイに専念する場にしたほうが棲み分けになるし、そういうバンドをやったら楽しいかもって思ったんです。
━━初めての音合わせはどうでしたか?
初ライヴ(2023年9月16日に東京・Shibuya eggmanにて実施)のちょうど1ヵ月くらい前だった記憶があるんですけど、“バンドだ~!懐かしい!楽しい!”という感覚でした(笑)。サポートのときみたいにイヤモニをする現場だと、アンプを鳴らさないことも多いから、街のリハーサル・スタジオでアンプで音を出して“せーの”でやるのが久しぶりで、すごく楽しかったです。
━━そこから約1年間ライヴ活動を続けて、1stアルバム『Aooo』が完成するわけですね。本作は四者四様の個性が全力でぶつかり合っていて、それでもお互いの良さを打ち消し合わずに綺麗に混ざり合っていますよね。
そうなんですよ! はじめはどうなるだろうと思ったけど、アルバムを作るにあたってそこは苦労しないで制作できました。
━━歌に対してプレイのアプローチを工夫するなど、そういったことも特になく?
はい。私がこのバンドで一番いいなって思うのが、石野理子の歌で。石野の歌は優しく歌っても激しく歌っても、何をしても強くて。あの歌声は“こうだと合わないな”というのがないから、自分も好きに弾けたし、そうやってサウンドにバンドっぽさが出たうえで、石野の歌が曲を完成させてくれるんですよね。
━━曲調はバラエティに富みつつも、アルバムを通して聴くと一本筋が通っているように感じました。制作にあたって、作品のテーマなど何か決めていたことはありますか?
それが、なくて(笑)。デモだけ並べたらそれぞれのカラーがあって、意外と一本筋じゃない気がするんです。ギターもドラムも歌も、協調性はあるんだけど“誰々っぽい”という個性が強くて、それでもみんなで“せーの”で録ったら結局ひとつになる。そういう風に“誰々っぽい”が集まることでAoooらしい音像になっているなって。筋が通ってると思っていただけたのであれば、そこが理由かなと思います。
━━曲調が多彩なのは、メンバー全員が作詞作曲に携われることが大きいと思います。それぞれの曲に対して、どんな印象を持っていますか?
すりぃさんは特に個人名義のほうでキャッチーな曲を作るイメージがあって、バンドでもそれが発揮されているんですよね。「サラダボウル」みたいに、ライヴで聴いてみんなが一番に覚えてるだろうなっていう曲を作る人で。シンプルなコード進行で、メロディも別に突飛なわけじゃないけど、とても良い曲を作るからすごいなって思います。
━━ひかるさんは、バンドを始める前からツミキさんのファンなんですよね。
そうなんです。もっと言うと、ツミキさんが昔やっていたバンドも好きで、そのイズムはツミキさんが作る楽曲全体から感じます。でも、NOMELON NOLEMONのときはDTMを駆使して音で遊んでいる感じがするし、Aoooのときは使う楽器が生だからという以上に音像もしっかりバンドっぽくて、楽器のかけ合いやドラムのフレーズなんかで遊び心を入れてくれます。
━━それぞれキャラクターがしっかり分かれている、ということですね。
あと「イエロートイ」のような変化球の曲では、ボカロ曲っぽく聴こえるような要素がありつつ、でも“ボカロの曲をバンドがやってみた”になっていないんですよね。ツミキさんみたいな曲は自分には作れないなって思います。
━━石野さんは今作で主に作詞を手がけていて、ひかるさん作曲/石野さん作詞という組み合わせの曲が多いですね。
石野は、言葉が綺麗なんですよ。映画をよく観るからか、難しい言葉をたくさん知ってるし。最終的に変わったんですけど、最初に送られてきた歌詞に読めなかった漢字もあったりして(笑)。「アパシー」で初めて歌詞を書いたはずなのに、自分の気持ちが前に出過ぎるわけでもなく、日本語の美しさが出ているんです。でも、別に綺麗にまとめようとしているわけでもないというか。それに、書くのが早い。逆に私も曲をつけるのが早いと言ってもらうんですけど、それは石野の言葉があって、“石野にこうやって歌ってほしい”というのが浮かびやすいからなんです。そういう言葉を紡いでくれるのが好きなところですね。
━━ソロ活動時の楽曲よりも早くできたりしますか?
全然早いと思います。自然に“この言葉はこういう感じで歌ってほしい”というのが浮かぶので。そういう意味ではわかりやすい歌詞を書いてくれるなって思います。
━━今作の前にライヴ会場限定で販売していたCD『Demooo』には、アルバムにも入っている「アパシー」「イエロートイ」「リピート」「青い煙」のデモ音源が収録されています。これら4曲は、アルバムではどういった部分が変わりましたか?
ちゃんとバンドの音源になったなと感じています。「イエロートイ」はグロッケンの音色が重なってるところを(実際の)グロッケンで録ったりして打ち込みの音は1個もなくなったし、ハモリをもダブルで録ってなかったりして、よりライヴっぽい印象になりました。あと、『Demooo』ではギターが何本か入っていた曲は1本で完結するようにしたので、トラック数が減ってますね。「リピート」は石野がギター弾いているので2本入ってるんですけど、あとの3曲は基本的にギター1本で成立するようになってます。
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