プランのご案内
  • NOTES

    UP

    【第91回】アドリブ入門② アドリブの基礎・語彙の増やし方 石村順の低音よろず相談所 〜Jun’s Bass Clinic〜

    • Text:Jun Ishimura

    前回も言ったように、アドリブ演奏とは知っているフレーズをリアルタイムでどう組み合わせて使うか、です。知っているフレーズ(ボキャブラリー)を増やすために、ぜひ、どんどん耳コピしてください。

    耳コピする

    例えばこんなフレーズを耳コピしたとします。

    分析する

    耳コピして弾けるようになったのはいいけど、そこで終わりだと応用が効かないので、分析しましょう。まず度数を書き込みます。

    リズムを無視して低いほうから並べると下記のようになります。基本的にはCマイナー・ペンタトニックで、経過音として△7(メジャー・セブンス、長7度)を使っている感じですね。ということは、コードはCmとかCm7かな、と推測します。実際の耳コピでは、コード楽器の音も聴き取って分析するとなお良いです。

    本当ならキーも推測しますが、このフレーズだけでは判断できません。Cマイナーのトニック(Im)かもしれないし、B♭メジャーの2度(IIm)かもしれないし、Gメジャーのサブドミナント・マイナー(IVm)かもしれない。曲全体を聴いて推測します。

    バリエーションを作る

    ある程度分析できたら、次はバリエーション作りです。今回は、元のフレーズの“リズムの形”と“使う音”は同じまま、音の順番を組み替える、という方法でバリエーションを作ります。リズムの形はこうなっています。

    ポイントがいくつかあります。

    ①音は全部使わなくてもOK。
    ②ゴーストはそのままでも実音にしてもOK。
    ③オクターヴ上・下の音を使ってもOK。
    ④違うポジションで弾いてもOK

    ルールが面倒かもしれませんが、制約のなかでクリエイティブに工夫する、といういい訓練になります。

    いくつか例を出してみます。

    めちゃくちゃカッコいいわけじゃないかもしれないけど、そこそこ使えそうなフレーズが4個できました。こういう風に、ひとつ耳コピするたびに何個も何個もバリエーションを作って覚えれば、応用できるボキャブラリーが増えます。そして、演奏中にこれらのフレーズをリアルタイムで組み合わせられれば立派なアドリブ演奏です。

    大事なのは、カッコいいフレーズを作ろうと意気込まずに、とにかくたくさん作ることです。カッコいいフレーズを作ろうとして作れるもんでもないし、ダサいフレーズも実は役立ちます。何がカッコいいかを知るのも大事ですが、この音づかいはダサい/好きじゃない、っていうのを知っていれば、それを使わないようにすればいいんです。あと、上記のフレーズは譜面上で作りましたが、リズム・パターンと音を守りつつ音を入れ替える作業に慣れてきたら、実際にアドリブでそれをやる練習もしましょう。アドリブに慣れるいい練習になります。

    ということで、アドリブの材料作りとして、いろいろ耳コピして、分析して、バリエーションを作って、ボキャブラリーを増やしていきましょう。石村順でした!

    石村順
    ◎Profile
    いしむらじゅん●元LOVE CIRCUS、元NEW PONTA BOX。日食なつこ、ポルノグラフィティ、東京エスムジカ、K、JUJU、すみれ、大江千里、松山千春、宇崎竜童、石川ひとみ、種ともこ、近藤房之助、豊永利行、Machico、紘毅、城南海、西田あい、つるの剛士、SUIKA、Le Velvets、葡萄畑など、多数のライブや録音に参加している。ロングセラー『ベーシストのリズム感向上メカニズム グルーヴを鍛える10のコンセプトとトレーニング』の著者。Aloha Bass Coachingではベース・レッスンのほか全楽器対象のリズム・レッスンを行なっている。

    ◎Information
    HP Twitter facebook Instagram