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レトロゲームのベース・ラインを弾いてお友達を作ろう!【クリープハイプ長谷川カオナシのレトロゲーム喫音堂】– 第4回
- バナードット絵:石田芙月(株式会社.AC)
- 挿絵:長谷川カオナシ
2022年にメジャー・デビュー10周年を迎えたクリープハイプ。それを記念して始まった長谷川カオナシによる本連載コラムでは、多彩な趣味を持つ長谷川が特にハマっているという、“レトロゲーム”のベースの世界を案内します。
緊張の時間……ライヴハウスのサウンドチェック!
おお! わたしの ともだち!
おまちしておりました。レトロゲーム喫音堂はこちらです。
早速ですが今日は特にベーシストの皆様に向けてお話をしたいと思います。
題して“レトロゲームのベース・ラインを弾いてお友達を作ろう!”。
自分が出演するライヴの当日。あなたはまず、“おはようございます”と会場入りをしますね。
セットリストを記入したらサウンドチェックとリハーサルです。
眼前には初対面の対バン(※1)の皆さん。
お互いに緊張しています。そんななか、ドラマーによる単音チェックが始まります。
続いて、いよいよベーシストであるあなたがPA(※2)さんから声をかけられます。
“それではベースの単音ください”と。
来ました。
この緊張感のなかで、あなたはその後数10秒間たったひとりでベースを鳴らさなければなりません。
そこで何を弾くか。
そう! 今こそ! “ぼくのかんがえたさいきょうのフレーズ”を披露し、共演者たちを圧倒しましょう!
……否。
ここはレトロゲーム喫音堂です。
今回ご提案したいのは“レトロゲームでメロディを担当するベース・ライン”。
これを弾いてみるのはいかがでしょうか! どんな効果が期待できるか? もしも対バンのなかにそのメロディを知る人がいた場合。幼少期に同じレトロゲームをプレイした者同士といったら、もう同郷も同然です。
“おめがだ秋田の出身だが?”
“んだ! んだ!”
“こんたごどもあんだなぁ。ながよぐするべ!”
“へばまずLINEおしえでけれ!”(※3)
このようにライヴハウスの緊張感は和らぎ、あなたは対バン相手と会話が弾み、ひいてはお友達になれることでしょう(※4)。
それでは私が独断と偏見で選んだ、“レトロゲームでメロディを担当するベース・ライン”5選を喫音していきましょう。
①『スーパーマリオブラザーズ』(1985年/任天堂)(※5)
知名度:★★★★★
演奏難度:★★★☆☆
まず最初にご紹介するのが、任天堂の大名作アクション・ゲーム『スーパーマリオブラザーズ』です。
メインBGMもめちゃめちゃカッコいいのですが、今日演奏してみるのは「1-2」を代表する地下ステージのBGM。
なんとこの曲はベースのメロディだけで構成されており、効果音に割くための和音のリソースも充分に確保されている名曲なのです(※6)。
実際に私もライヴハウスで、対バンの方が弾いているのを幾度も耳にしました。そんなベース・ソロ定番曲でもあります。
最後のフレーズは符割が難しそうに聴こえますが、3連符をひとつ飛ばしで“●○●/○●○/●○●/○●○(●が実音、○が休符)”のように構成されています。体重をうしろにかけるイメージで粘っこく弾きましょう。
②『ドラゴンクエストIV』(1990年/エニックス)(※7)
メロディアス度:★★★★★
演奏難度:★★☆☆☆
オムニバス形式の本作は主人公ごとにテーマ曲が用意されています。なかでも第三章“武器屋トルネコ”のテーマ「武器商人トルネコ」は彼のふくよかな体型をイメージしてか、ベース・ラインがメロディを担います。
またトルネコが主人公を務めるスピンオフ作品『トルネコの大冒険』のBGMは、ほぼ全篇がこの曲のアレンジで構成されており、すぎやまこういち先生の作曲能力の高さ、編曲に要する語彙力の豊富さに圧倒されること請けあい。ぜひご堪能いただきたいシリーズです。
③『ゲゲゲの鬼太郎 妖怪大魔境』(1986年/バンダイ)
不穏度:★★★★★
演奏難度:★☆☆☆☆
水木しげる先生による名作コミック『ゲゲゲの鬼太郎』。アニメ・シリーズも1968年に始まり、昨今に至るまで何度もリメイク放送されてきました。それにともなってビデオ・ゲームもかなりの作品が発表されています(※8)。
本作で鬼太郎はある条件で“妖怪地獄”というボス・ステージに放り込まれます。そのステージBGMが例によってベースの単音で構成されているので演奏してみました。
4音目のG♯音と、次のブロックの4音目のB音が実に不穏な雰囲気を演出しており、単音のBGMとは思えない見事な説得力です。
④『スパルタンX』(1985年/アイレム)(※9)
高揚度:★★★★★
演奏難度:★★★★☆
同名のアクション映画のゲーム化作品。ファミコンのゲームにしては珍しく、“アチョー!”や“ハッハッハ”などのキャラクターボイス然としたSEが印象的です。
BGMはブルース進行のベース・ラインとパーカッションの2和音。このシンプルに敷かれたBGMが、本作の特徴であるボイスSEの存在感を引き立てます。
とにかく体力勝負。各小節の4拍目は弦をまたいだ運指になります。正確にピッキングできるよう、両手の連携を練習しましょう。
⑤『カラテカ』(1984年/ソフトプロ)(※10)
親友ができる度:★★★★★
演奏難度:★☆☆☆☆
一見した感じは『スパルタンX』に近いアクション・ゲーム。知る人ぞ知る味わい深いゲームです。このフレーズを聴いて反応した共演者は、きっとあなたと一生涯連れ添う親友となることでしょう。
さて今回は“レトロゲームのベース・ラインを弾いてお友達を作ろう!”と称して、“レトロゲームでメロディを担当するベース・ライン”を喫音して参りました。
どれも“聴認性”が強くてカッコいい楽曲です。サウンドチェック時に演奏するかはともかく、こうしてベースでメロディを奏でてみるのも楽しいですね!
それではまた来月までご機嫌よう。
(※1)
^
その日に共演するバンドのこと。
(※2)
^音響オペレーターさんのこと。
Public Address(公衆伝達)の略だそうです(今日まで知らずにPAと呼んでいました……)。
(※3)
^秋田弁監修:佐々木裕貴氏。ありがとうございます(なお私長谷川は東京都東村山市の出身です)。
(※4)
^サウンドチェックの目的は、あくまでも“ライヴで使用する音の確認”です。これらを演奏したことにより、万が一PAさんから怒られたりバンド・メンバーと険悪になったとしても、弊堂ではその責任を負いかねます!
(※5)
^全世界での累計売上本数は4,024万本を突破しており、世界で最も売れたアクション・ゲームとしてギネスブックにも載っているそうです。音楽は喫音堂第1回で取りあげた『スーパーマリオワールド』同様、近藤浩治先生。本作「1-1」のBGMは世界一有名なゲームBGMと言えるのではないでしょうか?
(※6)
^“ベースのメロディだけ”と記述しましたが、実はうっすらオクターヴ上のユニゾンも鳴っています。エフェクトのような役割です。ファミコンが出せる和音数に関しては、喫音堂第2回をご参照ください。
(※7)
^音楽はすぎやまこういち先生。生み出された数々の楽曲の素晴らしさは言わずもがなですが、特にドラクエを代表する「序曲」はなんとたった数分で作曲されたそうです。2021年、惜しまれながら逝去されました。先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
(※8)
^歴史あるシリーズだけあって、発売されてきたゲームの遍歴もおもしろいです。例えば本作はアクション・ゲームですが、続編である『ゲゲゲの鬼太郎2 妖怪軍団の挑戦』はなんとRPG。ポケモン・ブームには“妖怪を捕まえて育てるゲーム”も出たし、PSではホラー・ゲームも出ています。近年のアニメ・シリーズの“猫娘”のキャラデザ然り、移り変わる時代をフレキシブルに生き抜く姿はカッコいいです。
(※9)
^業務用基盤として稼働していたのは1984年から。1985年に発売されたファミコン版のミュージック・コンポーズはマリオ・シリーズでお馴染みの近藤浩治先生です。
(※10)
^“ロトスコープ”という、モデルの動きをトレースして動画にする技術が用いられている。そのため、キャラクターのアニメーションが実に繊細でカッコいい。
◎Profile
はせがわ・かおなし●1987年9月23日生まれ。小学生でピアノとヴァイオリンを手にし、高校1年でベースを始める。クリープハイプは2001年に尾崎世界観(vo,g)を中心に結成。2009年に長谷川、小川幸慈(g)、小泉拓(d)を擁した現編成となる。2012年にメジャー・デビューし、2014年には日本武道館にてライヴを行なう。2021年11月に6thアルバム『夜にしがみついて、朝で溶かして』をリリースした。長谷川はティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズのグッズ収集家でもある。
◎Information
長谷川カオナシ
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クリープハイプ
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