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【ベース初心者のための知識“キホンのキ”】第6回 – ピック弾きのコツ

  • Text:Makoto Kawabe

ここでは、“ベースを始めたい!”、“ベースを始めました!”、“聴くのは好きだけど僕/私でもできるの?”というビギナーのみなさんに《知っておくと便利な基礎知識》を紹介します。第6回目のテーマは、“ベースのピック弾き”。ピック弾きの基本と上手に弾くコツについて学んでいきましょう。

ピック弾きはギターに限らずベースでも広く普及している奏法ですし、指弾きとは異なる音色やニュアンスが得られるのでぜひともマスターしておきたいところですね。すでにピック弾きを実践している人も、この記事を読んでピックの持ち方やフォーム、ピックの種類などを再確認してみてください。

ベースで使うピックの種類

ピックは色やデザインだけでなく、形状、厚さ、材質などの違いにより実に多くの種類が市販されていますが、ベースでピック弾きするうえではあまりに小さいピックは弦をヒットしづらく、薄く柔らかいピックは割れやすい傾向があり、一般的にはオニギリ型や三角型など比較的大型の形状でミディアム(0.8mm前後)以上の厚さのピックを選ぶベーシストが多いでしょう。また、ピックは使い込んでいるとエッジが摩耗するなどして弾き心地や音色が変わってしまう消耗品ですし、紛失することも多い(!)ので、複数枚購入しておきましょう。

代表的なピックの種類

テイアドロップ型
三角型
オニギリ型

ピックの持ち方

安定して狙いどおりの音色やニュアンスが出せるならば、どのようにピックを持ってもかまわないと思いますが、いくつかのスタイルと特徴を列記しておきます。

A. 親指の腹と人差指の側面でピックを挟むスタイル。ベースのピック弾きでは最も主流かと思います。

B. 親指を外に出したグーを作って親指と人差指の間でピックを挟むスタイル。ピックの安定度は高いですが、弦に当てる角度を調整しにくく、順アングル(後述)になりやすいのが難点です。

C. 中指を人差指に添えつつ親指の腹と3本で挟むスタイル。ピックの安定度が高く、親指の位置で弦に対するピックの角度も変えられます。

D. 指先でつまむように持つスタイル。速く繊細なピッキングには有利ですが、やや安定度に欠け、力強いピッキングもしにくいため、ベースでのピック弾きには不向きかもしれません。

ピック弾きを体感するためのプロセス

ピック弾きのニュアンスを個人差なく体感するために、前項のピックの持ち方は一旦忘れて、まずは下記のプロセスを実行してみてください。

①:楽器を構えた状態でピックを軽く持ち、ピックの表面と弦を密着させます。


②:このとき、ピックはボディに対して垂直を保ち、ピックのエッジは弦からボディ方向に1~5mmほど出します。

※ここでは説明のために親指を離しているが、本来は親指はピックにつけたまま。
※上から見た図。ピックのエッジは弦から1〜5mmほど出す。

③:位置が決まったらピックを強めに握ります。

④:そのまま高音弦側にボディと平行に力を加えます。親指を押し出して弦をピックの先端方向に送り出すイメージです。

⑤:弦がピックのエッジの先端方向に移動し、限界を超えたところで衝撃音とともに弦が振動します。

一連の動作で見てみよう

このプロセスによってピック自体の“しなり”を生かした、ピック弾き本来の音色やニュアンスなどが体感できるかと思います。

④で弦がピック表面をスムーズに移動しない(弾けない)場合は、弦に対するピックの当て方を浅くするか、弦とピックの平行を保ったままピックの上部を(力を加えている方向に)傾けてみてください。

このプロセスに限っては⑤のあとにピックを隣の弦上で静止させると感覚が理解しやすいと思いますが、実際の演奏では弦を弾いたあとのピックはほかの弦に触れないようにします。基本的にはヒジの位置は変えずにヒジを動作支点として“二の腕”の振り、手首のひねり、手首の振りなどを同時に動かし、腕全体のスナップを生かして素早く弦を振り抜くのがいいでしょう。

ピックを持つ手の力加減は、緩めすぎると音量が足りずスカスカな音色になりますし、強すぎると瞬発力のある素早い振りができません。実際の演奏ではピックを持つ強さで音量をコントロールすることもあるかと思いますが、まずはこのプロセスで適切な力加減を見つけてくださいね。

ピック弾きでは、上から下へ振り下ろすのがダウン・ピッキング、下から上へ振り上げるのがアップ・ピッキングとなり、どちらのピッキングでも音量やニュアンスを揃えることが重要です。上記プロセスはダウン・ピッキングですが、アップ・ピッキングでも注意点は同じで力の方向が真逆(ボディと平行に人差指を手前に引く)になるだけです。ダウン/アップ・ピッキングで音色や音量が揃わない人は、ピックの当て方や角度が変化していることが多いので、このプロセスを注意深く実行して自己検証してみてください。

フォームを安定させる

ピック弾きは指弾きと同様にピッキングする位置によって音色が変化しますが、弦のテンションや弾きやすさを考慮するとフロント・ピックアップ上かそれよりもややブリッジ寄りの位置でピッキングするのがオススメです。

演奏時に弦に当たるピックの深さや角度を一定に保ち、安定したピッキングを繰り返すためには、二の腕や小指、手刀部分などをボディ表面に乗せて腕の動きを制限するのがいいでしょう。小指や手刀部分を弾かない弦(余弦)に乗せるとピッキングが安定するうえに余弦のミュートになるので一石二鳥です。ただし、ダイナミックなフォームに比べてピックの振りがコンパクトになるので、弱いピッキングにならないように意識し素早くピックを振り抜きましょう。

手刀を5、4弦上に乗せることで
ピッキングを安定させる例
小指をブリッジに乗せることで
ピッキングを安定させる例

順アングルと逆アングル

先述のプロセスではピックを弦と平行に当て、ピックの表面を使ってピッキングしましたが、ピックのエッジでピッキングすると音色やニュアンスが変わります。

特に下の写真Aのようにダウン・ピッキングでネック側、アップ・ピッキングでブリッジ側のエッジを弦に当てることを順アングル、写真Bのように順アングルと逆のエッジを弦に当てることを逆アングルと言います。

順アングルは動作支点(主に手首)の位置関係から弦を擦るような音(ピック・スクラッチ)が混ざりやすく、芯のない音になりやすい反面、歪ませる場合は相性がいい傾向があります。ストラップを長くして楽器を低く構える人は順アングルになりやすいですね。

逆アングルはピック表面でのピッキングに近いニュアンスで太く芯のある音色になる傾向がありますが、ピックの持ち方や手首の使い方を工夫する必要があるでしょう。

A:順アングル
B:逆アングル

空(から)ピックとは?

ダウン/アップで交互にピッキングすることをオルタネイト・ピッキングと言いますが、オルタネイト・ピッキング主体の演奏時に、弾くべき音符がないタイミングで“からぶり”をすることを空ピックと言います。空ピックによってダウン/アップの動作と手首の振りを維持し、異なる音価(音の長さ、4分音符や8分音符など)が混在するフレーズやシンコペーション(拍のオモテとウラが入れ替わるフレーズ。通称“くい”)でも、テンポをキープしながら的確なタイミングでの演奏がしやすくなります。

下の譜例は、前半2小節はオルタネイト・ピッキングで弾き続けるフレーズ、後半2小節は空ピックが効果的なフレーズです。どちらも音程が変化するタイミングは同じなので、トータル4小節を通して練習すると空ピックの意図や正確なタイミングが把握できるでしょう。

ちなみにオルタネイト・ピッキングは絶対ではありません。速いテンポでは有利ですが、遅いテンポではダウン・ピッキングだけで弾いても問題ありませんし、意図的にダウン/アップ・ピッキングで音色ニュアンスの差をつけて演奏することもあります。ビート・パンクなどのロック系ジャンルではダウン・ピッキング・オンリーで弾く美学もありますね。楽曲に合わせてダウン/アップ/オルタネイト・ピッキングを使い分けましょう。

おわりに 音色にもこだわろう

ピック弾きの基礎をマスターできたら次はピック弾きの音色にもこだわってみてください。ピック弾きは弾き方だけでなくピック自体でも音色が変わります! 高価なピックはなかなか試しづらい面もありますが、弾き心地や音色が激変するピックもありますよ。自分に最適なピックを見つけて、ピック弾きの奥深い世界を楽しみましょう!

ピックにこだわる! 

ピック弾きはピックの種類で音色が変わりますが、具体的にはピックのエッジ(角)の形状や角度、ピックの厚さ、材質、表面仕上げの違いなどが音色に影響します。ピックのエッジの違いは特にアタック音の質感に大きく影響し、必然的にアンサンブルのなかでの溶け具合、抜け具合に違いが出てきます。例えば同じ材質、厚みのピックで比較した場合、エッジ形状が鋭角なほど倍音が多くシャープなアタックになり、鈍角なほど柔らかいアタックになる傾向があります(ただし弾き方によって音色の印象は個人差があるかと思います)。ほとんど同じ形のように見える三角型とオニギリ型でも、エッジの形状が異なれば音色に違いが生じるのです。ティアドロップ型のピックを持っている人は鋭角な部分と丸みを帯びた部分で弾き比べてみてください。一聴瞭然ですね。

一般的にピックが厚い(硬い)ほどアタックがタイトで音量が大きくなり、薄い(柔らかい)ほどソフトな音質で音量も小さくなりますが、材質や形状などが異なる場合はこのような傾向になるとは限りません。近年、流通量が増えつつある極厚のアクリルやエポキシ樹脂製のピックをはじめ、従来の材質では得られなかった柔らかいアタックや太い音色が得られるピックも市販されているので、新素材系のピックに対しては厚みや硬さから抱く音色イメージは一旦除外したほうがいいかもしれません。

また、ピックの厚みや材質、表面仕上げなどの違いはピック自体の耐久性や弦に対する弾力(反発力)だけでなく、ピッキング時の感触、弾き心地にも影響します。細かいところでは同シリーズ、同スペックで色だけが異なるピックでも割れやすさや弾き心地が異なることがありました(混合物の違いが原因?)。種類の異なるピックをいくつか購入し、自宅練習やリハーサルでじっくり弾き比べてみると微妙な違いが楽しめますし、音色バリエーションの一環として音色キャラクターの異なるピックをキープしておくのもオススメですよ。

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