SPECIAL

UP

【Special Alternative Session -Another Edition-】中尾憲太郎(ナンバーガール)× 磯部寛之([Alexandros])

  • Interview:Koji Kano
  • Photo:Taichi Nishimaki
  • Photo Location:KOENJI HIGH

現在発売中のベース・マガジン2月号【WINTER】では、Special Program『創成期オルタナティブの肖像 〜90年代オルタナ/グランジ・ベース論』と題し、1990年代の“USオルタナティブ・ロック”の特集を46ページで展開している。

同特集内で、ナンバーガールの中尾憲太郎と[Alexandros]の磯部寛之による、豪華“オルタナ対談”を掲載しているが、今回BM Webでは本誌に入りきらなかった特別篇“Another Edition”をお届けしよう。


特別篇では両者のベーシスト観のほか、プレイ・スタイル、使用機材などについて語られている。日本のロック・シーンを牽引し続ける両者の“邂逅”をぜひ目に焼き付けてほしい。

僕と磯部くんは意外と近いポジションの
プレイヤーであるような気がする。
━━中尾憲太郎

磯部:意外とはじめまして、ですよね。

中尾:そうだね。(庄村)聡泰くん(編注:[Alexandros]の前ドラマー)とは面識があって、僕のライヴに来てくれたりもしたんだよね。

磯部:そうなんですね! それは大変お世話になっております。

――初対面とのことですが、お互いのバンドに対してどんな印象を持っているか教えてください。

中尾:[Alexandros]は何かこう、あらかじめ大きい会場で演奏することを想定して曲を作ってる印象があって、ライヴハウスよりも大きい規模のステージを念頭においてる感じがするんですよね。だから海外の大きいステージでも映えるような雰囲気を感じるんです。

磯部:ありがとうございます。

中尾:これはあくまで僕の自論だけど、大きい会場で演奏するようなバンドの音像って、ベースの存在は極めてシンプルなものだと思っていて。細かいフレーズというよりは、ボトムを支えているような役割というか。磯部くんのプレイからはそれが伝わってくるし、しっかりそれを意識してやってるなって感じますね。

磯部:いやもう光栄過ぎますね。

――磯部さんはナンバーガールにどんな印象を持っていますか?

磯部:何て言ったらいいんだろう……狂気に抱きしめられてる感じですかね(笑)。率直に言うとこういう表現になります。無礼講ですみません。

中尾:いやいや、全然(笑)。

磯部:もちろん立ち位置として、レジェンドであるし、日本のロック・シーンを切り拓いたバンドだっていうリスペクトが大前提にあるんですけど、一個人の率直な感想としてはこういうイメージを持ってます。

中尾:負けず嫌いが4人集まってバンドやってるからね。もうギシギシの鬩ぎ合い。

磯部:でもそのギシギシ感がたまらなくて。決してつっけんどんじゃなくて、聴いててリスナーを誘ってくれる感じがすごく心地いいんですよね。中尾さん個人のイメージとしては、いい意味でぶっ飛んでるフレーズもありつつ、基本的にはアンサンブルを支えることに徹しているプレイヤーっていう印象を持ってますね。

中尾:そういう意味では、僕と磯部くんは意外と近いポジションのプレイヤーであるような気がするな。

磯部:そう言っていただけて嬉しいです。さっきおっしゃっていただいた“大きいステージでやる”という話にも関連するんですが、俺はもともとルートでガシガシいくのも好きなんですけど、その反動で動きたいときに思いきりフレーズを動かすのも好きなんです。でも大きいステージになればなるほど、削ぎ落としてシンプルにいったほうがいいのかなって思う瞬間もあって、そこで壁にぶつかったりもするんですよ。だからさっき中尾さんにそこを言及していただいて驚きなんです。

中尾:やっぱり大きい会場になればなるほど、低音の存在感とスピード感が大事になってくるから、無理にハイ・フレットとかにいってしまうとバンド全体を包む迫力がキックだけになってスカスカになっちゃう。だから低音をしっかり支えるっていうベース本来の役割を改めて意識する必要があるんだよね。

磯部:必ずしも一連のベース・フレーズとしてお客さんの耳に届くわけじゃないですからね。細かいことをやっても、結果としてローがスカッとなっちゃうだけという。

中尾:そうなるとギターとの兼ね合いもすごく重要になってくるから、ベースの音作りにもより意識を配らないといけないんだよね。

――中尾さんはモズライトやPBでピック弾き、磯部さんはジャズベでの指弾きですよね。それぞれ“オルタナ”というサウンドのなかで違ったプレイ・スタイルを見出していますが、改めてオルタナのベースとはどんなプレイだと考えていますか?

中尾:もうこれは正解がないですよね。何でもいいけど何でも良くない、みたいな。ただ決して僕もオルタナと思ってピックでガンガン弾いてるわけじゃなくて、根底にあるスタイルとして、高校生のころに聴いてたUKパンクがルーツにあるんです。それでピック弾きから入っちゃったからそれが一番得意になっちゃったっていうだけ。

磯部:俺のプレイも中尾さんと同じく慣れですね。もちろんピック弾きも試しましたけど、指のほうが弾きやすいからって理由でずっと指で弾いてると、それが身体に馴染んでフレーズも生まれるし、技術的な部分を考えないクリエイティブな表現ができる。両方できる人はすごいけど、俺の場合はもうこのプレイ・スタイルが染み込んでますね。

中尾:でも出てくるロー感とかは指弾きのほうが好きなんだけどね。だから指弾き特有のロー感とピック弾きのオイシイとこどりができないかなーっていろいろ考えつつ、今に至ってます(笑)。

なかお・けんたろう●1974年6月17日生まれ、福岡県北九州市出身。1995年、福岡で結成されたナンバーガールのメンバーとして1999年にシングル「透明少女」でメジャー・デビューし、2002年に解散。後続のロック・シーンに多大な影響を与えた。解散後はCrypt City、SEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HER、ART-SCHOOLなどのバンドに参加するほか、プロデューサーとしても活躍している。ナンバーガールは2019年2月に復活を果たした。
https://numbergirl.com/

▼ 続きは次ページへ ▼