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    Interview – 亜沙[和楽器バンド]

    • Interview:Zine Hagihara

    進化するコンポーザー、深まるベース・スタイル

    和楽器とバンド・サウンドを融合させた唯一無二の音楽性で我が道を邁進する和楽器バンド。2020年10月にアルバム『TOKYO SINGING』をドロップし、ゴージャスなロック・アンサンブルに流麗な歌を組み合わせた独自のミクスチャー感覚をさらに研ぎ澄ませた彼らが、2021年6月に新作『Starlight E.P.』を発表した。本作で亜沙は、歌を支える歌伴プレイからアンサンブルを彩るドライブ・フレーズまで、楽曲の各セクションに適したベース・アプローチを的確に繰り出している。本作のプレイからは、3月にリリースしたソロ作『令和イデオロギー』においてコンポーザーとしても新たな境地に達した彼の視点が、ベーシストとしてのスタイルにアイディア性をもたらしていることがわかる。ベーシストとしての亜沙が、どのように和楽器バンドの音楽に向き合っているのか。『Starlight E.P.』でのプレイについて聴くことで少しでも明るみにしたい。

    変化が必要だと思いますし
    もともと持っている深みも追求しないといけない

    ――和楽器バンドは昨年10月にアルバム『TOKYO SINGING』がリリースされ、それから約8ヵ月の期間を経て新作『Starlight E.P.』が6月に発売されました。この期間はバンドにとってどのようなものでしたか?

     コロナ禍ではそんなに活動をガツガツやれるとも限らないのですが、そのなかでけっこう普通に過ごせたことは幸運だったと思います。自分の場合はソロ・アルバム(『令和イデオロギー』/2021年3月3日発表)を作ったりもしていたので、バンドもソロも活動があって、目まぐるしく過ぎていった期間だったという印象でしたね。あっという間でした。

    ――なにか大きな変化を強いられるわけでもなく、着実にミュージシャン業を継続できた、と。

     そうですね。ライヴハウスを拠点とするスタイルだと影響は大きかったと思うんですが、自分たちはラッキーなことにそれとは違ったフィールドでの活動だったりするので、それこそネット上での活動も多くて、だから運良く活動が続けられたと思っています。

    ――なるほど。作品への影響も少なかったのでしょうか。

     まあ、なにかしらの影響はあるとは思いますけどね。それよりも作品への影響は、環境よりも年齢を重ねていくところからの部分が多いかもしれません。やっぱり考えていることは年々変わってくるのでね。そういう内面の変化もそうですし、時代ごとのトレンドとかもあったりするので、変わらない核となる部分もあれば、内外の影響で変わってくる部分もあったと思います。ベースの演奏に関してもそうで、若い頃の演奏とかを聴くといろんな面でやっぱり拙いなって思います(笑)。

    和楽器バンド
    『Starlight E.P.』
    和楽器バンド

    ユニバーサル/UMCK-1687
    (通常盤)

    ――ソロ作を追っていくとコンポーザーとしての幅も広がっていることがわかりますよね。

     はい。特に詞の部分が変わったかなと思いますね。曲やアレンジももちろんそうなんですけど、一番変わったのはそこですね。思っていること自体が変わりますし、作品数も多くなってアウトプットしきった表現に対してインプットもしていくので、それが“今”の自分の表現になっていく。それと同時に本当に自分が納得のいくクオリティのものを出そうと考えると難しいんですけど、そこはしっかりと目指しています。

    ――2021年3月にリリースされたソロ作『令和イデオロギー』では電子楽器を取り入れたモダンなロックの要素を感じたりして、亜沙さんがあまり触れてこなかった要素を積極的に取り入れている姿勢が感じ取れました。

     ありがとうございます。和楽器バンドでの活動も、ソロとしての制作においても、“自分のクセ”っていうものがあって。和楽器バンドでは演奏者としての側面が強くなるんですけど、どのメンバーが作った曲だろうとある程度のパターンが生まれてしまうものだと思うんです。それはときには個性や良さだったりもするんですけど、そのままだと演奏する側も飽きてきますし、お客さんに対しては“良いと言ってくれている部分”は残しつつも進化をしないといけないという思いがあって。自分の活動全体に言えることなんですが、“深くいきたい”って思うんですよ、音楽家として。

    【亜沙】Moonwalker-月の踊り手-【MUSIC VIDEO】

    ――なるほど。

     デビューした当時は勢い任せの部分があって。それでもおもしろいサウンドだと世間が言ってくれていましたけど、だんだんとそれもすでに認知されてきていると思うんです。だからこそ変化が必要だと思いますし、それでいてもともと持っている深みの部分も追求しないといけないとずっと考えています。この部分がソロ作の『令和イデオロギー』にも出ていたと思うんですよ。いくつかアルバムを出してきたので、自分のなかでも違った部分を進化させた何かを出したいと思っていました。そのなかで最近はけっこう洋楽を聴いているんですよ、実はこれまであまり聴いてきていなくて。

    ――そうだったんですね。

     最近、自分が好きなのはイギリスのThe 1975とか、世間的にはちょっと前になるかもしれないんですがザ・チェインスモーカーズとかですね。そういうものを新しく取り入れたかったんです。やっぱり自分の好きな音楽も変わってきていて、例えば自分が10代のときとかはL’Arc〜en〜CielとかJanne Da Arc、DIR EN GREYを聴いてバンドを始めたんですけど、大学生ぐらいの頃はアニソンとかVOCALOIDとか、あとsupercellにハマっていて、加えてそこから周りのバンド仲間の音楽を参考にしたりしていて。そういったものを経て今は洋楽が好きで、邦楽とはまったく違ったエッセンスを感じるので、すごくいいインプットになっています。

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