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【特別対談】ウエノコウジ × ハマ・オカモト「初めてカッコいいと思った日本のバンドがミッシェルだった」【WEB版インタビュー】

  • Text & Photo : Yasuo Kato

現在発売中のベース・マガジン2025年11月号の巻頭特集『B×B CHEMISTRY! 低音の重なりが引き起こす化学反応』では、ウエノコウジとハマ・オカモト(OKAMOTO’S)の対談が実現。このベース・マガジンWEBでは、惜しくも本誌では掲載できなかった対談の模様をお届けしよう。

若かりし頃のハマ・オカモトに、ミッシェル・ガン・エレファントが与えた衝撃のほか、真空管や弦についてのこだわりなどベーシストならではの話も繰り広げられる、コアな内容となっている。

青春のど真ん中で
『ロデオ・タンデム・ビート・スペクター』に出会った
――ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)

ウエノコウジ ハマ君は最初からベースなんだっけ?

ウエノ その頃はどんなのを聴いていたの?

ハマ 僕が入った部活は変な部活で……。

ウエノ そうだ、“邦楽禁止”なんだった! 確かTHE BAWDIESも同じ部活だよね?

左から、ウエノコウジ、ハマ・オカモト。

ハマ 7つ上の先輩になります。ただTHE BAWDIESが在校中は中学校に軽音部はなくって、僕らのふたつ上の代から存在するんです。それが変な部活で、ツェッペリンをやったりビートルズやったりしていて、そこで僕はベースを始めるんですけど、そんな思春期ど真ん中のタイミングで、『青い春』(2002年に公開された日本映画。劇中にMICHELLE GUN ELEPHANTの楽曲が多く使われている)が公開されるんですよ。

ウエノ あー、「ドロップ」だ。

THEE MICHELLE GUN ELEPHANT「ドロップ –Remastered–」

ハマ そうです。そして『ロデオ・タンデム・ビート・スペクター』にも出会うんです。洋楽しか聴かない部活で、絵に描いたような洋楽かぶれだった自分が、その部活のルールをかいくぐって初めてカッコいいと思ったバンドがミッシェルで。だから僕は最初からウエノさんだったんです。先輩世代でウエノさんに憧れている人ってもちろんたくさんいますけど、僕の年代が生のミッシェルをギリギリ通れた最後の世代だと思うんですよね……って話を、ライヴ終わりでお会いしたときにも話したんですよね。

ウエノ したねぇ〜。

ハマ 中学校のときって今から22年前のことだから、それを今話しているって、僕は結構しぶとい男ですね(笑)。

ウエノ いや、その頃解散したのに今もベース・マガジンでコラムやっているんだから、俺も相当にしぶといよ(笑)。

俺はやっぱりずっとプレシジョンが好きなんよ
――ウエノコウジ

ウエノコウジ

Profile : 1968年3月27日生まれ、広島県出身。THEE MICHELLE GUN ELEPHANTのベーシストとして、1996年に「世界の終わり」でメジャー・デビュー。2003年にバンド解散後は、Radio Caroline、武藤昭平 with ウエノコウジ、the HIATUS、など多数のバンドで活躍。そのほか、セッション・ベーシストとしても活動も多数。2025年にTHE GROOVERSの藤井一彦(g)との新ユニット“TASOGARE BUDDY”を結成した。

ウエノ 最初に好きになった音楽が変わる人ってあまりいないけど、好きなベースの機種が変わる人もあまりいないんだよね。

ハマ 確かに。

ウエノ 俺はやっぱりずっとプレシジョンが好きなんよ。ハマ君は自分のモデルがあるけど、俺が見ている限りでは“プレシジョン7:ジャズベ3”のような気がするな。

ハマ 本当にずっとそれできていて。バンドだと時期によって作風が変わるじゃないですか。僕らはコロナ以降から16ビートっぽいファンキーな曲とかも増えていって、それでけっこうジャズベの頻度も上がってきました。

ウエノ ジャズベはヌケがいいからね。

ハマ ただ、少し前にデビュー当時の曲だけでライヴをやったんですね。そこでは9割プレベみたいな感じだったんですが、久しぶりに“俺、すごいプレシジョンの人なんだな”って思ったんです。もう出てくるものも違うし、やっぱりおもしろいですよね。

ウエノ 俺はあのいらないローが好きなんだよね(笑)。

ハマ わかります!

ウエノ 歌う人にとっては、アレはいらないんだけどね〜。

ハマ “見えるロー”というか。ジャズべは見えていないローがあるんですけど、プレベは見えすぎているところがある。

ウエノ ジャズベは誰が弾いてもある程度ヌケてくるから。ヌケがすべてなんよね、ジャズベはね。例えばオクターブ奏法とか、プレシジョンだとなかなかヌケてこないところも、ジャズベだとヌケてくるから。だから俺もそういう曲を弾くときは使うようにはしてるの。そういうときは簡単なプリアンプを用意して、ローの量を合わせてあげると、表のPAにとってはやりやすいと思う。そのままのイコライジングでやると、プレベとジャズベの差が出すぎるというか。

ハマ それはテクニックですね。確かに明らかに違いますから。

ウエノ そういうことってアンプの違いなんかにも言えるけど、いやらしい話“これラインの音だな”とかわかっちゃうじゃん? それはそういう現場だったんだろうけど、でも俺はやっぱりそこでもアンプを鳴らしたい。

ハマ うん、すごくわかります。

ウエノ 土屋昌巳さんとバンドをやっているときに、“音は振動だから”って言われたの。“音量はちっちゃくてもいいけど、振動させないと意味がないよ”って。それはものすごく覚えてる。

ハマ 本当にそうですよね。それをマイクで録ったものを聴いてカッコいいと思ってきたから、リアンプやラインでも技術的には差異がないかもしれないけど、そういう話じゃない。

ウエノ 今の時代はラインの音が主流で、違和感を感じているのはむしろ俺たちだけなのかもしれないけど、それでも俺はいつまで経ってもクソ重いチューブのアンプを使いたいね。腰がモゲるかと思うぐらいの(笑)。だけど今は“真空管問題”ってのがあるからな〜。値段が高い!

ハマ それで買い占めた先輩がいっぱいいます(笑)。

ウエノ そもそもロシア製がなくて、それに近いのがチェコ製って話があるね。しかもバイアスが取れてないと意味がないから、そうなるとある程度本数が必要だし。でも持ってればいいって問題じゃないと思うんだよね。劣化もしていくだろうから。

ハマ 通電しておかないと意味がないですからね。あと“弦(の値段)高い問題”もあります(笑)。

ウエノ 高いね〜。

ハマ ウエノさんは、今はそんなに張り替えないですよね?

ウエノ うん。昔は汗もすごかったし、“ギン!”って音が好きだったからライヴごと替えていたけど、今は死にかけのほうが好きかな。ただ死にかけでもギン!とさせることもできるようになってきた気がする。

ハマ 本当に“死ぬ”っていうタイミング、ありますよね。その直前のところっていうのは、確かにすごい。

ウエノ ミュートしてないのにミュートしたような音になっていくんだよね(笑)。

“ウマイ・ヘタ”みたいな議論って、
個人的には意味がないと思っている
――ハマ・オカモト

ハマ・オカモト

Profile : 1991年3月12日生まれ。中学校からの同級生で結成されたOKAMOTO’Sのベーシスト。2013年に日本人ベーシスト初の米国フェンダー社とエンドースメント契約を結ぶ。2024年9月から8年目ぶり2度目の全国47都道府県ツアー「OKAMOTO'S 15th Anniversary FORTY SEVEN LIVE TOUR -RETURNS-」を開催。2025年1月22日(水)には、OKAMOTO’S 10 th ALUBUM『4EVER』をリリースした。

ハマ ウエノさんのスタイルは、やっぱり“ウエノさんのスタイル”だから、あの出音の感覚と捉え方は、もうご本人じゃないと絶対にないと思うんですよね。

ウエノ そもそも、自分が好きなポイントって絶対あるから。それはもう全ベーシストにある。例えばピッキングの強さ……俺から言わせると振り向きの速さとか、弦に当てるポイントでも全然違うし。

ハマ 腕の長さも絶対ありますし、構える位置も違うし。

ウエノ だからもう全員が全員違うの。だからよく“ウエノさんみたいな音が出したいんですけど”って言われるんだけど、じゃ、俺と一緒の体格になって、俺と同じストラップの長さで、同じセッティングにしても、力がまた違う。

ハマ そうなんですよ。そしてそこに“聴いてきたもの”みたいなものが乗るから。

ウエノ そうなのよ! いや、それが一番だよ。

ハマ だから同じ機材をそろえようが、同じ年式だろうが、ちょっと夢物語になっちゃう。

ウエノ 全世界にどれだけベーシストがいるかわかんないけど、全員違うと思う。

ハマ だから“ウマイ・ヘタ”みたいな議論って、個人的には意味がないと思っているんです。バンドだろうがソロ名義だろうが、それを上手にこなしてるか否かでしかない。

ウエノ 結局は、自分が気持ちいいか気持ち悪いかだからね!

ベース・マガジン2025年11月号もチェック!

現在発売中のベース・マガジン2025年11月号では本編の「ウエノコウジ×ハマ・オカモト」の対談を掲載中! このWEB版とは別内容の対談記事になっているので、ぜひこちらもチェックしてください。

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