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    【Special Talk Session】トニー・レヴィン × 関根史織

    • Translation:Tommy Morley
    • Photo:Takashi Yashima

    スティックをプレイすることが、
    普段とは異なるベース・プレイ/曲作りにつながる。
    ━━トニー・レヴィン

    関根:わたしも習得するまでにかなり時間がかかりました。ベースから始めているので、ベース弦との並びの違い、特に5度関係のチューニングに対応するのにすごく苦労しました。

    トニー:でもプログレッシブな音楽をプレイしていくうえで、ほかとは異なるスタイルでプレイできるスティックの存在は、僕にとって大きな助けにもなったんだ。

    関根:聞きたかったことが聞けて嬉しいです。でもチャップマン・スティックを弾いていると、普通にギターとベースでプレイしたほうが良いんじゃないかと思うこともあるんです。

    トニー:そうだよね、わかるよ。

    関根:だから、わざわざこの楽器を使うことに意味があるのかな? と悩んでしまうこともたまにあって……。

    トニー:うん、そうかもしれない。でもスティックをプレイすることが、普段とは異なるベース・プレイ/曲作りにつながる手助けにもなる。プレイヤーの可能性を飛躍させる楽器でもあるんだ。

    関根:わぁ、ありがたいお言葉です。わたしは曲を演奏するのは好きなのですが、これまで自分で曲を作ることはしてこなかったんです。でもチャップマン・スティックを持つことで、“このスティックから生まれるフレーズで曲を作ってみよう”と初めて思うことができたんです。

    トニー:それはナイスなことだね。

    関根:トニーさんが現在でもスティックをプレイし続けているのは、スティックでしか生まれないフレーズやプレイといったものを大切にしているからなのでしょうか?

    トニー:それはどうだろうな。僕はそういう風には考えたことがなくて、単純にこのサウンドが好きだからプレイし続けているんだ。

    関根:そうですね。わたしもそう思います。チャップマン・スティックを持って初めてステージに立ったときのことを覚えていますか?

    トニー:1977年のピーター・ガブリエルのツアーで、ちょっと難しかったのを覚えているよ。プレイしていない弦が鳴らないようにする方法をこれまで少しずつ学んできたんだ。しかも当時のスティックは今のものとは異なっていて、とても繊細でちょっとしたノイズも拾いやすかったんだ。出力も小さめだったからアンプで上げる必要があったし、開放弦は特にノイズが出やすかったからね。だからスティックを使った最初のツアーではいかに弦をミュートできるか、ということを考えていたよ。

    関根:わたしが使っているスティックも少し古いタイプでして、もしかしたらそれと同様のものかもしれないので、あとで実際に見ていただきたいです!

    トニー:OK。君のスティックは10弦? それとも12弦かな?

    関根:10弦ですね。

    トニー:僕が初めて手にしたスティックも10弦だったよ。当時は12弦がまだなかったから、10弦の選択肢しかなかったんだ。

    関根:そうだったんですね。今回の来日では10弦を持ってこられたのですか?

    トニー:いや、12弦だね。スティック・メンの音楽は全部12弦で書いてきたから、ライヴでも12弦が必要なんだ。

    関根:ということは今回の来日で持ってこられたスティックは比較的新しいものなのですね。いつ頃に作られたスティックかご存知ですか?

    トニー:忘れちゃったな。でも10〜12年前に作られたものだと思う。僕はキング・クリムゾンのツアーに持って行っても、ほかで弾けるようにまったく同じ仕様のスティックを2本持っているんだ。

    関根:そうなんですね。ステージに並んでいたエフェクターについても教えてください。スティックからの出力はまずヴォリューム・ペダルに入っているということですか?

    トニー:そのとおり。トップ弦(メロディ弦)をプレイしないときはミュートしておきたいから、ヴォリューム・ペダルでシグナルをカットしている。トップ弦のシグナルはKemperに入っていて、ベースのほうはさまざまなエフェクターを通っているんだ。

    関根:メロディ弦で使用するKemperでは、どんなエフェクトやプログラムを使っているのですか?

    トニー:アンプ・モデリングはもちろんのこと、リヴァーブ、エコー、コンプレッションやファズと本当に何でもやっているよ。曲ごとに入れ替えているし、曲中で切り替えているものだってある。ベースのほうは基本的に設定したペダルを組み合わせてサウンドを作っているけど、Kemperでは1曲で3つくらいのセッティングをセクションで使い分けたりしていたりするんだ。

    関根:なるほど。そういう使い方をしているんですね。わたしはベース弦とメロディ弦でかけるエフェクトを分けられるところが、スティックの好きなところでもあるんです。

    トニー:そのとおりだね。ステレオで扱えて、とてもナイスな特徴なんだよね。スティック・メンだとトップ弦をKemperに通しているけど、キング・クリムゾンだとベースに使っているんだ。

    関根:両バンドで使い方を変えているんですね。

    トニー:そう、セッティングが大きく異なっているんだ。ベース弦で使うときはアンプとしての使い方に特化しているね。

    関根:トニーさんのセッティングが知れて嬉しいです。ツアーごとにエフェクターはけっこう入れ替えているのですか?

    トニー:僕らは4月にもツアーをしたし、先月はジャズ・バンドでアップライト・ベースをプレイしたから、一昨日やっとこのツアー用にペダルを見繕い始めたんだよ。だからどのツアーでも同じ機材というわけにはいかないし、特に今回使っているヴォリューム・ペダルは小さくて飛行機に乗せてツアーに出るには良いのだけど、モノとしては満足していないんだよね。アメリカでツアーするときはアーニー・ボールのペダルを使っているよ。

    Tony’ Board

    今回の来日公演時のトニーの足下。右から、LEHLE P-Split II(スプリッター/DI)、VALETON EP-1(ヴォリューム・ペダル)×2、ピーターソン Stomp Classic(チューナー)、EBS OctaBass Studio Edition(オクターバー)、ORIGIN EFFECTS Cali76-CB(コンプレッサー)、インド製ブランドのファズ、ダークグラスエレクトニクス Alpha・Omega Ultra(プリアンプ)、エレクトロ・ハーモニックス Grand Canyon(ディレイ/ルーパー)、KEMPER PROFILER STAGE(アンプ・プロファイラー/マルチ・エフェクター)。“スティックでベース・パートをプレイするうえでコンプレッサーはとても大切。ここ数年はORIGIN EFFECTSのものを使っているよ。Grand Canyonはいろいろなことができるペダルで、今夜のショウではコーラスのように使う予定だよ”。

    Sekine’ Board

    関根のスティック用エフェクト・ボード。上段が右から、特注のライン・セレクター、コルグ Pitchblack(チューナー)、ボス DS-1(ディストーション)、MXR Dyna Comp(コンプレッサー)、EARTHQUAKER DEVICES The Depths(オプティカル・ヴァイブ)。下段が右から、DOD Gonkulator(リング・モジュレーター)、Jim Dunlop Cry Baby Mini Wah(ワウ)、strymon TIMELINE(ディレイ)、Mr. Black Downward Spiral(ディレイ)。ボード外に置かれているのが、TC Electronic Ditto X4(ルーパー)。チューナー・アウトを備えたライン・セレクターにはインとアウトにそれぞれ“BASS”、“GUITAR”と記されており、低音弦/高音弦の2系統を経由しアンプへと接続される。パワー・サプライはボード裏に設置されている。

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