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【Special Talk Session】トニー・レヴィン × 関根史織

  • Translation:Tommy Morley
  • Photo:Takashi Yashima

僕は人生においてこんなにも音楽をやれてきたことを
とてもラッキーだったと思っている。
━━トニー・レヴィン

関根:トニーさんがチャップマン・スティックを初めて周囲のミュージシャンたちに披露したとき、彼らはどんなリアクションをしましたか?

トニー:昔過ぎて覚えていないけど、誰にも特別なことは言われなかったかな。最初は一曲しかプレイしていなかったしね。でも何より印象に残っているのは、ピーター・ガブリエルやバンド・メンバーたちが僕がスティックを演奏することを気に入ってくれたってことだね。

関根:やっぱり皆さん素敵な人ばかりなんですね。1976〜77年あたりというと、まだ世界的にタッピングという技法は確立されていなかった時代でもありますよね。

トニー:そうだね。僕は当時から少しベースでタッピング奏法をやっていたんだけど、僕のほかにチャップマン・スティック以外の楽器でタッピングをやっている人なんてほとんど見たことがなかったよ。

関根:そうだったんですね。トニーさんはファンク・フィンガーズをやったりと、自由な発想で楽器をプレイしていて、そこにもわたしは大きな影響を受けたんです。

トニー:よく見てくれているね。ありがとう。

関根:トニーさんのように世界中をまわりながらスティックをプレイしていると、わたしと同じようにあなたに影響を受けてスティックをプレイし始めた、というミュージシャンに会う機会もあるんじゃないですか?

トニー:何回かあったと思うよ。でも僕は人にどう思われているかということに興味がないんだ。もちろんスティックのプレイヤーたちに会うことはあるし、夏になるとミュージック・キャンプという形で100人くらいのミュージシャンたちとセミナーを開催しているんだけど、そのうち30人くらいはベースやスティックの奏者なんだ。そこでは若い人たちがどんなプレイしているのかを興味深く見たりしているよ。

関根:日本にはスティック・プレイヤーがあまりいないので驚きです。特にトニーさんみたいにエフェクターをいくつもつないだ、エレクトリックなプレイヤーとなると非常に少ない印象です。

トニー:なかには僕より優れたテクニックを持ったプレイヤーに遭遇することもあって、両手の扱いのうまさに驚かされるんだ。ここ2年は特にロックダウンの影響もあってYouTubeを観ることが増えて、若くて素晴らしいベーシストたちをたくさん知った。彼らの素晴らしさにインスパイアされたし、テクニックという点でも刺激を受けて、自分でもより練習をするようになったよ。実際基礎的なレッスンも受けて、テクニックをもう一度学び直したんだ。

関根:これだけのキャリアがありながら、今でもそんな風に思えることが本当に素晴らしいと思います。以前、EarthQuaker Devicesのプロモーション動画でわたしがスティックを演奏した際、トニーさんからビデオ・レターをいただきました。それについて改めて今ここでお礼をお伝えしたいです。

Board to Death : 関根史織(Shiori Sekine : Base Ball Bear/Stico)

トニー:ワォ、このときのことを思い出させてくれてありがとう。このプレイヤーが君だったということだね! 素晴らしいパフォーマンスだったよ。

関根:ありがとうございます。このメッセージ動画を撮影されたのはご自宅ですか?

トニー:うん、これは僕のスタジオだね。

関根:とても素敵な場所ですね。

トニー:ありがとう。

関根:最後に、ベース・マガジンの読者に向けてメッセージをお願いできますか?

トニー:僕は常に何かを学んでいたい側だから、アドバイスを送るようなタイプじゃないんだけどね。でも音楽をプレイする人みんなに覚えておいてもらいたいのは、そのこと自体がとても“ラッキー”なことであるということ。プロフェッショナルとしてやれているのならもちろんのこと、それを趣味として楽しんでいる人にもぜひそう感じていてほしい。僕は人生においてこんなにも音楽をやれてきたことをとてもラッキーだったと思っているしね。もし最近音楽をプレイし始めた人がいたら、音楽を楽しみながらプレイしてもらいたいね。

関根: 素敵なメッセージありがとうございます。これからもトニーさんの演奏を楽しみにしています。

トニー: ありがとう。そして君の今後の幸運も祈っているよ、グッドラック!

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