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    【リード・ベース・ミーティング -Extra-】イガラシ(ヒトリエ )× 田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)

    • Interview:Koji Kano
    • Photo:Yoshika Horita

    自分に求められるプレイの道筋に沿っていくと、
    だんだん個性ができあがっていく。
    ━━田淵智也

    ――最後に決めるからこそ、ベースが動ける“隙間”を見つけられるのかなと思うのですが、いかがでしょう?

    田淵:確かにそうなるのかも。ただ、ベース・ラインを考えていくときに、こうしないとユニゾンっぽい、自分っぽいラインにならないっていうのはなんとなくあって。それを当てはめていくと、ルートが採用されることがあまりないっていう(笑)。

    イガラシ:なるほどね(笑)。

    田淵:だから“動きたがっている人”だと思われそうなんですけどね。サビとかでも一回グリスアップしてオクターヴ上に行ってまた戻ってくるっていう、僕が何十回も使ってる手があるんですけど、これを一回入れないとユニゾンのサビっぽくならないんですよ。アレなんなんでしょうね。どうしたらいいんでしょうか(笑)。

    イガラシ:いやーもう、これこそがシグネイチャ―・フレーズですよ。

    田淵:だからデモを作っているときでも、普通にルートを弾くと普通の曲に聴こえちゃうから、ベースは上に一回行っておこうみたいな感じになるというか。これは決してうしろ向きな理由じゃなくて……止むを得ずってことでもないんですけど、何か自然にそう考えるようになっちゃったんですよね。

    ――ヒトリエはシノダ(vo,g)さんがメインでありつつ、イガラシさんがコンポーザーを務めることもありますよね。自作曲と他作曲だとベース・ラインの組み立て方は変わりますか?

    イガラシ:そこで分けては考えていないんですけど、結果的には自分で作っている曲はベース・ラインがシンプルですね。作曲して満足しちゃってるだけかもしれませんけど。

    いがらし●サウンド・クリエイターとして活動していたwowaka(vo,g)を中心に、2011年にイガラシ、ゆーまお(d)とともに“ひとりアトリエ”を結成。その後、シノダ(g,cho)が加入し“ヒトリエ”となる。2014年にメジャー・デビュー。2019年にwowakaが他界してしまうが、現在は3ピース形態として活動中。2021年2月17日に3人体制初となるアルバム『REAMP』を発表した。2022年1月26日にはデジタル・シングル「ステレオジュブナイル」、5月25日にはTVアニメ『ダンス・ダンス・ダンスール』ED曲を担当するニュー・シングル「風、花」がリリースされる。イガラシはヒトリエのほかに[忘れらんねえよ]などのサポート活動も行なう。ピザが好き。
    https://www.hitorie.jp

    ――ヒトリエはボーカロイドで楽曲制作していたwowakaさんを中心に結成されたということで、ボカロの動き回るベース・ラインからの影響も少なからずあるのでしょうか?

    イガラシ:最初にwowakaがバンドをやりたいって僕に声をかけてくれてヒトリエは始まったんですけど、自分にも個性のあるプレイを求めてくれていたのかなって、今、思います。彼はすごく優しい人間なんですけど、音楽作りに関しては嫌なことは絶対曲げない人。でもベースが派手なフレーズを弾いたり、過剰に歪んでいたりするのを止められたことはないんです。

    田淵:いいですねー。最高だね!

    イガラシ:だからその点においてはwowakaも望んでくれていたのかなって思うし、だからこそ“もっとやってやろう”って感じでしたね。

    田淵:そうやって個性って作られていくよね。自分に求められているプレイの道筋に沿っていくと、だんだん個性ができあがっていく。

    イガラシ:うん。だからもっと喜んでほしいなっていう気持ちが湧いてくるし、そもそもメンバーが喜んでくれないと弾きまくることってできないですよね。

    田淵:わかる。本当にそう。

    ――メンバーが喜んでくれることの反対に、“弾きすぎだ”とメンバーから指摘されることもあるのでしょうか?

    イガラシ:アレンジの過程で“そこはちょっと”って言われた場合は、素直に受け入れます。

    田淵:僕のベース・プレイって、悪い意味で理論とか模範的なものに基づいていないので、ドラムのリズムに対して空白の作り方がおかしいとか、そういう指摘をされて微調整していくことはあります。こういうのって他人に言われないと気づかない部分だし、当の本人としてはあまり気にしていないポイントだと思うんですよ。だからドラマー的に叩いていて楽しいベース・ラインってあると思うし、そこを指摘してもらえれば喜んで直します。ただ、“弾きすぎだ”っていう指摘を受けることは僕はあまりないかな。

    ――具体的なフレーズメイク術も聞いていきたいのですが、フレーズを作る際に左手・右手のテクニック/ニュアンスで意識していることはありますか?

    田淵:イガラシくんを始め、どこの現場でも立ち回れるプレイヤーたちを見ていると、やっぱりピッキングって大事なんだなっていうのをすごく感じるし、それを自分はやってこなかったから完全に今ツケが回ってきてると思うんです。話を聞いていると、みんなピッキングに執着していた時期があるみたいで、どういう力加減でどういう角度でっていうのを説明してくれるんですけど、やっぱりそういうのが大事なんだと実感しますね。だから僕みたいになる前に正しいピッキングを早めに覚えたほうがいいと思います(笑)。感覚一発でやってきちゃったから。

    イガラシ:ピッキングももちろんですけど、僕は左手の弦を押さえる指に自分の全体重を乗せるイメージを大事にしています。例えば、いざグリスをしようって思ったときに、左手の指がしっかり押さえられていなくてビビっていたりすると、グリスがうまく鳴らない。だからいつでも滑れるようにしっかり押さえてあるって感じですね。動かすときも腕だけでやるんじゃなくて、身体全体でいったほうが“グイン”って勢いが出る気がするんです。だから右手も大事だし、それぞれのバランスだとは思うんですけど、自分はそれに備えて左手を準備しているイメージですね。

    田淵:(イガラシのフレットを押さえる指の形を見て)人差指の曲がり方に意味があるもん。それが全体重が指板に乗る曲がり方なんだね! めっちゃ勉強になった。

    イガラシ:まぁ実際には全体重は乗ってないんだけどね(笑)。

    たぶち・ともや●1985年4月26日生まれ、東京都出身。2004年に斎藤宏介(vo,g)、鈴木貴雄(d)とともにUNISON SQUARE GARDENを結成し、バンドのほとんどの楽曲の作詞作曲を行なう。2008年にメジャー・デビュー。2019年に結成15周年を迎え、トリビュート・アルバムやB面曲集などを展開。2020年9月には8thアルバム『Patrick Vegee』を発表、2022年4月13日には17thシングル「kaleido proud fiesta」をリリースした。バンド外の活動としてさまざまなアーティストへの楽曲提供およびベーシストとしての客演など、多方面で活躍するほか、ロック・バンドTHE KEBABS、音楽プロデュース・チームQ-MHzのメンバーとしても活動している。
    https://unison-s-g.com/

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