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    FEATURED BASSIST-日向秀和[Nothing’s Carved In Stone]

    • Photo:Ryotaro Kawashima
    • Interview:Koji Kano

    いろんな可能性をメンバーとかリスナーさんたちに提示したいんですよね。

    ――ひなっちさん作曲の「Wonderer」のベース・ラインはイントロ〜Aメロのリフはドラムのキックに合わせたシンプルなものかと思いきや、ウラにオクターヴを当て込んでますね。こういうところがひなっちさんらしいなと。

     これはヒップホップのサンプリング素材みたいな音にメロディで抑揚をつけてく感じにしたかったので、ベースだけで全部完結できるようなベース・ラインを意識しましたね。キックに合わせた“ドッドッド”っていう音とノリだけでテンションを上げるというか。ア・ライター・シェイド・オブ・ブラウンっていうメキシカンのヒップホップ・ユニットがいるんですけど、彼らみたいなグルーヴを意識したフレーズ感になってますね。

    ――音作りも特徴的で、歪みがありつつ温かみのあるサウンドになってますね。

     これ実はエフェクターは使ってなくて、RED(ESP製“RED 極” Hinatch Custom)だけで音を作ってるんです。エフェクターは落ちサビでフィルターをかけたぐらいですね。あとはほぼ生音。モチっとしたサウンドの正体はあのベースです。

    「Wonderer」Official Music Video

    ――「Recall」は各パートで異なるリフを組み合わせたベース・ラインの構成になってますね。

     この曲はウブ(生形真一/g)のアイディアからできたんですけど、Aメロがすべてだなって思ったんです。ナッシングス特有の16ビートにベースをどう乗せるかが決め手になるなと思って、ハネるベースというか、70年代後半のR&Bのサウンドやノリをサンプルしたようなベースを弾きたかったんです。

    ――70年代後半のR&Bといえば、ひなっちさんのルーツのひとつですもんね。

     そうだね。“完全にミュートしてピックで弾いちゃってるなこの黒人”みたいなニュアンスを入れたかった(笑)。ただサビでは雰囲気をガラリと変えて、スケール感を出して塗りたくって世界観を包み込むようなアレンジを意識しました。

    ――「Impermanence」は今作でも特に音数が多く複雑なアンサンブルになっていて、展開の移り変わりも激しくて本作でも異彩を放ってますね。

     これびっくりしょ!? 今の流行ってる音楽って、めっちゃとっ散らかってるけど統一感があるっていうか、それがおもしろいじゃないですか。ゲームを攻略していくかのような展開の変わり方というか、そういう感じを出したかったんですよ。だけど統一性がありつつ一貫したグルーヴに包まれてて、ロックとしても聴こえるし、ロックじゃないと思えばロックじゃない、みたいなところに落としどころを持っていきたかったんです。

    ――イントロからAメロ前半まではシンベでの白玉が続きますね。

     もうね、ここはずっと我慢してる。音作りとしてはFuture Impact(ベース・シンセ)に加えてオクターバーで下の音を鳴らしてます。だから同期っぽい聴こえ方になってるかもしれませんね。

    ――Aメロ後半からはシンベの上にウラ拍のスラップ・リフが入ってきますが、ドラムとのアンサンブルはすごいことになってますね(笑)。

     オニィ(大喜多崇規/d)が仕かけたドラム叩くからね(笑)。これはもうドラムにニュアンスを寄せちゃおうと思って、普通の人が弾かないようなニュアンスのスラップを入れてます。だからオニィはすごいよ。こういうリズムだとマジになるからね。だからそういうものが100%出てるアレンジになってると思います。ただ2番のAメロはひなっちっぽく変えてて、いろんなものを見せたくなっちゃうというか、いろんな可能性をメンバーとかリスナーさんたちに提示したいんですよね。

    ――一気に転調するサビでは、動きを出しつつコード感を残したフレージングに移行してますね。

     そうですね。これはスラップのハネ感とコードを支えるっていうふたつの部分でのせめぎ合いの一番いいところを狙ったんですよ。そういうのをいかにオシャレに聴かせていくかっていうのがアレンジのせめぎ合いだし、これ弾きまくっちゃたらダサいなとか、逆に弾いたほうがカッコいいでしょ、みたいなものをずっと考えてるんです。だからラインをあとで聴いてみて、これ弾きすぎだなって思ったらシンプルにしたりとか、そういう曲に応じた展開は心がけています。

    ――なるほど。サビあとのリフはおもしろい音の伸ばし方ですよね。

     ここはオクターバーでドラムのビートに対して忠実にアプローチしてます。今作は全体を通してオクターバーがキモかも。最近はセッションでもすぐオクターバー踏んでるからね。どうしてもどっかで黒人っぽさを出したくなっちゃうんですよね(笑)。

    ――Cメロに入ってからは、かなり細かくゴーストノートを入れていて、ここでも黒人ぽさが表現されてますね。

     うん。個人的にこういうところが一番大事だと思ってて。あれをやるのとやらないとでは全然違うし、スチュアート・ゼンダーとかファンクの人ってゴーストがすごいじゃん? やっぱりああいうプレイが大事だし、ゴーストの細かい音が入るだけで全然グルーヴが違ってくるのでそこは意識する部分ですね。

    ――そのあとのギター・ソロではプルが際立った16分4連のスラップに転換してますね。ベース・ラインの組み立てがスリリングです(笑)。

     そうでしょ? もはや2Aでのスラップは何だったんだ、っていう(笑)。ここはみんなが踊れるようなポイントが欲しかったというか、「Out of Control」でやってるニュアンスをここでも出したかったっていう狙いかな。だから目指せ「Out of Control」と思ってたし、“もう一回背伸びしてアンセム作らなきゃ”みたいな意識もあったんですよね。 

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