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    【ベースの日!特別企画】9人のプロ・ドラマーが選ぶ 今、私が組みたいベーシスト

    • Photo:Great The Kabukicho(MonoNeon),Yuka Yamaji(Tom Kennedy)

    川口千里

    PROFILE
    かわぐち・せんり●5歳でドラムを始め、8歳から菅沼孝三に師事。2013年に16歳で1stアルバム『A LA MODE』をリリース。2016年には『CIDER 〜Hard & Sweet〜』でメジャー・デビュー。スティーヴ・ガッド、デヴィッド・サンボーンらレジェンドらとの共演を重ねる。プロ・ドラマーとして、海外のドラム雑誌で表紙を飾るなど、世界を股にかけ活躍している。
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    Q1:あなたにとって、“良いベーシスト”の条件とは?

     私が“良いベーシストだ!”と感じる条件は意外とシンプルで、“⼀緒にやっていて「楽しい」と感じるかどうか”です。下記の質問で答えたような演奏技術・センスはもちろん、その⼈の⼈柄とかも影響してくると思います。⾳楽って、“つながり”があってこそ成り⽴つものですから、意外と⼤事な要素だったりするんですよね。

    Q2:“良いベーシスト”が共通して備えている演奏技術はなんだと思いますか?

     まずは、共演者の⾳を拾って反応することができる“センサー”がしっかり鍛えられている⽅が多いと思います。⾃分の演奏ばかりに集中するのではなく、その⽇限りの展開に敏感に反応し、それに合った演奏を出⼒できるベーシストとご⼀緒できると、私⾃⾝も“次はこれをやってみようかな、これをやるとどう返ってくるのかな”といろいろインスピレーションが湧いて“楽しい”です。
     あとは、“基礎知識・情報”がしっかりあるベーシストは、私も安⼼して演奏できます。⾳楽理論とかそういう机上のものだけではなくて、例えば本番当⽇に譜⾯だけを資料として渡されたりしたときに、“この曲は○○なイメージで”というような情報から、いかに作曲者・アレンジャーのイメージに即座に応えられるかが試されます。なので、初⾒の対応が迅速な⽅は、楽曲のビジョンを明確にしやすくて、本当に助かります。

    Q3:逆に“こういうベーシストは苦手だなぁ”と思うのは、どんな場合ですか?

     ほかの楽器の⾳を聴かない⽅は少し苦⼿です。こちらが寄り添う以外の選択肢がなくなってしまうので、ちょっと疲れてしまいます。
     そして上記のように、⼈柄も正直影響してきます。⽇常からコミュニケーションが取りやすい⽅は、演奏上のコミュニケーションも取りやすかったりします。正直に⾔ってしまいますと、世界・⽇本トップベーシストとして活躍されるような⽅のなかで、“⼈柄がちょっと……”という⽅はほとんどいないです。

    Q4:これまで共演したことのない人で、今、あなたが一緒に演奏したいベーシストは誰ですか?

     トム・ケネディさんです。実は、私が⾼校⽣のときから少しやりとりをさせていただけたりしています。ライヴも何度か観に⾏かせてもらって、本当に毎度毎度、トムさんの豊かなベースには感動しています。社交辞令かもしれませんが(苦笑)、トムさんのほうからも前から“何か⼀緒に演奏できると良いね!”というお声がけをいただいていたりもするので、彼との共演は私にとっての⻑年の⽬標です。

    トム・ケネディ
     1960年8月21日生まれ、アメリカ・ミズーリ州出身。トランペット奏者の父を持ち、9歳の頃に兄がアップライト・ベースを持ち帰ったことをきっかけにベースを弾き始める。演奏の腕はめきめきと上達し、10代のうちにソニー・スティット(tp)、バーニー・ケッセル(g)、フレディ・ハバード(tp)といった数々のジャズ・プレイヤーとともに演奏する。ウッド・ベースとエレキ・ベースの両方を操り、ジャズやフュージョンをメインに活動。1984年に拠点をニューヨークに移し、デイヴ・ウェックル(d)のプロジェクトなどに参加。特に東海岸のジャズ・アーティストからラブ・コールを受ける。近年では、デイヴ・ウェックルのプロジェクトやマイク・スターン(g)のバック・バンドとして来日公演を行なった。

    Q5:そのベーシストが演奏している楽曲でお気に入りの曲を教えてください。

    「ホワット・ハップンド・トゥ・マイ・グッド・シューズ」/デイヴ・ウェックル・アコースティック・バンド

    『オブ・ザ・セイム・マインド』収録/2015年

     トムさんの⽣演奏は、エレキ・ベースとウッド・ベースの両⽅を聴いたことがあるのですが、私は特にウッドの演奏が、軽やかに歌うようで、かつ遊び⼼が溢れた豊かなプレイ・スタイルが⼤好きです。デイヴ・ウェックルさんとの息のあったバッキングはもちろん聴きどころですが、後半にあるウッドでのベース・ソロを是⾮皆さんに聴いてもらいたいです。

    Q6:そのベーシストとふたりで演奏した場合、どういったグルーヴが生まれると思いますか?

     良い意味で“お茶⽬”な演奏になると良いですね……! 私はなかなかデイヴ(ウェックル/d)さんみたいなタイトなドラミングはまだまだ出来ないので(苦笑)、もし共演できるとしたらやはり“遊び⼼”の部分で勝負したいです。お互いのソロのバッキングでの茶々⼊れ・合いの⼿⼊れとか、とても楽しそうですよね! やはりウッドで共演するとなると、スウィングの楽曲がやりたいので、その⽇に備えてますますスウィングでのグルーヴ・アプローチを鍛えたいところです……。

    Q7:あなたが理想的だと思うリズム体の演奏が聴ける作品を教えてください。

    『Suntan』(イン・トリオ)/ミシェル・カミロ

    1986年

     何度かお気に⼊りのアルバムのひとつとして挙げさせていただいたことがあるんですが、ミシェル・カミロさんのピアノ・トリオのアルバム、『Suntan』(『イン・トリオ』)でのリズム体が好きです。ピアノ・トリオという⾃由度満載な⼀⽅で、それぞれの演奏技術やセンスが露⾻に楽曲に出てしまう編成のなかでのピアノ・ソロ中のバッキング……とにかく強烈です。アンソニー・ジャクソンさんと、デイヴ・ウェックルさんの絡みが、⾳数は多めなんですが、ピアノ・ソロのフレーズをガッツリとあと押ししていて、スピード感がさらに増すような緊張感あるものになっていて、とても痺れます。

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