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INTERVIEW – 高松浩史[Petit Brabancon]
- Interview:Fuyu-Shogun
- Photo(Live):Kazuro Aoki,Yuki Kawamoto,Takao Ogatata
- Photo(Bass):Hiroki Obara
今回は“もっとローを出してくれ”っていうオーダーが全曲にありました。
——「BATMAN」や「眼光」はミヤさんの楽曲です。先ほどミヤさん曲は“邦楽っぽい”とおっしゃっていましたが、そのへんの切り替えみたいなところもあったりしますか?
作曲者ごとに気持ちを切り替えるという意識はないです。単純にテイストが違う曲だからっていうところですね。
——yukihiroさんの曲は「a humble border」のインダストリアル感や、過去曲においてもニュー・ウェイヴ・テイストだったり、打ち込みがあったりと、Petit Brabanconのなかでも毛色の違う楽曲が多いですが、取り組み方は変わりますか?
yukihiroさんは世界観も含めて、けっこうストイックな曲が多いので、ちょっと機械的に演奏しようかなと思うことが多いです。無機質とまではいかないんですけど、あまり表情が出ないようにしようかなとか。逆に、こういうところだけはちょっと細かいニュアンスを入れてみようかなとか、そういう遊びというか、違う方向からのアプローチの仕方は多いですね。
——高松さん自身、5弦ベースをPetit Brabanconで初めて手にしたというくらい、ヘヴィ・ミュージックは通ってきてなかったわけですが。The Novembersと比較すると、音楽ジャンルもプレイスタイルも、ベーシストとしての概念もまったく違うと思いますが、そこに関しての頭の切り替えはどうされていますか?
特に切り替えとかは意識していないですね。でも、例えば“Petit Brabanconのレコーディングをします”となったときに、準備段階で“そういえばPetit Brabanconって、こういう感じにしないとダメなんだよな”みたいに、そう考えるんですよね。まったく別のプロジェクトだし、4弦と5弦、ベースとはいえ、別の楽器を演奏するという気持ちでいるので、そこまで混乱したりとかそういうことはないですね。
——ピッキングひとつ取ってみても、Petit BrabanconとThe Novembersでは、強弱の付け方やニュアンスの付け方も全然違いますよね。
違いますね。弾き方というか、やっぱりPetit Brabanconは、より考えてピッキングしたりとか、そういうところが多かったりするので。バンド・アンサンブルも、ギターもドラムも、いろんなものが全然違いますからね。そういう意味では、毎回新鮮なので楽しいですけどね。
——そういうところを含めて、今回レコーディングで一番こだわったところ、苦労したところはどこでしょうか?
音作りは、自分のなかである意味挑戦でした。前作まではしっかり歪ませることが多かったんですけど、今回はそこまで歪み量が多くないんですよ。ライヴを含めて、Petit Brabanconとして活動してきて思ったことだったり、いろんなアーティストの音源を聴いてみると、ベースって、意外とそんなに歪んでないんだなってことがわかったり。今回それでやってみて、やっぱりそこまで歪ませないほうがベースはいいんだなと思ったので、それは挑戦してみてよかったなと思います。
——歪みを抑えたおかげなのか、全体的にベースが前に出ている印象を受けました。ギターとのユニゾンでもベースがグッと前に聴こえてきます。
ローの存在感みたいなものが確かに出てますよね。
——レコーディング中に歪みを減らそうと思ったのか、そもそも歪みを減らそうという心持ちでレコーディングに臨んだのですか?
最初から歪みを減らそうと思ってました。
——ラインで録って、あとからリアンプするのがPetit Brabanconでのレコーディングの基本になっているわけですよね?
そうです。音作り的にはバンド・アンサンブルのドラムとギターが完成した状態で、最後にベースを当てはめていく。演奏的にはドラムの次にベースがあって、いわゆるリズム体が先にはあるんですけど。
——意外と珍しいですよね、ギターのあとにベース・サウンドを作るというのは。
そうですね。僕のほかのプロジェクトだと、そもそもアンプを鳴らさないことが多いので。ラインだけで音作りは終わり、っていう感じなので、リアンプすること自体が僕にとってはすごく珍しいことなんです。
——そこはバンドとしての全体の音域的なバランスを見ながら、足りないところをベースで補っていくという形ですか?
基本的に作曲者の方に立ち会っていただいているので、ご意見をうかがいながら。今回は“もっとローを出してくれ”っていうオーダーが全曲にありました。だからけっこうローを上げています。ただ僕の持っていったキャビネットがそこまでローが出るタイプではないので、次からどうしようかなと考えていいます。
——キャビネットどんなモデルを使ったのですか?
バグエンドの12インチ一発のモデルです。小さめなんですけど、そのぶん音の芯が出ていいかなと思ったんです。その代わりにちょっと極低域が薄いというか、やっぱり限界があるので、次は違うキャビを使おうかなと今から考えています。ヘッドはずっと使っているギャリエン・クルーガーのFusion 550を使いました。
——エフェクト・ボードは今回のレコーディング用に組まれたと聞きました。
そうです。まずコンプ(BECOS製CompIQ STELLA Pro Compressor)に入って、ブレンダー(Unbrella company製Fusion Blender)でクリーンと歪みを分けてあるんです。それをミックスしてバランスを取っていてく形です。サンズアンプ(TECH21製SANSAMP BASS DRIVER DI)が2台とソニックストンプ(BBE製Sonic Stomp MS92)がクリーン側、残りの3台が歪み側。サンズアンプは最近のものと昔のもので特性がけっこう違うので、2台分けて使ってます。
——歪み側の、Papa Goriot Studios製のADVENT/MONOLITH.、RODENTというディストーション・ペタルは高松さんが監修しているモデルですね。
はい、一応持っていったんですけど、今回はあまり使ってないですね。基本的にはダークグラス(Darkglass Electronics製Microtubes B7K Ultra V2)で歪ませています。あとは馴染ませる程度に。
——ベーシックな部分はこのボードで作ってるわけですね。それで楽曲ごとに細かく調整していくと。
はい。基本、アンプはいじらずに。アンプは最後に調整する感じです。
——今回歪みを減らす方向だったとはいえ、やはり一番こだわっているのは歪みなんですよね?
そうですね。特に5弦だと歪みの相性が悪いとただ潰れちゃうだけになってしまうので。いい塩梅のものを選ぶようにはしてます。
——高松さんが監修されてるペダルも、そのへんのこだわりが詰まっているのですか?
もともとのキャラクターがすごく良かったので、僕が使うんだったらこうしたいなっていうところですね。基本的なものがあって、“これをこうしたら、めちゃくちゃ良くなりそう”という可能性を僕が見出して、それをもとに作っていただく、みたいなことが多いですね。
——ベース・マガジンWebで連載されている『高松浩史の音色探索 その箱の中は地獄より深い』でもエフェクター・フリークっぷりを発揮されていますが、特にボスのODB-3の回がとても興味深かったです。高松さんが歪みペダルに一番求めてるものってなんですか?
極力オン/オフで違和感がないものというか、バランスが崩れすぎないものが好みですね。歪むけど音が細くなっちゃうものもありますし。そういうものって、クリーン・ミックスとかで何とかしてね、っていう機種が多いんですけど、僕はクリーン・ミックス、いわゆる原音と混ぜること自体があまり好みではないというか。だったらもとから良い音にしてよ、と思っています。音の補助としてのミックスではなく、音作りの一環としてのクリーン・ミックスだったらいいんですけど。
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