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Interview – 奥野翔太[WEAVER]

  • Interview:Tomoya Zama

ラスト・アルバムに込められた
ベーシストとしての真骨頂

3ピース・ピアノ・ロック・バンドとしてスマッシュ・ヒットを飛ばし、その確固たる地位を築き上げたWEAVERが、2023年2月にメジャー・デビューから13年、バンドとしては18年に及ぶ活動に終止符を打つことを発表した。10月21日にリリースされるラスト・アルバム『WEAVER』は、これまでの活動のすべてを詰め込み、WEAVERの物語を締めくくる最高傑作とも言える一枚だ。12曲中、7曲の作曲を担当した奥野翔太は“こうあるべき”という考えを取り除き、“自分が本当に良いと思うものを理想の形にするまで作り込んだ”と語る。ここでは10月19日発売の本誌2022年11月号に登場する奥野の、本誌とは別内容のインタビューをお届けしよう。

ちょっとした出会いのひとつひとつが、
奥野翔太としての道を作ってくれた。

━━解散発表が2022年4月にありましたが、この話が決まったのはいつ頃なのでしょうか?

 2021年末ぐらいにメンバーでそういう話が出てきて、お互い思ってることを話していくなかで、会社やレーベル、プロダクションも含めていろいろ話し合って、決めたのは2022年の1月、2月ぐらいだったと思います。

━━HPのコメントでもありましたが、コロナによる影響も大きかったのでしょうか。

 直接的な原因ではないんです。ただ、バンドが続けられる根底になるもの、バンドの原動力になるもののひとつって、ライヴでのファンとのリアルなコミュニケーションなんですよ。それがこの2、3年、バンドとしてできなかったっていうのは、フラストレーションにもつながっていたと思うので、そういう意味ではコロナ禍の影響は少なからずあったと思いますね。

━━これまでのバンドとしての年月を振り返るといかがでしょうか?

 18年間バンドを続けてきて、必然的にここまで来れたという実感はまったくないんです。本当にちょっとした出会いで、運命が変わっていったなと感じています。地元のライヴハウスでお世話になってるオーナーの南田さんに出会ったから、ピアノ・バンドに変わったこと。オーディションで準グランプリまで行って、いろいろ目にかけてくれた人がいたこと。アミューズだったりA-Sketchの人たちとつながれたこと。ちょっとした選択肢を違うほうに行っていたら、ミュージシャンなんかやってなかったかもしれないです。そのひとつひとつが今のWEAVERとしての、奥野翔太としての道を作ってくれたと改めて強く感じます。

左から、奥野、杉本雄治(p,vo)、河邉徹(d)。
『WEAVER』
A-Sketch/AZZS-128(通常盤)

━━“WEAVER”らしさを迷う時期もあったそうですね。

 稀有なバンド編成だし、留学もそうだけど、右往左往して、そのときは本当にこの道が正しいのか、今になっても正しかったのかどうかなんてわからないですけど、いろいろなことを経験したからこそ、今ミュージシャンとしてできることが幅広くなったと思う。それは僕にとって、WEAVERにとっての自信につながっていて、今までのキャリアの多様性にもつながったと思いますね。

━━今作はいつ頃から制作を始めたのでしょうか?

 アルバムを作ろうという話自体は2020年ぐらいから始まって、2021年の10月ぐらいにリリースをする目標で動いていたんです。今回収録されている楽曲のなかでも、2021年の頭とかにできあがっていたものもあるんです。そこからいろんなことがあって、歌詞が変わったり、アレンジの細かいところ詰めていったりしました。そういう意味では、もうこの2、3年をかけて作ったアルバムかな。

━━「33番線」ではシンベが使われていますが、なぜシンベを採用したのでしょうか?

 何か新しさを取り入れるっていう考え方で制作しているときに、たまたまシンベを手に入れていろいろといじっていたんです。そのなかで“このリズムに合わせて弾いたらどんな感じになるだろう”っていうのを遊びでやっていたら、すごくカッコいいフレーズができたので、そのまま採用しました。

━━挑戦と遊びのなかで見つけた使い方だったんですね。

 そうですね。今までもシンベは使ってきたんですが、遊び心で入れるというよりは、低音を支えるために必要な音だからっていう使い方だったんです。でも、今回はシンベだけではなく、ほかのエレキ・ベースのフレーズとかも、できるだけ自分から弾いて生まれたフレーズだったり、プレイアブルなものをすごく意識したんです。だから今回、ベーシストならではの発想で出てきたフレーズがこの曲に詰められたかなって思っています。

「33番線」、「それでいいから」で使用したmoog製Subsequent 37。“低い帯域でしっかり支えるときに使用している”とのこと。

━━1番ではスラップがフックとして使われていますが、2番ではリフとしてプレイしていますね。

 これは、コードとリズムとメロディだけ決まった状態で曲をかけて、本当に自由に、曲の流れに身を任せてベースを弾いて、自然とできたって感じですね。

━━「それでいいから」ではシンベを使っていて、2番からベース・インしますね。

 当初、杉本(雄治/p,vo)の弾き語りの曲を作りたいと考えていたんです。なので、2番からメンバーが増える映像が見えないような、それこそ打ち込みでループするドラムをまず作って、低音を支えるという意味だけのベースを入れたいっていう意味でシンベにしたんです。

━━最後のだんだんと上がっていくフレーズは、8分の刻みから16分に変わるところがメロディアスで、曲としての盛り上がりが表現されていますよね。

 そうですね。ここはグッと高揚感を煽りたいところでした。そこもシンベをリアル・タイムで弾きながらフレージングしていって、自然に出てきたフレーズを採用しました。

━━「On Your Side」では、2番のBメロなどメロディアスなベース・ラインが随所にありますよね。この曲は杉本さんの作曲ですが、ベース・ラインの作り方はどのように行なったのでしょうか。

 基本的に杉本が作る曲に関しては、できあがったものをProToolsのセッション・データで送ってもらいます。そこで“これにベースを本Recで入れてみて。フレージングは好きなもので任せるから”と言われて弾いた感じですね。生かしてほしいんだろうなというポイントと、わりとラフに作っているんだなっていうラインがよくわかるようになってきたんで、守ってほしいんだろうなってところは守りつつ、遊べるところは遊んでという作り方でした。

━━サビの刻みは、1番では4分で伸ばしていますが、2サビの後半からは8分になりますね。こういったノリの変化も意識したところでしょうか?

 デモでは1番も2番もずっと8分で弾いてたんですけど、あのリズムのなかで実際に弾いてみたときに、“最初は4分で弾きたくなっちゃうな”っていうのが感覚としてあったんです。バンド全員で4分で“ガンガンガンガン”っていくカッコよさって絶対あると思ったので。打ち込みだったら多分意識していなかった部分だと思います。ProToolsを使って自分で弾いてみて、4分のほうが気持ちいいなってなったんで、そこは“こっちがいいと思うけど”って杉本に提案して採用されたんですよ。弾いてわかるというか、音楽って自分の体からリズムやグルーヴが出てきたときに一番良いものが出ると思うんで、本当に音楽に乗って、自分から出てきたフレーズっていうのを信じることは大事だと思います。

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