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INTERVIEW – YUKKE [MUCC]

  • Interview:Kengo Nakamura
  • Photo:Susie

体制変更を経て生まれた25年目の新世界

今年、結成25周年を迎えたロック・バンド、MUCC。昨年、結成以来のドラマーが脱退し、サポート・ドラマーを擁する新体制へと移行した彼らが、2年ぶりとなるオリジナル・アルバム『新世界』をリリースした。これまで、日本人らしいメロディ感を、ヘヴィロックを軸にフォーク、ファンク、ジャズ、エレクトロ、ダンス・ミュージックとさまざまな音楽要素で昇華してきたMUCCだけに、本作でも振り幅の広い楽曲を聴かせるが、その濃度はより深みを増している。今回は全曲でアナログ・テープを用いたレコーディングを敢行するなど挑戦を続けるMUCCにおいて、ベーシストのYUKKEはリズム体の相棒交代という大事件を受け、どのようにその“新世界”へと向き合ったのだろうか。今の率直な気持ちを聞いた。

勝手にフレーズを想像して、
その人の頭のなかでは同じフレーズが2回来るだろうなって。

━━まず、ドラマーのSATOちさんの脱退が決まったあと、実際に最後のライヴが行なわれるまでにはコロナ禍ということもあり、延期を重ねたことで当初の想定以上の期間がありましたよね(編註:2020年12月に脱退を発表。当初は2021年春が最後のライヴとされていたが、在籍最後のライヴは2021年10月に行なわれた)。結果、新体制への移行の準備も並行して進めることになったんですよね?

 そうですね。SATOちとの最後のライヴが延期延期になったんですけど、次の活動はもう決まっていたから、サポート・ドラムのAllenとのリハーサルも並行してやっていて。今日はSATOちとリハ、明日はAllenとっていう状況でしたね。ただ、本当だったら自分って、“脱退”ってことに対してもっとネガティブになるタイプだと思っていたんです。それが、これくらいやることが詰まっていたことで、いろいろ自分の気持ち的には紛らわせることができたし、このMUCCの活動のペースに自分も背中を押してもらえていた気はしますね。延期延期になっちゃった分、SATOちに対しても、最後はポジティブに送り出してあげられる自分で一緒にライヴがやれたので、それが唯一良かったというか。

━━サポート・ドラマーの選定は、どのような経緯だったんですか?

 もともとリーダー(ミヤ/g)とはセッションでライヴをやったりしていたみたいですね。Allenのほかにも数人、ほかのドラマーとも合わさせてもらったんですけど、そのなかで自分としても一番肌が合ったというか。その感覚がメンバー3人で一緒だったんです。

━━YUKKEさん自身は、これまでSATOちさん以外のドラマーと演奏する機会って、そんなに多くはなかった?

 そんなになかったし、セッション・ライヴでほかのドラマーとやることはあるにしても、そのときって自分のバンド以外の曲をやることが多いじゃないですか。だから、“ここでこういう感じで出してくるんだな”というのが、客観的におもしろいはおもしろいんです。でも、自分たちの曲をほかのドラマーと真剣に合わせることって、あんまりないと思うんですね。その辺がすごくおもしろかったですね。新発見というか。“SATOち以外のドラマーとやると、MUCCの曲ってこうなるんだ”って。最初は内心ドキドキしていましたけどね(笑)。

━━新体制最初の音源が、新作アルバム『新世界』にも収録されている「GONER」と「WORLD」(2021年11月に両A面シングルとしてリリース)でしたが、そのレコーディングはどのような気持ちで取り組んだのですか?

 Allenは後輩なわけだし、とにかくカッコいいところを見せなきゃなっていうのは、俺はめちゃくちゃありました(笑)。

━━ナメられちゃいけないと(笑)。

 そう、MUCCのレコーディングをずっとやってきているから、お兄ちゃんなところを見せようと。

━━ということは、逆に、今までにない変なプレッシャーがあったと。

 すごくありました。レコーディングのベーシックは楽器の3人で“せえの”で録るので、演奏が終わって、リーダーから“YUKKE、あそこのプレイよかった”って言われたら、“おい、今の聞いたか、Allen?”って(笑)。カラ回っているわけではないけど、とにかくそういう気持ちはあったかな。俺はほかのドラマーとレコーディングをするっていうことも、これまでにそんなになかったし、いろんなことが初めてな感じがしていましたね。

左から、YUKKE、逹瑯(vo)、ミヤ(g)。
『新世界』
朱/MSHN-159〜60(特別書籍特装盤(朱ゥノ吐+会員限定生産盤 )/特別書籍特装盤三大特典付き)
朱/MSHN-161〜2(初回限定盤/CD+Blu-ray)
朱/MSHN-163(通常盤/CD only)

━━「GONER」のサビ後の語り部分は、ルートのロング・トーンからポジションを上げた部分での2回しのフレーズに移行しますが、ベースがメロディアスに大きく動く部分は1回目だけで2回目はその動く部分を端折っていますよね。単純な繰り返しのフレーズではないのが印象的でした。

 そうなんですよ! よかった、気づいてもらえた〜(笑)。ここは変化をつけたかった部分で。普通に聴いていたら、“同じフレーズを2回繰り返すんだろうな”って、たぶん脳は考えると思うんですけど、あえて実際にはそこのフレーズを弾かないことで、その人の頭に委ねているんです。勝手にフレーズを想像して、その人の頭のなかでは同じフレーズが2回来るだろうなって。

━━おっしゃるように1回目のフレーズがすごく印象的なので、2回し目では自然と頭のなかでベース・フレーズを繰り返していましたね。そして一方の「WORLD」は、サビ冒頭からのベースの大きな動きが耳に残りました。

 「GONER」と「WORLD」はタイプの違う曲だったので、ベース的にも対比というか、違うところを見せられたらなっていう気持ちがありました。「GONER」は自分としては洋楽テイストで考えていたんですけど、「WORLD」は日本の歌謡曲じゃないけど、サビでめちゃめちゃベースが動くような曲にしたくて。サザンオールスターズの「TSUNAMI」とかのベースがすごく好きで、そういうのをやってみたいなと。サビに入った瞬間にベースで引っ張っていけたらなっていうのはありましたけど、ライヴでコーラスしながらこのフレーズを弾くのは大変だなと思ってます(笑)。

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