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INTERVIEW – KOHEI[COLLAPSE]
- Interview:Koji Kano
全部の楽器の音が塊になることを
悪いことだとは思っていない。
――なるほど。例えば今作で言うと「RIP」は比較的腰高な中音域でのベース・プレイですが、音が太く抜けてきています。これはプレイ・スタイルの変化に起因する部分なのでしょうか?
この曲は2弦をメインに弾いているので、確かに音が高めになっていますね。まさにこの曲は逆アングルで弾いているんですけど、もともと埋もれていた音に音量と抜けがすごく出たことで、腰高ではあるけど太めなサウンドにできたと思います。
――Aメロでは高音弦のニュアンスが際立ったリフが耳に刺さります。今作でも特にベースの映える箇所になりますよね。
ここはもともと違うフレーズを入れていたんですけど、プロデューサーのハタ(ユウスケ/cruyff in the bedroomのvo,g)さんに“ヴォーカルのメロディと同じところを弾いているからフレーズを変えてくれ”と言われて。もとのフレーズで10年近くやっているので今作でも特に苦戦した部分でした(笑)。4パターンくらい作って、OKが出たのがコレだったんです。縦ノリまではいかないけどリズミカルに、ほかの曲とは違う感じのノリ方を意識しました。
――この曲のベース・サウンドはドンシャリ方向に歪んでいますね。今作でも特にギターが分厚く攻撃的なサウンドになっていますが、そことの兼ね合いも計算したのでしょうか?
確かにドンシャリ気味に作っていますね。個人的に全部の楽器の音が塊になることを悪いことだと思っていないので、ギターとのバランスを取りつつ音作りしていきました。もともとはミュージックマンのスティングレイを使っていたんですけど、スティングレイはハイが目立っちゃうのが悩みで。グレコのモデルをメイン器にしてからは、アンプはわりとフラットで、ロー・ミッドを少しカットするイメージで音を作っていて、音作りはシンプルになっ……てはいないですね(笑)。
――KOHEIさんのエフェクター・ボードは巨大ですからね(笑)。基本となる音はどのように作っているのですか?
まずBeyondのTube Buffer+(バッファー)を通します。これを通すことで真空管味が一気に出るんです。そのあとにapiのTranZformer CMP(コンプレッサー)、サンズアンプ・ベース・ドライバーDI V2(プリアンプ)を経由して、Soul Power InstrumentsがモディファイしたMXRの10 bandEQ mod.(イコライザー)で4kHzあたりを少しカット。そのあとTRIALのPALmixer light(ブレンダー)でSoul Power Instrumentsでマスター・ヴォリュームを取り付けてもらったダークグラスのAlpha・Omicron(ディストーション)とEarthQuaker Devices のTone Job(イコライザー/ブースター)の音と混ぜて出力しています。基本的にはこの音がメインですね。
――なるほど……(笑)。曲によってエフェクターの切り替えもするのでしょうか?
曲によってはリヴァーブとかコーラスの空間系をかけたりしますけど、基本的にはこの音で完結しています。最後にapiのTranZformer LX(イコライザー/コンプレッサー)のコンプはかけずにトーンで全体をトリートメントしていて、この音が全体のほぼ9割かな。
――多種多様なペダルがありますが、音作りの基盤となるエフェクターはどれになるのでしょうか?
サンズアンプ・ベース・ドライバーDI V2ですね。ただ、今気になっているモデルもあるので変えるかもしれませんけど。V1も試したんですけど、うしろで歪ませるにはちょっとドライブ感が強いんですよね。だから大元としてはV2で作った原音をいかに殺さずにディストーションに近い歪みを足すか、という意識で音作りしています。
――ベース・サウンドで言うと「SYRUP」はほかと少し違って、芯のあるミドルに寄った歪みに感じます。この曲はハードコア的にギターが歪んでいますが、そことのバランスも考慮したのでしょうか?
この曲は僕が初めて作った、まだ右も左もわからなかった頃の曲。ベース・ラインとしては、わりとシンプルにルートを弾きつつ、ユニゾンも取り入れて、全体に厚みを出しています。音作りはそのとおりちょっとミドルを強めに歪ませつつ、ギターよりもベースが真んなかにくるイメージでミックスしてもらっています。
――“厚みを作る”という面だと「BIRTHLIGHT」「DROWN」のように、“音数を絞って太いロング・トーンで楽曲に奥行きを出す”という側面もKOHEIさんのプレイからは伝わってきます。
やっぱり音数が少なければ少ないほど奥行きが出るし、特に低域を出したいときは8分で弾くよりも4分で弾いたほうがよりロー感が出るので、そういったプレイの使い分けは意識してベース・ラインを考えています。
――シューゲイザーの場合、ギターによる轟音の壁があるので、ベースのロング・サステインはしっかり音を作り込まないとギターに喰われる可能性もありますよね。そこに対しての工夫もありますか?
勝つとか負けるとかって意識はないけど、喰われたとしても一個の塊になるので、それはそれで不正解じゃない気もしていて。「DROWN」はライヴだと、OKKOのBLACK BEASTっていうギター用のディストーションをかましていて、芯を出すというよりは全体にディストーションをかけているイメージ。だから狙ってその“塊感”を出すこともありますね。
――ベースの存在感を絶対出さなきゃいけない、ということではないと。
曲によってって感じですね。例えば「BIRTHLIGHT」だと、ギターが後半まであまり歪んでいなくて、最後にギターがドンとくる展開なんですけど、そこまでの最低限の曲の重さや緊張感はベースで担保していると思っていて。あと僕はピック弾きなので、ゴリッとしたハイの部分をギリギリまで出さない工夫もしています。ピック弾きのトレブリーな部分を曲と調和させるのにはめちゃくちゃ苦労しましたね。ギターの音作りも基本的に僕がディレクションしながらやっているからこそ、ベースがどの位置で鳴っていればいいのかを考えられるんです。
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