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【SPECIAL TALK SESSION】納浩一 × 二家本亮介が語るジャコ・パストリアス
- Interview:Shutaro Tsujimoto
- Photo:Takashi Hoshino
『Jaco Pastorius』の1枚で、あまりに多くのことを成し遂げちゃった。
━━二家本亮介
━━ところで、おふたりがキャリアを重ねていくなかで、改めてジャコのすごさに気づかされることはありますか?
納 僕の場合はやっぱり、ベースだけじゃなくて、自分がアレンジや作曲に踏み込んだときにもう一段ジャコの音楽家としての深さを感じました。ベース・プレイヤーというだけじゃなくてプロデュース的な部分も勉強になるし、自分の作品を作るときも必ず1度ジャコに立ち返るというか。自分が60歳を過ぎてアルバムを作っても、やっぱり、ジャコの2枚のリーダー作という壁をどうすれば乗り越えられるんだろう、どうしたらこのクオリティに達することができるだろうみたいなことを考えましたね。
━━二家本さんは?
二家本 ジャコは本当にそこらじゅうにいるというか。もちろん僕もそうだし、“たどっていくとジャコじゃん”みたいなものがいろんなベーシストのなかに見え隠れして、彼が存在しなかったら本当にエレキ・ベースは全然違うものになっていたんだなって感じています。それこそ今ベースを弾いている“ずっと真夜中でいいのに。”でも、けっこうベース・ソロがあって、それを若い子たちがコピーしてくれていたりもするんですけど、そういうのもたどるとやっぱりジャコなんですよ。メロディアスで歌心があって、ちょっとジャズ・リックがあってっていう。僕のちょっとリード・ベースっぽいスタイルはジャコの影響だと思います。
━━下の世代へも脈々と受け継がれていると。
二家本 僕らの頃はフュージョンとかをやりたくて専門学校に行くようなヤツは絶対ジャコ派生のベースを聴いてましたけど、今の若いベーシストたちも、それこそ僕のなかにあるジャコの影響とかを通して知らず知らずのうちに影響を受けているわけで、それってすごいことだなって。50年近くも前に彼は『Jaco Pastorius』の1枚で、あまりに多くのことを成し遂げちゃって、それが今にも絶大な影響を与えている。しかも当時のジャコって20代半ばですからね(笑)。
納 「Teen Town」とか「Three Views Of A Secret」なんて10代の頃に書いたって言ってるからね。10代で「Teen Town」を書けるなんてどうかしてる。
二家本 「Havona」も実際のレコーディングとちょっと構成とかアレンジが違うヴァージョンがありますけど、あれも相当若い頃に録ったやつでしょうしね。
納 天才というひと言で片づけるのはアレだけど、そうとしか言いようがないよね。クリフォード・ブラウンとかスコット・ラファロとかもそうだけど、どの楽器でも革命的なことをする人ってそういう人が多いですよね。
二家本 でも同時に、今の若い人にジャコのすごさって伝わりにくい部分もあるのかなと思うところもあるんです。「Continuum」にダブル・ストップがあるじゃないですか? Eの5th、9th、3rdのやつですね。ダブル・ストップって普通7度3度とかが多いんですけど、ジャコのは動かすダブル・ストップっていうか。僕、あれをどうやってるのかがずっとわからなくて、のちにわかったときめっちゃ嬉しかったことを覚えてるんですよ。自分の専門学校時代って、ルイス・ジョンソンとか青木智仁さんの教則ビデオをダビングして何回も巻き戻しながらコピーしたり、そういう研究ばっかりしてたんですけど、今ってもうYouTubeがあるじゃないですか。だから、そういう研究の労力が減ってるぶん、今の子がジャコを聴いても“こうやって弾いてたんだ!”っていう感動は僕らの世代よりも薄いのかなって。
納 若い人でフットレスを弾く人ももう少ないでしょ? 現場でニーズがなきゃ弾かないよね。
二家本 少ない気がしますね。僕もそれこそポップス系のレコーディングで“フレットレスでお願いします”っていうオファーが来ても、いざ弾くと“やっぱり違いました”ってなることがあります(笑)。やっぱり、どうしてもエッジ感とかボトム感が弱くなってしまうので。よほどフィーチャーされていれば別なんでしょうけど……なかなかね(笑)。
納 日本でも誰かがジョニ・ミッチェルみたいなポップスやってくれて、ジャコみたいなフレットレスを入れてくれないかな〜っていうのはずっと思ってるんだけどね(笑)。
【お知らせ】
現在発売中のベース・マガジン2月号【WINTER】でも、ふたりの対談を掲載中。ジャコ・パストリアスとの出会いのほか、プレイ分析や自身への影響など、BM Webとは別内容でお送りしています!
また特集では、ジャコ・パストリアス、スタンリー・クラークを筆頭に、クロスオーバーを盛り立てた主要ベーシスト10名を紹介しているほか、アメリカ以外でのシーンの動向、クロスオーバーに影響を受けた日本人ベーシストへのアンケートなど、70ページで展開しています。
そのほか、フェンダー・アメリカン・ヴィンテージIIや小型コンボ/ヘッドフォン・アンプといった機材企画、来日公演が今月に迫ったレッド・ホット・チリ・ペッパーズの最新作『Return of the Dream Canteen』でのフリーの奏法分析など、さまざまな記事を掲載しています。ぜひチェックしてみてください!