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    INTERVIEW – 林幸治[TRICERATOPS]

    • Interview:Koji Kano
    • Photo:Michiko Yamamoto

    今回すごく好きな音楽が作れたし、今現在好きな音楽ができている

    ――今作では細かいエフェクト音も楽曲におけるフックになっています。例えば「ROSIE」Bメロの伸びやかなフレーズ部分はコーラスがかかっていますよね?

     この部分のコーラスはエンジニアのほうでエフェクトをかけてくれていて、ベースは素の音で録っているんです。すごく広がりが出た音になっていますよね。今作のベースの音作りはデジタル的な味付けはしていなくて、さっきも言ったようなヴィンテージのアナログ機材が軸になっていますね。

    ――最近だと、最新のエフェクターを導入した巨大なエフェクト・ボードを組むベーシストも多いですけど、そういう感覚で作られた音ではないということですね。

     そうですね。基本的に録音ではエフェクターはほぼ使ってないです。「マトリクスガール」の落ちサビでハイポジでコードっぽいプレイをしているんですけど、あそこだけファズをかけているくらいですね。あとは全部アンプ直です。

    ――林さんのサウンドは原音重視という感じで、歪みも味付けのされていないアナログチックなものに感じます。こういった音作りはこだわりでもあるということでしょうか?

     シンプルにベースを鳴らして、それをマイクで録りたいっていうことですね。キャビネットはライヴではアッシュダウンの8発を使っているんですけど、レコーディングではほとんどがSWRのBIG BENっていう1発のもので録っているんです。マイクは全部エレクトロボイスのRE20で録っていて、これも僕のこだわり。このマイクの音が一番好きなんですよ。

    ――RE20にはどういったこだわりが?

     なんて言うんだろう……締まっている感じがするんですよね。大体RE20かノイマンのU47 FETのどちらかが日本のレコーディング・スタジオには立てられていると思うんですけど、僕はRE20のほうが圧倒的に好きですね。録り音を聴いていて、なんか違うなと思うとマイクが違ったりすることもあって、RE20に変えてもらうとしっくり来ることがあります。まぁ好みの問題なんですけどね(笑)。

    ――80’sテイストの「いっそ分裂」はフィルター系のエフェクトを用いたファンキーなベース・サウンドになっています。どのように音作りをしたのですか?

     これは生のプレーンなベース音の上に、僕がLogicで作ったシンベを乗せているんです。これもLogicを導入したっていうのがデカくて、レコーディング・スタジオでエンジニアの人に作業してもらう場合、本番まで仕上がりがわからないですけど、Logicで作ることで事前にイメージができますよね。ほかにもアルペジエイターみたいなカタカタ鳴っているサウンドもLogicで作ったものをそのまま本番でも使いました。

    「いっそ分裂」Music Video

    ――Logicを導入したことで楽曲におけるサウンドの可能性が広がった、ということですね。

     そうですね。便利な世の中になったものですよね。Logicを導入したことでやりとりもスムーズになりましたし、家でひとりで作業できたので効率も上がりました。機材関係は深沼(元昭)さんとか菅原(龍平)くん、LOVE PSYCHEDELICOのNAOKIくんに聞いていろいろ揃えていきました。最初は慣れるまでにすごく時間がかかって苦労した部分もありましたけど、アルバムの全曲が出揃う頃にはみんなかなりいじれるようになっていました。

    ――さて、7年4ヵ月ぶりとなった今作を振り返ってみて、改めてどのような作品になったと感じますか?

     やっぱり思い入れはありますよね。活動休止していたっていうのもあるし、いろんな人に手伝ってもらいましたけど、基本となる部分は3人でもう一度情熱を燃やして一丸となって作れたので、そこに対して特別な思いはあります。ベースに関しても納得いくものが録れたっていう満足感も感じています。

    ――デビュー25周年目という節目でもあり、今作を通じてTRICERATOPSの新たな始まりを予感しているのですが、今後のバンドとしての目標やビジョンはありますか?

     どうなるかはわかりませんけど、僕は間を空けずにすぐに次の作品を作りたいなと思っています。あとはツアーがあるので、そのツアーをやっていくなかでバンドがどう変わっていくか、みんながどう感じてくれるかっていうのは楽しみな部分です。でもまずは今回すごく好きな音楽が作れたし、今現在好きな音楽ができているので、バンド活動自体を楽しみたいなって思っています。

    ――最後にいちベーシストとして、今後どのようなプレイヤー像を思い描いているか教えてください。

     歌って踊れるベーシストかな(笑)。というのも、TRICERATOPSだとコーラスが多いので、弾きながら歌うのがめちゃムズい部分が結構あるんです。今作だと「マトリクスガール」は弾きながら僕がやっているコーラスを歌うのは本当に難しくて、そうそうできる人はいないんじゃないかと。しかもエフェクターの踏み替えもありますし。どう考えても弾きながら歌えないだろうって思うこともあるんですけど、できるかできないかではなくて、あくまでも楽曲に必要なフレーズをやりたいんですよね。実際3人だけでやり続けるのって大変なんですけど、だからこそできたときの喜びはまた格別なんです。

    ◎Profile
    はやし・こうじ●1976年7月24日生まれ、東京都出身。1995年10月に和田唱(vo,g)と林のふたりで楽曲制作を開始し、翌年に吉田佳史(d)が加わりTRICERATOPSを結成。1997年にシングル「Raspberry」でメジャー・デビュー。これまでにシングルを29枚、オリジナル・アルバムを12枚発表している。2022年4月20日には前作から7年4ヵ月ぶりとなる待望の12th作『Unite/Divide』をリリース。2022年6月10日からは全国7ヵ所を回る全国ツアー『TRICERATOPS tour 2022 “Unite / Divide”』を開催する。林は深沼元昭のソロ・プロジェクトであるMellowhead、LOVE PSYCHEDELICOのKUMIや深沼元昭、岩中英明(ex:Jake stone garage)とのバンドUniollaや、菅原龍平とのユニットNorthern Boysなどでも活動している。

    ◎Information
    TRICERATOPS
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    林幸治
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