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INTERVIEW − 川上つよし[東京スカパラダイスオーケストラ]
- Interview:Kengo Nakamura
- Photo:Yuusuke Katsunaga
こういう時期だからこそアグレッシブにいきたい。
━━今作での使用機材は?
ベースは、ずっと使っている1967年製の白いジャズ・ベース、1959年製の赤いプレシジョン・ベース、1959年製のサンバーストのプレべの3本ですね。アンプは、ヘッドがTCエレクトロニックで、キャビネットがアンペグです。TCは使い勝手がよくて、ライヴでは楽器に合わせてプリセットのEQを変えたりもします。スカパラの場合、レコーディングは一発録りをするんですけど、ブースが足りなくなるので、ベースはラインで録ってからリアンプしていますね。スカパラで大変なのは、ドラムと同じ部屋で弾いていて、アンプはなしでヘッドフォンの自分の音だけなんですけど、ドラムは生音もすごく聴こえるわけですよ。しかもチャンネルの事情でドラムとベースで1チャンなんですね。だから、どうやっても自分の音が聴こえないっていう状態で録音することも多いんです。これはスカパラならではですね。
━━「倒れないドミノ」は、曲調的にサビは疾走感のあるパターンになりがちだと思いますが、あえてうしろに引っ張るような感じでアプローチしていますね。
そうですね。あれが普通にエイトで行っちゃうとつまんないなっていうところですよね。ちょっとレゲエ的なグルーヴにしたいなと思って。
━━そして、最後のひと回しだけ、休符を埋めてちょっと前に押し出すような感じになっています。ドラムも、1サビはハットの裏打ち、2サビは頭打ち、3サビはライドと、スピード感に変化を出していますし。
曲が進んで行って何回か繰り返していくと、やっぱり変化をつけたくなりますね。リハーサルで演奏するたびに、“あ、欣ちゃん(茂木欣一/d)のこの部分のアプローチ変わったな”って思いながら、欣ちゃんと、じゃあこうしようっていう話はしますし、それがおもしろいですよね。
━━スカ・パンク的「9」は、サビが4ビートのウォーキングで、ホーン・ソロのうしろでは8分のランニングにして疾走感をアップさせています。
これもリハーサルを重ねて行くうちに自然になっていったものですね。でも、難しいですよね、ルートさえ合っていれば、やっぱりアプローチに正解がないわけですから。スカパラの場合、けっこうリハスタでリハーサルを何度かやるので、そのたびに、これは違うかなと思ったら違うアプローチを試してみたりしますね。
━━「多重露光 feat.川上洋平」も4ビートですが、こちらはジャズ寄りの4ビート・ウォーキングですね。
そうですね。これは完全に全篇を通してジャズ的なアプローチの4ビートですね。同じ4ビートでも、スカ・パンクのほうがより明快な、ルート、3度、5度の“ドミソ”ぐらいしか使っていなくて、単純で無骨な感じです。ジャズ的なアプローチのほうは、上行下行を入れて、よりなめらかに自然なラインになるようにはしていますね。
━━「(Everybody is a) SUPERSTAR」のギター・ソロのうしろではベースでオブリを入れています。川上さんは極力シンプルにグルーヴメイクに徹するタイプだと思うのですが、これはこのセクションにホーンが入っていないからですか?
まさにそうです。スカパラの場合、オブリ的なものは全部ホーンがいるので、どうやってもぶつかっちゃうんですね。だから普段はなるべくシンプルにということは考えています。でも、“ここは今ホーンズがいないから、ちょっとやっちゃおうかな”っていうことももちろんあって。でも、ベースがそうやってオブリを入れたあとでホーンをダビングする場合に、予定じゃなかった管が入ってきて、“だったら、俺はこんなプレイしなかったのに”っていう場合もあります(笑)。
━━さて、デビュー30年を超えてもまだまだ攻める勢いが感じられる本作ですが、川上さんにとってどんな作品になりましたか?
僕も本当にすごい作品ができたなと思っていて。最初にコンセプトを固めて、それに合う曲を作っていったというわけではなくて、数珠つなぎのように、最初に「倒れないドミノ」があって、次に「ALMIGHTY~仮面の約束 feat.川上洋平」があって、ひとつずつ、“次はこういうものも欲しくなるな”ってバリエーションができていって、それが自然な流れだったんです。コロナ禍のなかで、ポジティブにみんなを前向きにしたいなっていう気持ちだったし、それが冒頭に言っていただいたような“アグレッシブ”っていうところにつながっているんじゃないかなと思います。こういう時期だからこそアグレッシブにいきたいなという気持ちはありますね。
◎Profile
かわかみ・つよし●1967年1月21日生まれ、東京都出身。1989年、東京スカパラダイスオーケストラのメンバーとしてデビュー。スカパラの屋台骨を支えるメロディ・メイカーとして「DOWN BEAT STOMP」「めくれたオレンジ feat. 田島貴男」「美しく燃える森 feat. 奥田民生」など数多くの作曲を手がけている。デビュー以来、国内に留まることなく世界31ヵ国での公演を果たし、世界最大級の音楽フェスにも多数出演。スカパラ以外での活動としては、2001年に日本のスカ・レゲエ界から錚々たるミュージシャンを集めたバンド“川上つよしと彼のムードメイカーズ”を結成し、4枚のオリジナル・アルバムなどを発表している。スカパラは2021年3月3日に23枚目のオリジナル・アルバム『SKA=ALMIGHTY』をリリースした。
◎Information
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