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    INTERVIEW − 川上つよし[東京スカパラダイスオーケストラ]

    • Interview:Kengo Nakamura
    • Photo:Yuusuke Katsunaga

    コロナ禍を打ち破る、スカ万能説

    2019年にデビュー30周年を迎えた日本屈指のライヴ・バンド、東京スカパラダイスオーケストラ。その記念すべき30周年記念ライヴがコロナ禍により中止になるなど、多くのバンド同様に前代未聞の世界的苦境に直面した彼らではあるが、その局面を圧倒的なパワーで打ち破るニュー・アルバム『SKA=ALMIGHTY』を完成させ、力強い新たな一歩を踏み出そうとしている。そのタイトルが表わすように、あらゆる音楽的アイディアにスカの背骨を通した多彩な楽曲が詰め込まれた本作は、攻めの姿勢による超アグレッシブな仕上がり。コロナ禍を打ち破るこの充実作について、ベーシストの川上つよしに聞いた。

    逆境のなかでも何事もすごくポジティヴに捉える。
    その力だけは強くて。

    ━━昨年は、新型コロナウイルスの影響で、バンド活動のいろんな変更を余儀なくされた1年だったと思います。

     そうですね。それまで、ライヴを年間100本くらいのペースでずっとやってきて、それがパタリとなくなってしまって。呆然という感じですよね。最初は落ち込みましたけど、周りのミュージシャンを見てもみんなそうなので、これはもうしょうがないと。逆に、時間が空いて余裕ができたことを前向きに捉えるしかないなと思いましたね。ライヴはなくなったんですけど、テレビ朝日系『仮面ライダーセイバー』の主題歌のお話とかをいただいたりと楽曲制作の予定はあって、そちらに力を注ぐことができました。最初の緊急事態宣言の頃は本当に“ステイホーム”で家を出られなかったし、メンバー同士も会えなかったので、各自が家で作業をして。

    ━━また、スカパラもやっていましたが、配信ライヴというのが新たなエンターテインメントとして定着してきたところもありますよね。

     去年の3月20日に代々木第一体育館で30周年を締めくくるライヴを予定していたんですけど、それが中止になって、同じ日に配信ライヴをやったんです。それから何回か配信ライヴをやっていますけど、最初はやっぱり慣れなくて。演奏中にどこを見ていいかわからなかったんですけど、そこはもう、カメラがお客さんだと。これまでもライヴにカメラが入ることはあったんですけど、あんまりカメラにばっかりアピールしていても不自然じゃないですか。でも、もう100%カメラを意識してやろうと。そっちにお客さんがいるんだということは、メンバーでも話してやっていましたね。

    ━━そして現在は有観客でのツアー中ですね(取材は2月18日に行なわれた)。

     なんとか今年1月からツアーを始めたんですけど、始めた途端にまた緊急事態宣言が出まして。どうなるかなっていう不安な部分もあったんですけど、ライヴ自体はすごく雰囲気が良くて、お客さんも楽しそうで。すごく光を感じましたね。お客さんも声は出せないんですけど、動きとかですごく気持ちが伝わってきますから。

    ━━新作『SKA=ALMIGHTY』の構想はコロナ禍の前からあったのですか?

     いや、コロナ禍になった頃からですね。一番最初にレコーディングした曲が「倒れないドミノ」で、これもまさにそういう歌詞で。ちょうど去年の春に“卒業式もできなかった”というような話があって、そこから谷中(敦/bs)が“春は来るだろう”っていう歌詞を書いたっていうのがスタートですね。アルバム全体に、去年のコロナ禍で感じたことはすごく反映されていますね。

    ━━本作はとんでもなくアグレッシブな作品だなと感じました。

     そうでしょう(笑)。スカパラは、逆境のなかでも何事もすごくポジティヴに捉えるっていう、その力だけは強くて。今までも、例えば海外ツアーですごく過酷な状況に陥ったときもすごく楽しく打開してきたし、もっとシリアスなことで言えば、メンバーの死というものも突破してきましたから。そういうところでは、暗くならずに明るいパワーでやっていくという、そういう性質が身についてますね。

    『SKA=ALMIGHTY』ダイジェスト映像 
    後列左から、NARGO(tp)、沖祐市(k)、茂木欣一(d)、川上、大森はじめ(perc)、谷中敦(bs)。前列左から、北原雅彦(tb)、加藤隆志(g)、GAMO(ts)。
    『SKA=ALMIGHTY』
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    ━━特に攻めているなと感じたのが「This Is My Life」です。最初はゆったりとしたカリプソのノリから始まって、高速メタル、軽快でテンポ・アップしたラテン、再び高速メタル、最後はまたゆったりカリプソと怒涛の展開ですね。

     ですよね。これは作曲者のNARGO(tp)自身も、“これは何なんでしょう”って言っているくらいですから(笑)。タイトルどおり、人生もなだらかにはいかないぜっていう曲ですね。

    ━━この急激なノリの変化にはどのように対処したのですか?

     この曲は、ノリがどうとかを頭で考えていたら、もうついていけない(笑)。反射神経でやりましたね。最初は、BPMもちょっと変わるし、セクションごとに別録りにして編集でつなげようって言っていたんですけど、それだとおもしろくないしバンドでやっている意味がないよねっていうことで、結局は、せーのでアタマからケツまで一発で録ったんです。当初はベースの音色も変えようかなと思っていたんですけど、一発で録るならもうベースも一発だなと。だから1曲通して同じ音でやっていますしね。

    ━━もう1曲攻めているのが「会いたいね。゚(゚´ω`゚)゚。 feat.長谷川白紙」で、この曲は川上さんと長谷川さんとの共作曲ですが、これも細かい打ち込みのリズムやカオスなリズム展開が強烈ですね。

     これまで、スカパラもいろんなコラボをしてきましたが、今までにない、本当に画期的な作品になりました。もともと白紙君は NARGOが、“新しい音楽の扉を開いたすごい人が出てきた”って大騒ぎしていて。曲を聴いてみたら、これはすごいと思って、有名になる前に声をかけようと(笑)。そうしたら快く引き受けてくれたんです。それで、スカパラの楽曲のデモを3曲くらい聴いてもらって、どの曲がいいかを選んでもらいました。

    ━━川上さんはこの曲をどのように作ったんですか? ベースのフレーズでいうと、スタッカート気味の音価が軽快さを生んでいますね。

     これはまさにコロナ禍でできた曲で、仮タイトルが「ディスタンス」だったんです。TVをつければ“ディスタンス”って言われていたし、そういうのをぶっ飛ばすような明るい元気なスカがいいなって。だからリズムの軽快な感じはイメージしましたね。白紙君とのやりとりでは、僕らも30年やってますし、サウンド面である程度固まってきた部分というのをぶっ壊してもらいたいなというところでオファーしたんです。デモを渡したら、白紙君が、“これって、僕はどの程度やっていいんですか?”って聞いてくれたので、“もう思いっきりやってください”と。デモが返ってきたら、連歌の上の句を出したら下の句が出てきたみたいに、僕らの演奏自体もすごく変わっているし、いろんな音が加えられて、さらに白紙君の新しいパートもついていて。白紙君に“この曲と関係なく、それぞれの楽器のソロの音をなんでもいいからください”って言われて、全員適当に弾いたものを渡したんです。それがどこかに入っているんですよ(笑)。ミックスが一番大変だったんですけど、白紙君に聞いたら、70トラックくらい使っていて、“ここのトラックの音をもうちょっと上げてください”って、そのときに初めて僕らが、“え、こんな音色が入っていたんだ”って気づくくらいでした。そうやってできていった不思議な曲ですね。

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