プランのご案内
  • PLAYER

    UP

    INTERVIEW − 白玉雅己

    • Interview:Kengo Nakamura

    誤魔化す気もないんですけど、
    誤魔化せないというか(笑)。

    ━━ヴィブラフォンとベースがユニゾンでメロディを奏でる「Positive Guys」は、1960年代の架空のバンドが演奏しているのをイメージして作曲したそうですね?

     そうなんです。ミルト・ジャクソンはアメリカのミュージシャンですけど、例えばイギリスのロック系のバンドとごちゃ混ぜになったらどうなるかなって。曲調はちょっとビートルズっぽいというか、ブルースとポップスが合わさったような曲ですね。サビで長調に転調させることで、ポジティブな感情を表現しています。

    ━━「Positive Guys」のベース・ソロはギター的なプレイだと思いました。

     確かに。ブルース・ギターの雰囲気があって、これはピックで弾いているからというのもあるのかもしれませんね。奏法はいろいろ試していて、2フィンガーで弾いてみたりはしたんですけど、この曲はバッキングもピックのほうがカッコよかったので、ベースは全部ピックで弾くことにしました。今作ではほかにも、「Lovely People」と「暗闇と閃光」がピック弾きで、今回はけっこうピック弾きをした印象がありますね。

    ━━ロック感の強い「Lovely People」は、やや歪んだ音でのメロディになっていますね? 

     ロック寄りな曲のイメージだったので、ほんの少し歪ませています。プラグインのサンズアンプのシミュレーターを入れていますね。ちょっと歪みの質感を出すために使用しました。

    ━━「Lovely People」のベース・ラインは、イントロやベース・ソロ、エンディングは8分で音を埋めたドライブ感のあるベース・バッキングなのに対して、いわゆる“歌のメロディ”部分に入るとセカンドライン的なリズムの隙間のあるバッキングに変わってコントラストがついています。

     その部分は、まさにメリハリをつけようと思って意識的に分けたところです。曲中は極力シンプルにしたかったし、そうすることによって覚えやすいものにしたかったというのはありますね。アルバムのタイトルにもなっている曲ですし、ライヴでみんなで楽しめたらいいなと。

    ━━ファンクロック調の「暗闇と閃光」は、ベースのメロディにすごくスピード感があります。これはピック弾きによる音色のタイトでエッジの立った感じも寄与しているのかなと。

     この曲は、ファンク・ギターのカッティングのようなイメージをベースでやってみようと思って、ゴーストノートを少し入れながら弾いています。ベース・ソロの部分もちょっとシックっぽいフレーズになっていて、ギター的にハイ・ポジションのイメージでしたね。あそこでベースが下のポジションでリフっぽく弾くと、クールでカッコいい感じにはなるんですけど、今回はギターのイメージだったので。

    ━━バッキングのベースは、シンベに生ベースを足しているんですか?

     そうですね。この曲に入れたシンセ・ベースの音だけだとちょっと物足りなかったので、シンセ・ベースの1オクターヴ下みたいなイメージで生のベースも入れて、どっしりさせています。

    ━━「Control」はシンプルなドラムのリズムに対して、ベースが音価調整や16分ウラのリズムで躍動感を高めていて、まさにベースの醍醐味のようなプレイですね?

     シンプルなんだけど印象的で、かつベースらしいフレーズですよね。シンプルなプレイなんですけど、楽しめてノレるというのはベースらしいところだと思います。ただ、だからこそ逆に難しいというか。ちょっとしたタイミングでノリも変わってしまう。誤魔化す気もないんですけど、誤魔化せないというか(笑)。まぁ、多少ヨレても楽しければいいという部分もあると思いますけどね。

    ━━アルバムの最後は「穏やかな出航」。ピアノとパッドの美しいサウンド・スケープの上でリヴァーブの効いた太い音色でのメロディが心地いいです。今作ではこの曲のメロディ部分だけ、ジャズベを使用したそうですね?

     はい。フェンダー ・カスタムショップのジャズベにケン・スミスのハーフ・ラウンド弦を張って弾いています。ハーフ・ラウンド弦ってラウンド弦の強い音は出ないんですけど、こういった音数が少ないトラックだとマッチしますね。最初、この曲のメロディはハーモニクスで弾こうと思っていたんです。でも、やってみたら音が弱くて。それで次にフレットレスを試してみたんですけど、ちょっといい雰囲気が出せなくて。それで結局フレットのあるベースで弾くことにして、薄くディレイをかけてキラキラした感じにしました。ハーフ・ラウンド弦を使うことでフレッテッドの金属的な感じは生かしつつ、ハーフ・ラウンドは手触りもなめらかで弦のノイズが出にくいので、キレイに聴こえるんですよね。

    ━━今作での使用機材はフェンダー・カスタムショップのプレベが主軸なんですか?

     そうですね。僕の使っているプレベは音が固い印象があって、存在感があるので使用しています。どうしてもプレベでなくてはならないという感じではなくて(笑)、曲に合う音の印象で決めています。プレベでいいなと思うのは、ノイズが出にくいこと。そこはすごく安心感がありますね。ただ音が強いので、うまくコントロールしなければならないときもあるかもしれませんね。僕はメロディを弾くときにはブリッジ寄りで弾いたりして、ちょっとローを抑え気味にコントロールしていたりしますね。

    ━━ベース・メロディの輪郭がきっちり出ているのは、そういった弾き方もポイントなんですね。

     あとはアンプを使わずにラインで録っているというのもあると思います。ピック弾きのときにはプラグインのサンズアンプのシミュレーターを入れたりはするんですけど、スラップのときにはプラグインのコンプとEQとリヴァーブくらいでアンプ・シミュレーターは使いませんし。2フィンガーでも使ったり使わなかったりで、アンプ・シミュレーターはマストではないですね。ソフト音源との兼ね合いも、ラインの音は良いと僕は思います。バンドでやるとしたらアンプを使ったほうがいいかなとは思うんですけど、ひとりでやっていると、僕はアンプを使わないほうが録音なども簡単だしいいんですよね。

    ━━最後に、今後の展望を聞かせてください。

     東京と大阪でのライヴを予定しています。去年ライヴをやって、実際にお客さんの顔を見ることができて曲作りのイメージも沸いたので、今回のアルバムにはそういう影響もあったと思うんです。だから今回のライヴも、すごく楽しみですね。作品作りに関しても、本作は前作よりもまたひとつ進展させることができたと思っていて。ベース・インストに関していえば、まだフレットレスを使ったりはしていないので、そういうものを使ってみるのもいいかなぁとか、次のアイディアを溜めている感じですね。聴いていただく方に楽しんでもらえるなら、今後もどんどんやっていきたいと思っています。

    ◎Profile
    しらたま・まさみ●1974年4月27日、広島県因島出身。1994年にポルノグラフィティとして活動を開始し、1999年にシングル「アポロ」でメジャー・デビュー。翌年にはNHK紅白歌合戦に出場するなど人気を集めるも2004年に脱退。その後、『Great Pleasure』(2005年)、『Natural Born』(2007年)などを発表してソロ・アーティストとして活動する。プロデュース活動などを経て、2019年にオフィシャルYouTubeチャンネルを開設し、2021年2月にベース・インスト・アルバム『HEALING & FUN BASS』、2022年6月に『Joy』をリリース。2023年4月にベース・インスト・アルバム第三弾『Lovely People』を発表した7月1日(土)@東京・下北沢440、7月15日(土)@大阪・南堀江knaveにてライヴを行なう。

    ◎Information
    Twitter YouTube

    ▼過去のリリース時のインタビューはこちら▼