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INTERVIEW − 白玉雅己

  • Interview:Kengo Nakamura

ベーシストがひとりでもやれるような世界が
もっと出てくればチャンスも広がる。

━━前作ではスラップのプルでメロディを弾いている部分も印象的でしたが、今作では「Rebirth」くらいですね。

 そうですね。この曲はスラップのほうが合うなとか、この曲は2フィンガーでもいいなとかは、実際にいろいろやってみて決めますね。

━━「Rebirth」のスラップ・ソロは、プル中心のフレーズから入って、サムピング中心のセクションに移り、最後は再びプル中心へと、しっかり構成が練られている印象でした。

 この曲の間奏は、まず2フィンガーで8小節あって、そのあとにスラップが16小節あるんですけど、スラップのところは流れで盛り上がっていく感じで、そんなに考えているものではなかったりしますね。この曲は実は、スラップにいく前の8小節の2フィンガーでリフを弾いているところのほうが、実際に自分で弾いてみて“やっぱりベースってこういうところがカッコいいんだよな”と思ったポイントでもあって(笑)。4弦の3フレット、5フレットあたりの音って、ベースとしてすごくカッコいいなって。

━━その意味では、「The Mission」中間部はベースのソロに移行すると思わせつつリフで押し切るロック感のあるアプローチになっていて、この部分も似たような感じがありますね。

 まさにそうですね。“ベース・バッキングのソロ”みたいなパターンがあるじゃないですか。ああいうカッコ良さってありますよね。ベースの低いところでのリフというか。ここも、ベースのカッコ良さを改めて感じる部分でした。

━━ベース・バッキングというところでは、スタイリッシュで疾走感のある「The Mission」は薄くバッキングのベースも入っていますが、わりと“ダーダッダー”と付点8分の点で打つキックに合わせた低音補強的アプローチですよね。例えば、8ビートのロック的なフレーズやリフでグルーヴを作るというパターンもアリだったのかなと思いますが?

 このバッキングのベースは打ち込みなんですけど、この曲はとにかくベースでメロディを弾くことに集中したかったんです。それで生ベースはメロディのほうだけにして。楽曲のイメージ的に、夜だったり、都心部のちょっとざわざわした感じの孤独とか、そういう冷たさの感じが出ればいいなと思っていて、曲の入りが4つ打ちだったりピアノもテクノっぽかったりするので、下のベースは打ち込みにしたというところもありますね。

『Joy』ティザー

━━軽快なカントリー風「Innocent Child」は、ベースで弾くメロディ部分はシンプルなのに対して、ベース・ソロの部分はすごくロック的な勢いを感じます。意識的な違いはありますか?

 メロディの部分は、ノビノビした感じで、タイトルどおり子供が遊んでいるようなリラックスした感じが出ればいいなと思っていて、テクニック的なことは考えないようにして弾きました。それによって、ソロ部分とは自然とメリハリが出たのかもしれません。ソロは試しながら録りながらっていう感じでやっていくんですけど、やっぱり、メインのメロディに比べるとリズムが細かくなったり、楽器の特性も影響するからかもしれないですね。

━━ベース・ソロの締めの部分に入っているハーモニクスも美しいですね。

 これは音域の幅を出したかったんです。ハーモニクスって、僕も普段はそんなに使わないですけど、音域を広げたいときに使うと表現の幅が出てきますよね。マーカス・ミラーとかのプレイを聴いていても、いろんな表現があると、聴いていておもしろいなと思うんですよ。

━━さて、ベース・アルバムとしての2作目を作り終えた心境は?

 前作は立ち上げだったので、それこそ必死っていう感じだったんですけど、今回のほうが、あまり恐れず作れた感じがしますね(笑)。あとは今回、セルフ・プロデュースでやったんですけど、やっぱりひとりでずっとやっていると、“これで大丈夫かな?”っていろいろな考えが浮かんできたりもするんです。それも含めていい経験になったし、作ってよかったなと思います。

━━今後の展望を教えてください。

 7月に東京と大阪でライヴをやります。そこで今回のアルバムはひと区切りですね。そのあとは、また今回を受けて、もっと美しい曲や楽しい曲が作れたらいいなと思っていますし、作っているとまたアイディアが出てくるので、また違ったアプローチも考えつつ。今はYouTubeもあって、ベースの世界でもいろんな発想というか、いろんなアプローチをされる方がいるので、そういったものが世のなかにどんどん広がっていけばいいなと思います。どうしてもベーシストって、ピアニストやギタリスト、ヴァイオリニストと比べると、ひとりでの活動がやりにくいじゃないですか。そこをひとりでもやれるような世界がもっと出てくればチャンスも広がりますし、そういった音楽の広がりに僕も参加することができればいいなと思っています。

【お知らせ】
7月19日発売予定のベース・マガジン2022年8月号にも白玉のインタビューを掲載予定! Bass Magazine webとは違った内容でお届けします!

◎Profile
しらたま・まさみ●1974年4月27日、広島県因島出身。1994年にポルノグラフィティとして活動を開始し、1999年にシングル「アポロ」でメジャー・デビュー。翌年にはNHK紅白歌合戦に出場するなど人気を集めるも2004年に脱退。その後、『Great Pleasure』(2005年)、『Natural Born』(2007年)などを発表してソロ・アーティストとして活動する。プロデュース活動などを経て、2019年にオフィシャルYouTubeチャンネルを開設し、2021年2月にアルバム『HEALING & FUN BASS』をリリース。2022年6月にベース・インスト・アルバム第二弾『Joy』を発表した。7月3日(日)には東京・下北沢440、7月10日(日)には大阪・南堀江knaveにてライヴを行なう。

◎Information
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