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“こういうベーシストだよ”っていうのを作りたくなかった。━━朋
━━ザアザアの曲作りはスタジオでのセッションで行なうそうですね。先ほどの「どす黒い」もそうですし、昨年リリースしたアルバム『失敗作』収録の「流出」はイントロからのリード・ベースとガリガリした音色も印象的です。曲の作り方的に、より自身の個性や主張が出せるということでしょうか?
零夜 そうかもしれないですね。曲作りはそのときそのときで、今、自分ができることや得意なことを詰めていける感じなので。ザアザアはほぼ全曲、スタジオに入ってイチから、なんならテーマ作りからスタジオでやるんですよ。それで実際に音を出して、“こんな感じかな、あんな感じかな”って話し合いながらやっていくんです。
━━DTM全盛の時代に珍しいですよね。
零夜 それはめちゃくちゃよく言われます。なんて効率の悪いことをしているんだろうって(笑)。
━━いやいや、それでしか生まれないものもありますからね。そもそも、ザアザアはどんな表現を目指したバンドなんですか?
零夜 楽曲的にはすごく幅広い感じでやってはいるんですけど、テーマとしては、基本的にちょっと根暗な感じというか。ヴォーカルの一葵の作り出す世界観、ジメジメした暗い感じを楽曲で表現している感じですね。曲調がどんな感じになるにしても、そういう雰囲気を出すようにはしています。
━━最新シングル『毒チョコ』は、自身ではどのような作品になったと思いますか?
零夜 タイトルどおり、もう毒々しい感じが出ればいいなというところで、ベースも馬鹿みたいに歪ませたりしてみて、一番しっくりくる音色でレコーディングができましたね。プレイ的には、「マーマレード」は収録されているほかの曲とは全然違うタイプの曲で、完全に引き算で作ったんです。ベースもずっとシンプルに刻んでいるだけの曲なんですけど、一番最後にちょっとだけベースが主張する感じにして。
━━いや、あれは“ちょっと”ではないでしょう(笑)。
零夜 焦らして焦らして、最後に爆発していくっていうのを、自分的にはうまくできたかなって思いますね。
━━高速シャッフルのジャズ・ロックな「蟻と砂糖」は、2Aのハイ・ポジションに上がるところで、ずっと3連を刻んでいるのがおもしろいですね。ある意味、“1番と変化をつける”という意味では白玉でもよかったりするのかなと。
零夜 そうですよね。ただ、あそこで勢いを失いたくなかったんです。それにはひたすら刻み続けるのが一番なのかなって。
━━THE MADNAは昨年末に結成されて、12月にEP『Beautiful Inferno』を、そして3月にEP『Ugly heaven』をリリースしました。この2枚のEPでは、いい意味でスタイルが定まっていないというか、ザアザアとはまた違うベクトルでの幅広さ、ジャンルとしての幅広さがありますね。
朋 まだ始動して3ヵ月くらいなんですけど、やっていくことをあまり定めないで、そのときそのときでやりたいことをやれたほうがいいなというのがあったんです。とにかくいろんなことがやれるバンドだって提示したかったので、ジャンルも幅広くなってますし、ベースに関しても“こういうベーシストだよ”っていうのを作りたくなかった。とにかくいろんなジャンルの要素を“ヴィジュアル系バンド”というものに落とし込んでアウトプットしていきたいですね。
━━いろんなジャンルをやることを考えると、ベースのアプローチもさまざまなものを求められたり、咀嚼していかないといけませんね。
朋 そうですね。ただ、THE MADNAはザアザアとは違って、メインで曲を作っている太嘉志(g)がデモを作ってくることが多くて、それに対してどうアプローチしていくかなんですけど、ベースに対する要望みたいなものはほぼないんです。だから、やり方としては、取り入れたいジャンルの曲を片っ端から聴いて、“こういうベース・ラインなのか”ってものを一度自分に取り入れて、それを自分の手でアウトプットするような形でフレーズを作っていく。それが一番ハマった感じがしたのは「8mmBOMB」ですね。
━━「8mmBOMB」はチップチューン・サウンドも取り入れたポップ・ミクスチャーで、4つ打ちのバスドラと裏打ちのハイハットというスクエアなリズムに対して、ベースで細かいウネりを生むサビがおもしろいですね。
朋 そこが一番自分らしさも出ているし、変な言い方ですけど、バンドらしくない曲だけどバンドらしいまとまり方をしたなと思っていて。リズムだけ聴くとバンド感がない曲なんですけど、あのベースが入ることによって打ち込みじゃない生の感じが出せたし、バンドらしさを残せたのかなって思います。
━━「OUTLAW」はロックンロールっぽいギター・リフの疾走感のある楽曲です。最後のサビではベースの動きを強めていますが、あくまで太さを残していますよね?
朋 まさしくそうですね。ほとんどルート音をダウン・ピッキングでかき鳴らしている感じなんですけど、サビはヴォーカルがメロディアスで開ける感じになっているので、ベースのフレーズ感は前に出しつつ、ロー感を損なわないようなフレーズに仕上げたんです。メロディアスに弾いて盛り上げるというよりは、下を支えながらもフレーズ感は前に出る塩梅ですね。
━━自身の嗜好としては、やはり骨太なものなんですか? ヒップホップ感もある「東京 BAD STREET KING」も、Aメロなど、ベースはわりとどっしりとしています。
朋 本当に好みで言うと、骨太で、ひとつのフレーズを繰り返し弾いているのが好きですね。「東京 BAD STREET KING」は、最初はスラップを入れてフレーズを動かしてみたりもしたんですけど、それよりはどしっと構えているほうがいいかなと。すごく重心を落としたかったので、あのくらいのシンプルなフレーズに落ち着いたんです。