PLAYER
音を出すまでどういった演奏になるのか、
まったく予測ができない。
──アルバムはかなりの部分がその場のインプロヴィゼーションでプレイされていると感じました。
まさしくそうだ。それもすべて100パーセント、インプロヴァイズによってだよ。
──それはメンバー4人で話し合って決めたんですか?
いや、それもエグゼクティブ・プロデューサーのアイディアだった。この4人だったら、即興でやったほうがきっとおもしろい演奏になると確信していた。だから収録前にリハーサルは一切しなかったよ。
──譜面を用意することもなかったんですね?
譜面どころか、事前に話し合うことも一切しなかったよ。我々はブルックリンのシェイプ・シフター・ラボ(Shape Shifter Lab)に行って、お互いのプレイを聴き、反応しながら演奏していった。4人で音を出した瞬間、私も最高のインプロヴィゼーション・テイクが録れるだろうという期待で胸がワクワクしたよ。誰がリーダーというわけじゃないんで、4人のイニシャルをアルバム名にしたんだ。
──レコーディング場所のシェイプ・シフター・ラボは、ベーシストのマシュー・ギャリソン(編注:ジョン・コルトレーンの黄金カルテットのベースのジミー・ギャリソンの息子としても知られる)が設立し、運営しているライヴ・パフォーマンス・スペースです。レコーディングはもちろん、コロナ禍以前から観客入りのライヴ配信も積極的に行なっていました。そこを選んだ理由は?
これもエグゼクティブ・プローデューサーの提案で、Moonjune Recordsのアーティストたちがそこでよくライヴをやってきていて、馴染みがあったからなんだ。今言ったように、あそこはビデオ収録とレコーディング、両方の機能を持っているから、演奏の模様はストリーミングで生配信もした。2020年8月15日、NYはロックダウンの最中だったから、無観客でね。我々も全員マスクをして、ソーシャル・ディスタンスを保ってプレイしたよ(笑)。
──あなたにとってPAKTの魅力はどんなところにあるのでしょうか?
ジャズ、フュージョン、プログレッシブ、メタルなどさまざまなバックグラウンドを持つプレイヤーの織り成す多様性かな。そして、さっき言ったように、何よりもインプロヴィゼーションだね。音を出すまでどういった演奏になるのか、まったく予測ができない。だから、音楽的におもしろいことが起こったときはいい感じだし、逆にうまくいかないときだってある。そこも含めたスリリングな感じが魅力なんだよ。
──インプロヴァイズで毎回違うわけですから、ライヴだとなおさらでしょうね。
昨年の7〜8月にツアーをやったんだが、やはりその日によってまちまちだった。そうそう、あれはシラキュース(NY州中央部の商工業都市)でのとき。本番前に店側が軽食と飲み物を出してくれたんだけど、出されたものがすべて砂糖たっぷりのスウィーツの類いでね。みんなひと口でやめたからよかったけど、もしバクバク食べていたら、最初の10分間で燃え尽きていただろうな(笑)。