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大人になって改めてコピーをしてみたら、
昔コピーしたものを体が覚えているんですよ。
━━35周年記念アルバム『SQUARE, TRIANGLE, CIRCLE & FUTURE』のDVDには、初代ヴォーカルの伊藤千豊さん時代のデビュー前の映像(「Wasted」1986.1.10 Nagoya HeartLand with Kazutoyo Ito)も収録されていますね。当時19歳ですか?
19歳です。確かそれが当時のヴォーカルの最後のライヴじゃないかな。その前座で今のヴォーカルの橋本が所属していたバンドが出ていたはずです。2曲入りのデモテープを初めて販売したときだったと思いますね。
━━それが今回収録されている1985年のデモ音源「Under Control Of Law (Demo 1985 Demo with Kazutoyo Ito)」ですか?
多分そうです。アメリカのコンピレーションにも入っているんですけど、恐らくその音源だと思います。この曲は、そのデモテープと、1987年に出した4曲入りの『Outrage』と、メジャー・デビューの『BLACK CLOUDS』と3バージョンあるんですけど、実はこのデモテープのやつが一番好きですね。荒々しくて。
━━Aメロの勢いがすごいですよね。あれはクリックは使っていないんですか?
使っていないです。今のガシッとしたものとは違う、80年代の当時ならではの名残じゃないですかね。音もアナログしかなかったのでそれもあるでしょうし。もちろん修正もできないし、ほぼ1発録りみたいな感じだったと思います。
━━これが当時19歳って、演奏がうますぎるなぁと(笑)。
そうですか?(笑) 当時、まわりが自分たちにとってうまいバンドばかりだったので、常に演奏には引け目を感じていましたけどね。
━━映画のなかでは、“当時高校生なのにこんなに練習していたんだ”っていう感じで、メンバーの部屋のカレンダーにリハのスケジュールが書かれていたりしましたが、やはり個人でもバンドでも、相当練習はしていたんですか?
バンド練習はスタジオ代がかかるので、高校生でお金もないからそんなには入れなかったですけど、曲作りはほぼ毎日メンバーの家に集まってやっていましたね。もちろんドラム・セットはないわけなんですけど、弦楽器に関してはそこで弾いているので、それが練習になっていたかなと思います。
━━OUTRAGEはいわゆる“幼なじみ”のバンドですよね。そういう昔からの友達同士のメンバーで活動していくなかで、例えば自分だけがうまくなれなかったらすごく焦るのかなと思うんですよ。“自分だけが足を引っ張れない”みたいなプレッシャーも余計にあるのかなと。
それに関しては、ちょっとエラそうなんですけど、自分は自信があったので(笑)。リズムとかね。だから逆に、そこらへんは当時厳しく指摘していた覚えがありますね。今思うと、当時の自分が正しかったのかどうかはわからないですけど(笑)。あとやっぱり、当時、コピーしまくっていたんですよ。ヴァン・ヘイレンとか、今振り返って一番タメになったなと思うのはアイアン・メイデンなんですけど。おもしろい話があって、2016年にアイアン・メイデンの初代ヴォーカルのポール・ディアノが来日したときに、バックをOUTRAGEの楽器陣とUNITEDの大谷(慎吾/g)さんでやったんです。そのときに、やっぱりそのライヴを観にくるお客さんはアイアン・メイデンが大好きだろうから、バックの演奏に対してもシビアだろうなって思ったんです。逆の立場で僕が観に行くなら“この人はスティーヴ・ハリスのベースをどこまで弾けるのかな?”っていう目で観に行くと思いますしね。だからライヴに向けてかなり練習したんですけど、大人になって改めてコピーをしてみたら、昔コピーしたものを体が覚えていて、大体合ってるんですよ。
━━当時から完コピだったと。
ほぼ。それこそ当時はメジャー・スケールも知らないくらいなので、何も考えずコピーしていたんですけど、ちゃんと合っていたので、“あぁ当時の自分も、ちゃんと耳が良かったんだな”って思いました。何十年も弾いていなかったけど、取りかかってみたら体が自然に反応したので、相当弾いたんだなって思いましたね。
━━さて、35周年記念特別公演として4月24日に地元名古屋のセントラル愛知交響楽団との共演があります。4thアルバム『The Final Day』の30周年記念として昨年リリースされた『RE:prise 〜 The Final Day 30th Anniversary』には、同アルバム楽曲のフルオーケストラ・アレンジを収録したCDが付属していましたが、今回のライヴではOUTRAGEでの演奏もあるんですか?
あります。これは3セクションあって、オーケストラのみ、オーケストラとOUTRAGEのミックス、OUTRAGEだけっていうのがあるんですよ。
━━オーケストラとの共演用にアレンジしたんですか?
いや、しないです。もうそのままです。例えばベース・イントロのところがストリングスになったりっていうのはあると思いますけど、構成自体はほぼ同じで。
━━ではOUTRAGE側としては普段とあまり変わりなく?
音量以外はそうですね。いつもどおりやると多分かき消しちゃうと思うんで(笑)。
【お知らせ】
2022年4月19日発売のベース・マガジン2022年5月号にも安井のインタビューを掲載! 本インタビューで触れられなかった、映画『鋼音色の空の彼方へ』の書き下ろしテーマ・ソングについてなど、BM webとは別内容となっています。
同号では、ヒトリエのイガラシとUNISON SQUARE GARDENの田淵智也が表紙を飾り、全60ページにて“リード・ベース”というアプローチを掘り下げた『Special Program 鮮烈のロック・リード・ベース〜バンドを彩る旋律的低音』、King Gnuの新井和輝を試奏者に迎えた『アクティヴ・フェンダーの世界』など、さまざまな記事を掲載しています。ぜひチェックしてみてください!
◎Profile
やすい・よしひろ●12歳でポール・マッカートニーに憧れてベースを始める。1982年、中学時代にNWOBHM系バンドを中心としたコピー・バンドとしてOUTRAGEを結成。1986年にヴォーカルが橋本直樹へと交代し、現在のラインナップに。1987年に自主レーベルからEP『Outrage』をリリースし、日本のスラッシュ・メタルの先駆けとなる。1988年にアルバム『BLACK CLOUDS』でメジャー・デビュー。1999年に橋本が脱退するが、3ピース・バンドとして継続し、2007年に橋本が復帰。現在までに13枚のオリジナル・アルバムなどをリリースしている。
◎作品情報
OUTRAGEデビュー35周年記念プロジェクト
映画『鋼音色の空の彼方へ』
映画『鋼音色の空の彼方へ』は、OUTRAGEのヒストリー・ムービーを演じることになったヘヴィメタルとは無縁の若者たちが、映画制作を通じて苦悩・葛藤しつつも真摯に己と向き合うことで自身の人生を見つめ直していくという、OUTRAGEを題材とした青春群像劇だ。原案は音楽評論家の伊藤政則、監督はOUTRAGEの映像制作を手がける山田貴教が務め、役者も制作/製作スタッフも在名活動者で揃えたオール名古屋ロケという本作は、5月から舞台となった名古屋で先行公開され、以降全国公開されることが決定している。
公開:2022年5月
出演:秋田卓郎/岡陽介/兼平勝成/安藤悟/近藤久美子/山中裕史/末永桜花(SKE48)/三根孝彦/酒井直斗/梨伽/高井泉帆/憲俊/野々田奏(祭nine.)/上田定行
特別出演:OUTRAGE(NAOKI/阿部洋介/安井義博/丹下眞也)
原案:伊藤政則
プロデューサー:小崎滋之
監督:山田貴教
脚本:成子貴也
テーマ・ソング(Inspired by the movie):「Summer rain」「Psycho flowers」OUTRAGE
製作:「鋼音色の空の彼方へ」製作委員会
配給:スターキャット
公式サイト: http://haganeiro.com
公式Twitter:https://twitter.com/nagoyahaganeiro
◎ライヴ情報
『35th Anniversary Special Live OUTRAGE & Outrageous Philharmonic Orchestra』
日時:4月24日(日)OPEN 17:00/START 18:00
会場:Zepp Nagoya
共演:Outrageous Philharmonic Orchestra
・指揮:柴田 祥
・編曲:小塚憲二
・演奏:セントラル愛知交響楽団
料金:指定席 ¥8,800(税込/全席指定/1ドリンク代別途)
一般発売日:2月12日(土)
公演ページ:https://www.creativeman.co.jp/event/outrage-outrageous-philharmonic-orchestra/
◎Information
OUTRAGE
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安井義博
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