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INTERVIEW – フィル・ブレイク[ナッシング・バット・シーヴス]

  • Interpretation:Tommy Morley

最もアグレッシブなサウンドを得るには、
ピックを使うのが有効だよ。

━━近年、日本ではシンセ・ベースのような質感の音をエレキ・ベースの生演奏で出すということに取り組んでいるベーシストも多いです。あなたも同じようなアプローチをすることがありますよね。シンセ・ベースをエレキ・ベースで再現する狙いとは?

 もちろんこのアルバムにはシンセサイザーのパートもあるけれど、どうしても自分でプレイしたいと思うところもやはりあって。それは弦が振動する様子や僕の指の動きだったり、キーボードではどうしても得られないものを表現したいからなんだ。シンセサイザーのトラックを下地にしてそのフィーリングを得ながら僕のプレイを乗せることで、その両者が合体したサウンドになるし、完全にエレクトロニックなだけのトラックで作ってしまった際には得られない人間臭さがそこにはあるんだ。

━━レコーディングのおもな使用機材を教えてください。

 ここ16年くらい、僕はフェンダーのプレシジョン・ベースを使ってきたけれども、何年か前にエピフォンのサンダーバードを手に入れた。ほとんど弾かれることなくホコリをかぶっていた300ポンドの安物だったけれど、使うかもしれないと思ってレコーディングに持って行ったんだ。フェンダーのサウンドに飽きたというわけでもないのだけれど、今までこのベースで徹底的にレコーディングし尽くしてきたから違うサウンドを試してみたくなっていたんだろうね。実際に使ってみたらプロデューサーのマイク・クロッシーがかなり気に入ってくれて、アルバムの9割くらいがこのベースでのプレイになったと思う。ロー・エンドがいい感じになったし、プレシジョン・ベースと比べて、どことなく厚みのある低域って感じで聴いていて興味深いところがある。なんといっても、このベースは購入してから僕の家のベッドの下で何年も眠っていたものだからね!

━━アンプについてはいかがですか?

 マイクがアンペグのSVT1000を持っていて、最強にヘヴィなサウンドが得られたよ。オーディオ・キッチンのThe Big Treesも使っていて、これはファンタスティックなプリアンプだよ。これらの組み合わせを基本に、その曲ごとに気に入ったディストーション・ペダルを使った。ダークグラスエレクトロニクスのMicrotubes B7K Ultraも頻繁に使っていたね。

━━奏法的にはピック弾きがメインですよね?

 そう。やっぱりこれはディストーションを多用するスタイルだからっていうのはあるだろうね。最もアグレッシブなサウンドを得るには、ピックを使うのが有効だよ。アルバムでは親指を使ってピッキングしているところもそれなりにあって、それはそれでうまくいっているんだ。それでもやはりピックを使うことで得られるアタック感は気に入っていて、それはこれからもしばらく変わらないだろうね。

━━今作のベース・プレイで、あなたが一番気に入っているのはどの曲のどの部分ですか?

 「リアル・ラヴ・ソング 」でのベースの動きはシンプルだけど、曲の顔となっていて気に入っているね。「イズ・エヴリバディ・ゴーイング・クレイジー?」もベースが特別な動きを持っていてテイストがあるし、この曲でしっかりと目的を持っている。

━━その「イズ・エヴリバディ・ゴーイング・クレイジー?」の分散和音のような動きの大きなフレーズはどのようにできたフレーズですか?

 これはギターのリフを分解してエキサイティングに聴こえるようにプレイしている。やり過ぎて目立つのは避けたいと思っていたけど、曲に華やかさを持たせるならコードの構成音を使ってみたり、動きを与えてみようと思ったんだ。曲の一部を少し変えたプレイにして前進させるっていうのは常に考えていることだし、ここではコードの構成音を少しいじってみたという感じだね。全体的に今回のアルバムではベースのサウンド的にもいろいろと試行錯誤したところがあって、満足しているし誇りに思っているよ。

「イズ・エヴリバディ・ゴーイング・クレイジー?」MV

━━あなたにとってベースという楽器の魅力とは?

 僕の性格とマッチしているところがあると思う。僕は最前線に出るようなタイプじゃないし、楽曲を支えたりパーカッシブにプレイすることは性に合っている。もしベースじゃなかったらドラムをプレイしていたかもしれないね。ベースをプレイすることって美しいことだと思うし、グルーヴをプレイしながらバンドに厚みをもたらすことは、僕にとってかなり大きなことなんだ。ギタリストはステージで派手にソロを弾きまくることに楽しみを覚えるかもしれないけれど、僕はベーシストとして曲を引き立てて前進させることに興味を感じているよ。

━━今作はあなたたちにとって3枚目のフル・アルバムとなりました。これから10年、20年後に振り返ってみてあなたたちのキャリアにとってどんな作品になると思いますか?

 ナッシング・バット・シーヴスを代表する作品になってほしいと願うね。本当に心血を注いで作ったアルバムだし、このアルバムでファンの心をグッと掴みにいっている。多くの人のハートに届く作品になったと信じているし、本当に心から誇りに思っているよ。そして簡単なことではないと思うけれど、次に出すアルバムは必ず最新のアルバムを超えていくものにしたいとも常に思っている。

━━世界的に新型コロナ・ウイルスが流行中という状況ですが、今年に入ってからはどのような生活ですか?

 そんなに充実した楽しい生活かというと、さすがにそうではないよね(笑)。僕らはロシアでツアーをする予定だったけれども、キャンセルになってしまった。3月にはモスクワとサンクトペテルブルグのとても大きな会場でライヴをする予定だったんだ。アルバムのプロモーションも予定されていたけど、それも全部流れてしまった。代わりにできたことといえば、散歩で遠くまで行くことや読書、そしてテレビ・ゲームをすることくらいかな(笑)。もちろんたくさんベースを弾いて作曲もしているし、ナッシング・バット・シーヴスとして何かできないかなと考えてもいる。完璧に怠けてばかりいるわけじゃないし、いつでもすぐに活動できるようにしていたいんだ。世界的にシャットダウンばっかりでミュージシャンとしてできることがほとんどなくなってしまったタフな状況ではあるけれども、ポジティブではいたいものだからね。

━━この長期休止を余儀なくされている期間を最大限に活用するため、スタジオにバンドで集まって新しい音源の制作やジャム作業などを行なっていたりするのでしょうか?

 明確にイエスともノーとも答えられないところだけど、メンバーそれぞれで何かしらの形で活動はしているよ。どの程度作業と呼べるかはわからないけれど何かしらの作業はしているし、ミーティングもすれば将来的に何ができるかということを考えている。もう少し時間が経てば具体的に何か発表できるのかもしれないね。

━━最後に、日本のベーシストにメッセージを。

 僕のインタビューを読んでもらえて、とても光栄に思う。いつの日か君たちの国に足を運んでライヴでお目にかかれることを切に願っている。そして世界がもとの生活に戻れたらということを、君たちと同じく日々願っているよ。

◎Profile
フィル・ブレイク●1988年10月5日生まれ、英国エセックス州サウスエンド=オン=シー出身。もともとはギターをプレイしていたが、16歳のときに友人のバンドからベーシストが脱退した際に声をかけられ、ベースに転向する。影響を受けたベーシストは、デス・フロム・アバヴ 1979のジェシー・F・キーラーやピクシーズのキム・ディール。ナッシング・バット・シーヴスは2012年に結成。2014年にRCAとのメジャー契約を獲得し、アルバム・デビュー前の2015年にはサマーソニック出演のために来日も果たす。2015年10月にリリースしたデビュー・アルバム『ナッシング・バット・シーヴス』は全英チャート初登場7位、2017年9月発表の2ndアルバム『ブロークン・マシーン』は全英アルバム・チャート初登場2位を記録。2020年10月23日(国内盤は28日)に3rdアルバム『モラル・パニック』を発表した。趣味はもっぱら読書とテレビ・ゲーム(Nintendo Switchの『スーパーマリオ 3Dコレクション』にドハマリ中)。

◎Information
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