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ギターを弾いているときにはものすごくベースに憧れて、
ベースを弾くようになると、ギターのリフものに憧れる。
━━「Play Alone」はアルペジオとハーモニクス、メロディを多重録音したベースだけの演奏ですが、すごくクリアな音ですね。パッと聴くと、ベースだけでやっていると思わない人もいるんじゃないかなと思います。
けっこういろんな人がギターと勘違いするんですよね。これはワーウィックのStreamer LX “TAMA” を使いました。ワーウィックの24フレットで、あの位置のJJピックアップ、しかもEMGだからこその音ですね。僕はジョン・パティトゥッチさんもすごく好きで、デビュー当時のヤマハTRBの6弦の上のほうでソロ・ベースをやっているのがすごく美しいなと思っていて。ああいう世界観を、僕なりに4弦ベースでやってみました。
━━「Taj Mahal’s Lunar Eclipse」最後のユニゾン部分はけっこう歪ませたヘヴィな音ですね。
あれもサンズアンプですね。あそこはある意味ベーシストの感覚ではなくて。歪みを使った途端に僕はベーシストの感覚はなくなりますね。
━━ギターを弾いていたときにはロックをやっていたんですか?
いや、それがまったくなくて、スティーヴィー・サラスさんでやっとロックに覚醒した感じなんです。それもなんか違う気がしますけど(笑)。不思議なのが、ギターを弾いているときにはものすごくベースに憧れていて、こうやってベースを弾くようになると、それこそ「アイアン・マン」のリフとか、ギターのリフものにすごく憧れるんです。それで、わりとベースの12フレットあたりでオクターバーかけて歪ませてヘヴィなリフを弾いているのが好きで、そこは妙にギタリストっぽい思いでやっちゃうんですよね。
━━ギターっぽいといえば、「Taj Mahal’s Lunar Eclipse」イントロのダブル・ストップを生かしたクリシェ・ラインのリフは、和音の感覚を生かしているという意味でもギターっぽいアプローチな気がしました。
確かにそうですね。今回、ベース・リフで印象的なものを作ろうということは意図的に何曲かでやっているんですけど、“感覚的にカッコいいから”というものよりは、ハーモニーに合致するものっていうところで作っていて。それはアレンジャー的な感覚が強くなっているというのもあるかもしれないんですけど。いわゆる理論を度外視した、ロック系の細かいテンションを気にしていないノリでいくものとは違いますね。勢いを考えると、そんなの気にしないでやりたいんだけどってこともあるし、ライヴとかではわかってるけど気にしないでやっちゃうこともありますけどね。「Taj Mahal’s Lunar Eclipse」に関しては、僕はツェッペリンの「カシミール」とかも好きで、考え方としてはあれの逆ですよね。
━━「PUNKADEMIC」Bメロのサックス・メロディのところは、ベースらしいリズムを刻んだバッキングというよりは、1小節目をコードっぽく白玉で伸ばして、2小節目で隙間を埋めるオブリのようなアプローチで、これもなんとなくギターに近い手法でおもしろいですね。
この曲に関しては是永さんの存在が本当に大きくて。僕がアプローチしている、コードを弾いて、そのあとにオブリを入れるっていうベース・ラインは最初に作っていて、それをうまくまとめるように、隙間のすごくいいところにギターのバッキングを入れてくれたんです。ベースとギターが一体になることで相乗効果が生まれている。それで、よくあるロックの刻みをふたりで分けて弾いているように聴こえますよね。ベースの視点で言えば、実は下にずっとボトムのベースを入れているんです。今回はどの曲も、ボトムのベースっていう部分では、3本、4本を平気で入れていますね。シンセ・ベースや聴こえないくらいのものも含めて。そこはある意味、現代のボトムの作り方をやっているつもりではあるんですけど。「I’ll be Here」はシンセ以外全部ひとりでやっているんですけど、あれもボトムはけっこう入れていますね。
━━「I’ll be Here」は指弾きのメロディ部分はありつつサビではベースはバッキングになりますが、最後のサビだけベースもメロディを弾きます。そこではスラップに切り替えて弾いていますか?
スラップっぽい音なんですけど、強めのアタックの2フィンガーで弾いています。スタンリー・クラークさんみたいな感じですよね。僕は指で弾いていると、わりと“スタンリー・クラークみたいだね”って言われることもあるんですけど、歴史から考えると当たり前な気もしますよね。マーカス・ミラーさんだってスタンリー・クラークさんの影響を受けているし、ヴィクター・ウッテンさんだってフォデラで丸いトーンだからわかりにくいけど、すごくスタンリー・クラークさんっぽいですもんね。だから、ああいう表現をしようと思うと、自然とああいうトーンになってしまいます。
━━さて、ソロとしての今後の展望はありますか?
まさに今、そのことも考えています。鳴瀬さんがこの作品をすごく喜んでくれて、“ちゃんとソロ活動もやれよ”って言ってくれたんです。1曲目の“PUNKADEMIC”っていう造語も気に入ってくれて、ソロでの名義を“村田隆行PUNKADEMIC”にしたらどうか、とも言ってくれて、それは自分でも気に入っているので、不定期ながらやっていこうかなと。それをやっていくうちに、次のアイディアが具体的に出てくると思うので。ありがたいのが、I.T.Rとこの自分のアルバム、来年のチョパレボのことを考えていると、曲のアイディアがすごく出やすくなっているんですよ。せっかくこういう制作意欲というかアイディアが出てきている時期だから、止まらずに作っていくのがいいなと思っています。
◎Profile
むらた・たかゆき●福岡県出身。10代の頃よりR&B、ファンク、フュージョン、ロックなどの音楽に憧れてギターを始め、その後ベースに転向。鳴瀬喜博、IKUOとのベース・ユニット“THE CHOPPERS REVOLUTION”やJUON、白井アキト、JUNY-A、神田リョウとのバンド“SOLBAND”で活動する一方、小比類巻かほる、日野皓正、高橋みなみ、梁邦彦、KIYO☆SEN、今市隆二(三代目JSB)といったアーティストのセッション・ワークにも参加している。IKUOと結成したI.T.Rで今年6月に1stアルバム『「Bass Life Goes On」~今こそI.T革命~』をリリース。続いて7月に自身初のソロ・アルバム『THE SMILING MUSIC』を発表した。
◎Information
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