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INTERVIEW – 山下昌良[LOUDNESS]

  • Interview:fuyu-showgun

“うまくなりたいなら指1本で弾け”って言うんです。

——機材面では、お馴染みのメイン・ベースであるヴィジェのほか、Sandberg、そしてアンプはアンペグのヘリテージをライヴ用に導入したりと、新しい試みもあります(詳細は本誌2022年2月号で)。

 機材もいろいろ試せる時間があったので、Sandbergも試せたし、アンプも3つ(アンペグSVT 70年代ヴィンテージ、VR、ヘリテージ)鳴らせて試せたし。時間がなかったら、スタジオでそれをやってる余裕もないんですけど。あとやっぱり、ドラムがふたりおって、サウンドがこれだけ違うねんなというね、それでベース・プレイが変わることはないんだけど。いつもより時間をかけられたなという感じですね。いつもは1日半あったら、アルバム1枚分12〜13曲終わるんですけど、今回は3日くらいやったもんね。コロナで飲食店含め、エンターテインメントは大打撃だったわけだけど。でもそんなこと言ってもしょうがないので。我々はレコーディングがちゃんとできたのでよかったなと。

——本作ではレギュラー・チューニングと、Cチューニングがありますが、ピッキングを意識して変えていますか?

 奏法としてはまったく一緒なんですけど、力の加減がダウン・チューニングのときのほうが圧倒的に弱いですね。弱く弾かないと低音が鳴らないし、チューニングも安定しない。だから本当に撫でるような感じでピッキングしますね。それで、ドーン!とした音を出す。弦も太いし、弦高も高いし、使ってるベース自体も違うけど、それをゆるく弾くという感じですね。強く弾くとチューニングが絶対安定しないからね。そこは高崎さんも一緒だと思います。

——使用弦は?

 ダウン・チューニングのときはアーニーボールの紫色のパッケージ(パワースリンキー)のやつ。レギュラーのときは、1弦が.045じゃなくて.050のやつ(レギュラースリンキー)ですね。弾き心地でいえば、細いほうが速弾きもしやすいし都合がいいんだけど、12フレットあたりに行ったときの音の太さが、.045と.050では全然違うから。その辺のポジションをよく使うし、音が寂しくなるのがイヤだから.050で頑張ってるという感じですね。

——全体を通してベースの存在感がすごくありますね。ミックス自体でベースを大きめにしているわけではないのに、抜けてきてよく聴こえます。

 録ってるときのベースの音自体はびっくりするくらいデカいですよ。ブースのなか入ったら拷問かと思うくらい(笑)。ヴィジェって、誰が弾いてもめちゃめちゃ抜けがいいんで、ヴィジェのおかげかなと思いきや、Sandbergを使った80年代の3曲も抜けがいいですからね。僕の使ってるDIによるところも大きいんじゃないかな。

——でもやっぱり、弾き手の腕でしょう。

 それは間違いなく!(笑) 抜けるような弾き方をしますよ。もちろん、高崎さんもそうだと思いますけど。

——山下さんといえば、親指、人差指、中指の3本でピックを待つのが特徴的ですよね。

 オルタネイト(ピッキング)に関しては、3本で持つ弾き方が一番バランスが良くて。親指と中指でピックを持って、基本的に指で弾いてるイメージで、ダウンは親指でアップは中指で弾く感じ。そこに加えて人差指で支える。だから指弾きと変わらないんですよね。どっちも重要だから。一番重要なのは“F××k  You”のときの指(笑)。僕がオルタネイトやると、どっちがアップでどっちがダウンか、横で聴かせてもわからないんですよ。普通の人はダウンで弾いてて、オルタネイトに変えたらすぐわかるけど、僕の場合はわからない。それは自信がある。

——おおっ、さすがです。

 指弾きのプロのベーシストから“ピック弾かれへんねん、教えてーや”言われるんやけど、“お前、指弾きなら指だけでいいやんけ”って。まぁ、それじゃいつまで経ってもピックならではの曲は弾かれへんからね(笑)。こうやってピックをギター弾くみたいに(親指と人差指で)持つ、これだとしんどいんですよね。弾いてるうちにピックが動いていくし。指弾きの人はアップ(2音目)を中指で弾くから、この持ち方だと余計に感覚が狂うよね。だったら、こうやって親指と、人差指の代わりに中指で持てば、アップで弾くと中指で弾いてるのと同じ、指弾きと同じ感覚で弾けるんですよ。力も入るから音の抜けもええ。普通、指弾きの人がピックで弾いたら音小さくなるんですよ、間違いなく。でもこの3本で持ったら音は小さくならないですから、絶対に。お薦めします。

——なるほど。ちなみにどんなピックをお使いですか?

 普通のオニギリ型の、厚みはヘヴィくらいかな。昔はギターの人がよく使うティアドロップ型だったんだけど、3本指で持つようになってからは、オニギリが持ちやすいからずっとこれですね。

——ピッキングを極めるうえで行き着いたのが、オニギリ・ピックの3本指スタイルだったと。

 僕がうまいと思うのは、ボブ・デイズリー、ジューダス(・プリースト)のイアン・ヒルとか。オルタネイトがめちゃめちゃうまいと思うんですけど。ああいう感じにやろうと思ったら3本で持つのが近道かなと。

——ピックの持ち方以外に、ピッキングで重視しているポイントはありますか?

 ミュートですね。ギターもそうですけど、(演奏が)うまいやつって、やっぱミュートがうまいですよ、鳴らさない音をどう処理するか。Eの開放のミュートって難しいですよね。Aでダダダ、ダダダってやるときは、4弦5フレットを押さえていた左指を浮かせればいいけど、Eだったら、止めに入らなければならない。そうやっていろんなポジションのミュートを大事にしてるからこそ、大きい音を出しても濁らないし、聴きやすいと思います。グルーヴも出るしね。

——指弾きに関してはいかがでしょうか?

 指弾きでも、人差指と中指の2フィンガーのオルタネイトで、ドタドタドタってなること多いじゃないですか。だから、“うまくなりたいなら指1本で弾け”って言うんです。指1本で、ドンドンドンドンって確実に弾けるように。(ブラック・)サバスの「Paranoid」がそれで弾けるようになったら、2本になっても大丈夫。そのグルーヴが身体に入ってるから。僕、指弾きでもよくやるんですけど、1本で弾いてるか、2本で弾いてるか当ててみてって。それも当たらないですよ。ヘタなやつだったらすぐわかるじゃないですか。

——うまくなりたいならピッキング、ミュートをしっかり練習すること。

 それとシンコペですね。シンコペーションをちゃんとキレイに入れるということ。ダウンだったら空ピック入れて弾けるようになって、4発同じところに、4発が完全にバシっとあったら、ガガガって速くやってもいいよって。そのシンコペーションとミュートは基本同じもんなんだけど。歯切れがよくピシッとちゃんと弾けてたら、グルーヴも出るし、抜けてくると思います。今回のアルバムの「OEOEO」も歌が入ってから、空ピックを入れてるのが効いてるんです。ダーダカダ、から歌入って、ダーダカダ、ツッツクツッツクって。空ピックを埋もれないように入れるのは難しかったですね。こういうことって、すごい大事なことだけど、あまりわかってる人いないですよね。みんなもっと派手なプレイに走ったりするからね。2フィンガーもそうだし、ベースはいろんなことができるから楽しいんだけど、そういう基本的なことをきっちりやっていったら、もっとうまくなるよ。

1月19日発売のベース・マガジン2022年2月号にも山下昌良のインタビューを掲載!
誌面では『SUNBURST〜我武者羅』での具体的なベース・プレイについてなど、BM webとは別内容でお送りします。

同号では、1990年代のオルタナ/グランジに焦点を当てた『創成期オルタナティブの肖像〜90年代オルタナ/グランジ・ベース論』のほか、奏法特集は“一枚上手のピック弾き”、昨年20周年を迎えたマークベースの特集など掲載しています。ぜひチェックしてみてください!

◎Profile
やました・まさよし●1961年11月29日生まれ、大阪府出身。1981年にラウドネスとしてデビュー、以降はジャパニーズ・ヘヴィメタルを象徴する存在として国内外で活躍する。1992年に脱退するが、2000年に復帰。現在もコンスタントに作品を発表し、海外の大型フェスティバルにも頻繁に出演している。デビュー40周年を迎えた2021年の12月29日に、29枚目となるオリジナル・アルバム『SUNBURST〜我武者羅』をリリースした。

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