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INTERVIEW – 内田雄一郎[筋肉少女帯]

  • Interview:Shutaro Tsujimoto

世の中が暗いから明るく行こうっていうのはあるけど、それだけじゃなぁと。

━━「坊やの七人」も内田さん作曲ですが、プログレもスカも入っていて、それでいてウエスタンの情景が浮かぶという、本当にいろんなジャンルが入り混じった曲ですよね。

 ベーシックにあるのは、30年前の(渋谷)La.mamaに出ているようなニュー・ウェイヴ・バンド、みたいなところかな。自分が聴いてきた音楽のエッセンスをどんどん入れ込んだって感じですね。曲の発想は、もともと映画『荒野の七人』のテーマ曲のオマージュから入っていて。あれは陽気なリフですけど、“これマイナーにしたら、ロック・リフじゃん!”となって。

━━イントロのリフは再登場するたびに、転調していたり、キーがマイナーからメジャーになっていたり、ハモリが入ってきたりと、常に変化を見せていますよね。凝ったアレンジだなぁと感じました。

 凝ってますよね(笑)。やっぱり荒野を感じさせるフレーズなので、たびたび出さなきゃということで、変化をつけています。『荒野の七人』のオリジナルの感じというのは、僕らくらいの世代だとやたら聴くものだったんだよね。なので、メンバーのみんなにも特に話さずともイメージが伝わっていたと思いますね。

━━この曲も内田さんのデモのイメージどおりに行きましたか?

 そうですね。でも、アコギの“ジャカジャン”はギタリストのアイディアなんです。あれは良かった。デモにはなかったですね。

━━今作では内田さんは3曲で作曲を手がけています。もう1曲の「世界ちゃん」はどのようにして生まれた曲でしょう? 16分のファンキーなベース・リフが肝となる曲ですが、作曲はやはりコード進行が最初なのでしょうか。それともベース・ラインから?

 それまで作っていた曲がメジャー・キーのものが多かったから、マイナーで作れないかな、と思ったのが最初だった気がします。世の中が暗いから明るく行こうっていうのはあるけど、それだけじゃなぁと。でも、ただ暗いだけじゃなくて転調して明るくもなっていて。しかも、ド真ん中のメジャーじゃなくて結果的に気持ち悪いところにいっているのがおもしろくなったかなと思いますね。あとは前から“未来のゴーゴー”を作りたいというのがあって(笑)。今までもGS風の曲とかを作ってるんですけど、そっち路線の曲ですね。

━━「世界ちゃん」のベースは、平べったくて太い質感の音作りになっていますよね。音作りでこだわったポイントは?

 この曲では、ムスタングを弾いているんですよ。今回のアルバムの使用機材については、「世界ちゃん」と「お手柄サンシャイン」がムスタングで、あとはスペクターのNS-2ですね。アンプは全曲通してsunnのconcert bassです。ムスタングは弾きにくくて、音数を減らして弾くために使ってたんですけど、この曲ではすごい弾いちゃってるんですよね(笑)。

━━ずっと動き回ってますよね。

 これも鍵盤で基本のベース・ラインを考えちゃったからね。エレキ・ベースのクセで作ってないから、ちょっと弾くのが大変でしたね。

━━この曲はギターの音作りも、モジュレーション系のエフェクトが効果的に使われていますよね。デモを作る時点では、橘高(文彦/g)さんと本城(聡章/g)さんのふたりのプレイ・スタイルをそれぞれイメージしながら指示を出すんですか?

 本城さんは“ビヨーン”みたいな音が好きなので、そっちをお願いしますとかは言いましたかね。でも筋少は右チャンネルと左チャンネルでギターを分けるのでパンで指示をしてるんですけど、たまに間違えられるんですよ(笑)。“あれ、これ俺が弾くんじゃないの?”っていうやりとりが何度かありました。

━━セッションではなく、データのやりとりだとそういったことも起きると。

 本当にテレワークですね。それでコミュニケーション不足があったりもしましたよ(笑)。「世界ちゃん」のリード・フレーズも、本城さんのファズ・ギターが来るかなと思っていたら、結局作っていくうちに橘高のギターになっていたりね。

━━そういう偶然性があるのも、バンド・マジックのひとつですよね。リード曲の「楽しいことしかない」についても聞きたいです。この曲は1番Aメロの休符を生かしたメロディアスなベース・ラインも、サビや2番Aメロの7度を使ったポップなフレーズも、聴いていて楽しくなるようなドライブ感が出ていますよね。

 なんかそういうことなのかなと思って入れましたかね、ベースは。70年代、80年代アタマくらいのイギリスのポップ・ロック、ハード・ポップという印象だったんで、楽しく明るいロックンロールって感じで弾きましたね。シン・リジィとかね。

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